35.遭遇
前回の続きとなります。楽しんで頂けますと幸いです。
◇
デルヘナ村から、目的地の王都”ヴェサリウス”まで、およそ一週間の旅。
移動手段は、馬車での移動。
途中いくつかの小さな街を経由してから王都”ヴェサリウス”に行く予定である。
俺、クリム、イルデッシュの3人は、デルヘナ村の商店を経営している”コープさん”の依頼により、
デルヘナ村を後にして、馬車での移動中だ。
以前は、俺はデルヘナ村でずっと生活していたいと言っていたけども、
やっぱりお金って大事よね。うん。
デルヘナ村に残してきたエレナさん達には大変申し訳ないとは思うが、
皆と普通に生活してくためにも、やっぱりお金は大事はいるわけで。
今回の王都”ヴェサリウス”までを護衛して、それで食べ物や宿などのお金も手配して貰えて、
金貨4枚貰えるというのはかなり、実入りがいいんじゃなかろうか。
今後はずっとお金を稼がないといけないからなぁ。
出来ればデルヘナ村に留まりながら、稼げる方法を考えないといけないだろう。
それは道中いくらでも時間があるので、考えればいいか。
さて、馬車の旅というのは、今回異世界にきてからが、初めての経験となる。
先ほどから馬車の中から眺めている風景は、見渡す限りの大平原。
空は深く青い色で染まっており、風がそよそよと流れている。
そして、天気も快晴で、一段と良い眺めであった。
こういう日は、お昼寝をするに限る。
馬車の程よい揺れも、眠気を誘っていた。
そして、俺の横には、ゴスロリ少女のイルデッシュが俺にもたれかかりながら、ウトウトしている。
彼女は、先ほどまで馬車に慣れていなかったようで、馬車が移動して、
揺れる度に、前方に御者を担当しているクリムに、
「ちょっと~、クリム姉さん~!僕、ガタガタ揺れるの嫌いなんだけどーっ!」
文句を言っていた。
だが、ここ異世界において、道が整備されている場所は町の中など、
交通が発達しているところでしかないらしく、俺たちが今移動している道は、
平原なので、舗装もされていなかったのだ。
騎乗スキルがあるクリムであっても、馬をうまく扱えても
馬車を揺らすなということはドダイ無理があったのだ。
「そんなこといっても仕方ないじゃないっ!文句があるなら、アンタが変わりなさいよっ!」
「え~っ?これじゃあ寝れないんだけど……」
「いいから黙って寝てなさいよっ!!それとも、イルデッシュが代わりに御者やるわけ?」
「僕はスキルとか持ってないから、出来ないもんっ!」
「スキルだったらマスターから貰えばいいでしょっ!?」
「やだ、ご主人の隣がいい」
「あのねっ!私だって――」
―――しばらく、クリムとの言い争いになっていたが、
疲れてしまったのか、俺の隣でスヤスヤと眠っている。
それじゃ、俺もお昼寝でもしようかと、目を閉じたその時
「ちょっと!!寝てないでよっ!マスター、イルデッシュ!!こっちみてっ!!」
「どうした、クリム?」
「ん……なーに~……?僕、物凄い眠いんだけど……」
イルデッシュが不満そうに目をこすりながら、起きると
「いいから、ほら早くっ!外を見てッ!」
切羽詰まったクリムの言葉により、言われた通りに、馬車の中から、前方を見るが、
特に何もない。いつもと変わらぬ平原だった。
「違うわよっ!右っ!右よっ!!」
右だと?インド人でもいるのか?まあ、今はいるわけないし、そんなのどうでもいいか。
言われた通り右側の平原を眺めると、こちら側に走ってくる人影が複数みえた。
それは、頭がスキンヘッドやとっても人相が悪そうな男など、合計で10人ぐらいいるだろう。
「ひゃっはーーーーっ!!」
なにごとか雄叫びをあげながらこちらに走ってきている。
そいつらは全員が、片手に剣や盾、弓などの武器を持っている。
なんかこう、どこぞのアニメの世紀末っぽいな。
「マスターっ!あれは盗賊よっ!」
クリムがそう断言したのであった。
うん、まあ、見たら分かるんだけどね。
とう考えても、それぐらいしか考えられないし。
しかし、盗賊って本当にいるのか。
「ヒャッハー!!」
「奴らは丸腰っ!!護衛の馬車は1台だけで、ほとんどいねえっ!!狩るぞーっ!!」
「いやっはっーーー!!」
遠くから、そう叫んでいるのが聞こえたのだ。
周りは大平原であり、今進んでいる馬車は、前を走っているコープさんの馬車と
俺たちに任せれた馬車の2つ。
つまり、俺たちが標的にされているようだ。
本来であるなら馬車のスピードで逃げられるかもしれないが、
今は荷物が満載であり、追い付かれるのも時間の問題だろう。
「み、みなさまっ!お願いしますっ!あいつらは盗賊ですっ!やっつけてくださいっ!!」
慌てたコープさんが前を走っていた馬車を止めて、こちら側の馬車に来た。
俺たちも馬車を止めて、武器を持ち臨戦態勢をとった。
「任せてくださいっ!すまない、イルデッシュ、こいつらを捕まえれるか?」
「うん、ご主人に言われたから面倒だけど、いいよ~」
異世界に来てから、初めて対人戦となるが、大丈夫だろうか。
念のため、相手となる男たちに鑑定眼スキルを使ってみると、
------------------------------------------------------------------------------
名前:ジーク Lv6 次のレベルアップまで 20 exp
種族:人間♂
HP:20 MP:5 攻撃力:20 守備力:15 素早さ:11 賢さ:13 運:15
称号:犯罪冒険者
取得スキル:特になし
装備:大きな戦斧、丸い盾、ボロボロの冒険者服
戦力評価:F
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だいたいこんな感じのステータスの奴らばかりだ。
今の俺たちなら、倒せるというレベルだろうか。
ただ、倒しても経験値的にもうまみはなさそうだし
クリムやイルデッシュに人殺しを経験させるというのは、気が引けた。
「マスターっ!私、行ってもいい?いつでも準備は出来てるわよ?」
「ああ、わかった、クリムは、敵を一体ずつ引き付けて、気絶させて欲しい、
後……そうだな、なるべく殺さないように倒してくれ」
「マスターの意図は分からないけど……わかったわ!それじゃ、いってくるわねっ!」
クリムは日本刀とマントを羽織って、一番前を走っていた敵の一人に突撃していった。
「ヒャッハー!!綺麗な赤い髪の嬢ちゃんがこっちにくるぜーっ!!」
「げっへへへっ、今夜の夜は楽しめそうだなぁっ!!」
大きな戦斧を持ったモヒカン男達が、下品な視線をクリムに送っている。
それを聞いたクリムは、下品な発言をしたモヒカン男に急接近して、
日本刀で敵の戦斧を受け流すと、
「ぜったいにっ!! 許さないわっ!!! 喰らいなさいっ!!」
モヒカン男の腹に片手の強烈なパンチをおみまいした。メキィっとの音が聞こえてきてそうな勢い。
「ぐふぁあああっ!?」
クリムの手加減なしパンチが炸裂し、敵のモヒカン男はドシャアッっと音を立てて、地面に崩れ落ちた。
ああ、あれは痛いだろうな。俺も痛くて天国に行きかけたからな。
「げえっ!ジークが一撃でっ!?」
「あの女っ!?つよいぞっ!?」
クリムに注意が向いている間にイルデッシュは、敵が逃げないように、相手の周囲に配下のスケルトン達を召喚した。
その数、20体。
「「「カタカタカタカタ」」」
「なっ、どうしてこんなところにっ!?スケルトンがっ?!」
「いいから、スケルトンを早く片付けるぞっ!」
「おうっ!!」
一人の男が気付き、周囲の男たちはスケルトンに対処をしよう動き出したが、
「もう遅いよ、闇魔法”ダーク・バインド”」
イルデッシュが持っている禍々しい骨の杖の先から、モヤモヤした黒い輪を、男たちに放った。
黒い輪は、敵の男たちに次々と両腕を縛り、体の身動きが取れない程に締め付ける。
「ぐええっ?!な、なんだこれはぁっっ!?」
「は、はなせええっ!!」
男たちは足掻いてるが、一向に千切れない。
そして、地面へと這いつくばる。
「げふぁああっ……!! 」
その間に、クリムは次々と容赦なく敵の男たちに鮮やかなに腹パンを決めていく。
こうして、男たちは、クリムとイルデッシュの活躍により、一瞬で御用となったのだ。
今回も俺、活躍してないな。
◇
捕まえた盗賊の男たちは、その後、どうしたのかというと、
俺のスキル”アイテム∞ボックス”に収納したのだ。
いやまあ、やろうと思ったら出来たのね。
”アイテム”として 俺が認識すれば。どうやら収納可能だったのだ。
そうそう使うことはないだろうけども。
また、意識がある男たちは煩いので、イルデッシュの闇魔法で、既に眠ってもらった。
眠っている相手や、意識がない男たちの頭上に手をかざして、アイテム∞ボックスに収納を意識すると
勝手に吸い込まれていった。
残されたのは、彼らの武器やら防具などである。それらもついでに回収していった。
馬車の中に隠れていたコープさんに、盗賊たちが残した武器はどうすればいいかと、
念のために聞いたが、倒したのは俺たちなので、全て持っていてもいいらしい。
お言葉に甘えてすべて回収していった。
後は念のために、回収した盗賊を取り出せるかどうかを確認すると、
眠ったままの状態で出てきたので、無事なことは確認できた。
なので残りの盗賊たち全員をアイテム∞ボックスに収納していった。
この光景を見ていたコープさんは、目を丸くしながら、
「今後、その収納スキルを見せない方が宜しいかと……」
忠告された。
確かに、人がスキルによって吸い込まれていくという光景はかなり、
怖いだろうからな。人前では余り多用しないようしないとな。
そして、盗賊たちを収納しおわった時には、周囲が暗くなり始めていたので、
コープさんと相談して、ここから少し進んだところに小さな湖があるので、
今夜はそこでキャンプをすることにしたのであった。
◇
小さな湖に到着した時には、既に辺りも暗くなってきていた。
念のために、イルデッシュに辺りを警戒してもらいつつ
木々を集めてから、石で囲み、そこで火を焚いてから、
暖かいスープなどを飲んだ。
今回、気を利かせてくれたのか、雇い主のコープさんは、馬車で食べるとのことらしいので。
一緒に食べるのは俺たちだけだ。
クリムとイルデッシュと共に、湖にも映る満天の星空を見ながら、
暗闇に映るクリムとイルデッシュは、とっても儚げで綺麗であった。
時折、彼女らは喧嘩するので台無しだったけども。
その夜、俺はクリムとイルデッシュと馬車の中で、川の字になって寝た。
クリムとイルデッシュは頑張ったのであろう、スヤスヤと寝ている。
また明日も頑張らないとな。
そう、心に誓いつつ、俺も眠りへと誘われていった。
●戦利品一覧
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
盗賊×12、戦斧、丸盾、短剣、短弓、弓矢etc……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●現在までのステータス一覧
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:ヒデキ・イケダ Lv10 次のレベルアップまで 1056.1Exp
種族:異世界人間
所持金:金貨3枚、銀貨157枚、銅貨20枚(アイテム袋に収納中)
HP:48 MP:30 攻撃力:27 守備力:28 素早さ:26 賢さ:48 運:46
称号:異世界からのサラリーマン(Exp取得の際、経験値が10%上がる)
他の称号: 初めてのスライム狩り(スライム系に与えるダメージが10%上昇する)
初めてのゴブリン狩り(ゴブリン系に与えるダメージが10%上昇する)
スライムとお友達:(スライム系に対するテイム率が10%上昇する)
スライムベテランマスター:(仲間のスライム系の能力値を20%上昇させる)
ゴブリンキラー(ゴブリン系に与えるダメージが30%上昇する)
取得スキル:オリキャラクリエイト、剣術初級、土魔法初級、夜目、騎乗、
鑑定目初級、情報隠ぺい初級、アイテムガチャ
特殊スキル:異世界言語理解、アイテム∞ボックス、
総取得P:5081.6P
総取得CP:1900
残P:1120.3P
残CP:10
現在順位 190/950位 前日比 +1
持ち物:仕事道具が一式入った鞄、スマートフォン、財布、新刊ライトノベル7冊が入った紙袋、
(スマートフォン以外、アイテム∞ボックスに収納中)、スライムの核×23個、錆びた短剣、錆びた剣、棍棒、背広のジャンパー、ズボン、ホワイトシャツ、ネクタイ、ボクサーパンツ…etc
使い捨てのポケットティッシュ×5シャープペンシル、シャープペンシルの芯が入ったケース、髭剃り、スティックノリ、手鏡、セーラー服上下(魔法)
盗賊×12、戦斧、丸盾、短剣、短弓、弓矢etc
服装:冒険者男(軽装服)一式
冒険者、パーティーランク:C
戦力評価:E+
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:クリム LV10 次のレベルアップまで 1935.1Exp
種族:人間モンスター♀
創造者:ヒデキ・イケダ
HP:50(+5) MP:31(+2) 攻撃力:41(+6) 守備力:37(+6) 素早さ:36(+5) 賢さ:27 運:45
称号:ツンデレる少女(創造者と共に戦闘すると、Exp取得時、2倍になる)
他の称号:初めてのスライム狩り(スライム系に与えるダメージが10%上昇する)
初めてのゴブリン狩り(ゴブリン系に与えるダメージが10%上昇する)
スライムとお友達:(スライム系に対するテイム率が10%上昇する)
スライムベテランマスター:(仲間のスライム系の能力値を20%上昇させる)
ゴブリンキラー(ゴブリン系に与えるダメージが30%上昇する)
外見:美少女ツンデレAセット(髪型:ロングヘア―赤、赤目、体系スマート、性格:ツンデレ)
取得スキル:火魔法初級、剣術初級、回復魔法初級、俊足、体力強化、逆鱗、騎乗
装備:冒険者女の軽装服、ナビたんが選んだ下着類etc、対火マント、日本刀
冒険者、パーティーランク:C
戦力評価:D+
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:イルディッシュ Lv8 次のレベルアップまで 1730 Exp
種族:人間モンスター♀
創造者:ヒデキ・イケダ
HP:41(+30) MP:58(+40) 攻撃力:29(+30) 守備力:33(+30) 素早さ:35(+30) 賢さ:54(+40) 運:25(+30)
称号:ゴスロリ死霊術師(創造者と共に戦闘すると、スキル発動時、MP消費を20%抑える)
他の称号:初めてのゴブリン狩り(ゴブリン系に与えるダメージが10%上昇する)
ゴブリンキラー(ゴブリン系に与えるダメージが30%上昇する)
外見:金髪ツインテール少女ボクっ娘セット
取得スキル:死霊術上級、眷属強化、魔力吸収、闇魔法中級、同時操作
装備:禍々しい骨の杖、死霊術者の究極ゴシックロリータ服一式(スキル発動時、MP消費を30%抑える)
冒険者、パーティーランク:C
戦力評価:C
配下モンスター:
スケルトン×128体、スケルトンソルジャー×26体
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
文章など、一部修正予定です。 次回更新予定日10/8
10/8 ヒデキ、クリム、イルデッシュのここまでのステータスを追加しました。一部コープさんの描写を追加しました。