29.新たな依頼
いつも見てくださってありがとうございます。前回本編の続きです。
◇
朝日はまた昇る。
異世界に来てから7日目。
今日も俺、池田秀樹は気分よく目が覚めた。
窓からは朝の日差しが差し込んできて、
小鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。
そう、何故かスッキリしていて大変気分がいいのである―――
―――その筈だが、俺は無意識に自分の下半身を見つめている。
それは昨晩、起きたことの現象。
そう、夜中に赤い髪の少女が現れたことについて。
アレは夢か、否かということだ。
俺はずっと起きているつもりであったが、
コトが終わる途中から意識が眠いのか朦朧としていた。
ただ一つハッキリと覚えているのは、
赤い髪の少女が、俺のモノを―――というところまで覚えている。
そして、それをクリムらしき姿がしていたということも。
だが、アレは俺の夢なんじゃなかろうか?
感触は本当だったと理解はしている、理解はしているんだが……。
もしも、アレが夢だったとするなら、
それを指摘した場合に俺の下半身がぼっこぼこにされそうだ、主にクリムに。
しばらくは様子見の方が良いだろうな、異世界だから夢を見せられた場合もあり得る。
さて、気を取り直して今日も一日頑張るゾイ!
某漫画で見たキャラの真似をしつつ、
エレナさんに貰った男性用のいつもの服を来て、俺は2階から1階に降りていった。
◇
俺、クリム、ホワイト、イルデッシュ、ナビたん、クロ、シロ、キー、エレナさんのメンバーで
騒がしくも仲良く朝食後のパンとスープを食べた。
その後、俺はクリム、ホワイト、イルデッシュ、クロ、シロ、キー、6人と一緒に
冒険者ギルドへと向かっていた。
イルデッシュが、昨日ゼーガンさんに、先日のゴブリン集団を討伐した際の報酬や詳細を話したいので、
明日の午前中に来て欲しいと俺に伝言したからだ。
相変わらず仕事が速いゼーガンさんである。
ギルドへの場所は、エレナさんの家から1分も歩けばつくので、
散歩もかねていけばいいだろう。
朝食も食べたので、一人で行こうと出かける準備をしていると、
「私も行くわよマスターっ!食後の運動ねっ!」
クリムが付いてくると言い出した。
クリムの様子を見てみると、昨夜のことは全く気にもしている様子はなかったので、やはり俺の勘違いだろうか。
「御主人様、私もお供します」
「それじゃ、僕もついていくよ~」
ホワイト、イルデッシュも追従。
そして、クロ、シロ、キーの3人も。
結果的に、ナビたん、エレナさん以外は俺についてきたのだ。
今日もナビゲーターのナビたんは、お供のスライム達を引き連れて近くの平原で
レベルアップをさせに行くらしい。
たまにはナビゲーターらしく、
俺のナビゲートをしてくれてもいいんじゃないかなと言ったが、
ナビたん曰く「ヒデキをナビゲートするより、スライム達をナビゲートした方が楽しいもんっ!」
とのこと。何それ上手くいったつもりなのだろうか。まあ、本人がそれでいいなら、俺は止めはしない。
エレナさんは、今日も掃除や洗濯、家事全般を担当してくれている。
奴隷少女のクロ、シロ、キーの3人も手伝おうと言ったらエレナさん曰く、
午前中は手伝わなくていいから、冒険者ギルドに行ってきなさいと言ったのだ。
まあ、クリム、ホワイト、イルデッシュの場合は元々ゴブリン集団の討伐の要だったし、
クロ、シロ、キーの3人もとてもよく頑張っていてくれたようなので、
連れて行っても問題ないだろう。
冒険者ギルドに来るのは、ホワイトやイルデッシュは初めてだろうし、
彼女たちにもギルドカードを発行して貰った方がいいだろうな。
などと考えながら歩いていると向こうから、壮年の明るい男性が歩いてきた。
それは、この村で唯一の食材や雑貨を売って経営しているコープさんだった。
ちなみに妻子持ちで、昔は王都にいたらしいが、
病気がちな娘の為に、この”デルヘナ村”に引っ越してきたらしい。なんとも良い父親ではないだろうか。
そのコープさんが朗らかに俺たちに声をかけてきてくれた。
「ヒデキ様、みなさま、こんにちは」
「どうもコープさん、こんにちは」
「皆さまお揃いで、一体どちらに?」
「先日のゴブリン集団を倒した後の報告などをギルドで確認しに行くところなんですが
コープさんは、エレナさんに何か用事でもあるのですか?」
コープさんが向かう方向へは、俺たちが泊まっているエレナさんの家しかない。
という事は、エレナさんに用事があるんじゃないかと考えたが、
どうも様子が違うようだ。
「はい、エレナ様にも挨拶をしに行こうと考えていましたが、
実はヒデキ様方に依頼をお願いしたいと考えていたのです」
どうやら俺たちに用事があったようだ。
それも依頼という形で。
あれ?何気に指名される依頼って初めてじゃないか?
とにかく仕事とあらば、頑張らねばなるまい。
お金はいくらあっても足りないからな。
「分かりました、前向きに検討させて頂こうと考えてます」
何せ、いつもこのお店で食料品やらを調達しているのだ。
たまには貢献してもいいだろう。
それに、そろそろ美味しい肉が食べたいし。
「おお、ありがとうございます!詳しいことは冒険者ギルドのゼーガンさんに依頼を託しておりますので、そこで依頼内容を確認してから、私の商店にお越しください」
それではエレナ様にもよろしく伝えてください、失礼しますと言いながら
コープさんは自宅の方へと帰っていった。
初めての依頼か、見てみないと分からないが、
引き受けてもいい内容だったら受ければいいか。
嫌だったら断ればいいし。
◇
俺たちは、ゼーガンさんのいる冒険者ギルド支部の前にやってきた。
相変わらず山小屋みたいな造りの家である。
木製のドアを開けて、中を入ると、簡易的なカウンターがあって、その向こうにゼーガンさんが座っていた。
「こんにちは~失礼します~」
「おお、これはヒデキ様と皆さま方!お待ちしておりました!」
相変わらず立派な白ヒゲが特徴的な執事の様なゼーガンさん。ダンディーである。
ゼーガンさんは、全員の顔を見渡すと、イルデッシュのところで止まり、
「イルデッシュ様がおられるということは、ゴブリンの討伐内容報酬の件で宜しいでしょうか?」
「僕がご主人に言っておいたよ~」とイルデッシュが補足する。
「はい、後、白騎士ホワイト・ナイト、イルデッシュの二人にもギルドカードを作って欲しいのですが、お願いできますか?」
「もちろんでございます、それでは用意致しますのでしばらくお待ちください」
そう言ってゼーガンさんは一礼すると、奥の扉を開けて引っ込んだ。
数分後、2枚の紙を持ってきて、俺たちの前に提示した。
「まずは、こちらからゴブリンの討伐の件です、以下が報酬となります」
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●メインクエスト:デルヘナ村の防衛
参加者:8名
ヒデキ・イケダ、クリム、ホワイト・ナイト、イルデッシュ、ナビたん、クロ、シロ、キー
成功:金貨1枚
●サブクエスト:ゴブリン討伐
ゴブリン×85 =銀貨85枚
ゴブリン・メイジ×12 =銀貨24枚
ゴブリン・ロード×1 =金貨1枚
合計:金貨2枚銀貨109枚
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「これが、今回のゴブリン達の集団を撃退した報酬となります」
「えっと……いや、でも、こんなに貰ってもいいんですか?」
「はい、もちろんでございます、本来であるならば、今回の様な大規模な襲撃の場合、
もっと冒険者を雇うか、一流の冒険者を雇わないと今回の様な事には対処できないのです、
ですので、ヒデキ様のパーティーの方々には驚かされてばかりです」
「あはは……そ、そうなんですね~」
言えない、大半が俺が作ったキャラクターなんて、言えない。
言っても信じてもらえないだろうけど。
「はい、ですので、これらの報酬は妥当です、それに私の気持ちとしましては、2倍払ってもいいぐらいです」
「いえいえいえ!もう十分ですって、なあみんなもそうだろ?」
皆に同意を求めると、(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウンと頷いてくれた。
「ありがとうございます、報酬の件はこれにて、後ほどお支払い致しますね」
◇
「それではヒデキ様と皆さま方のランクアップの件でお話させて頂きますね」
「はい、お願いします」
「皆様は、ゴブリン討伐時、パーティーでの参加となりましたので、今回はパーティ―ランクということになります」
「えっと……パーティーランクって何でしょうか?」
「はい、通常のクエストは個人で受注して受けるものは、通常のランクとなります。
パーティーランクとは、複数人パーティーで受けるクエストによってのみ、そのランクが適用されるということになります」
「つまり……今Fランクでも、Aランクのパーティー適性があればパーティーで行く場合のみ、Aランクのクエストでも受けれるということでしょうか?」
「はい、そのようになっております」
なるほど、これなら戦闘が弱くても、
サポートだけが上手い人でそういった適正があるといった場合に限り、
上手くクエストに参加出来るということか。上手く出来ているな。
「納得した頂けましたなら何よりです、それでは、これが皆さま方に提示する
ランクです」
そして、次の紙を提示してくれたのだ。
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●パーティーランクアップ対象者:
ヒデキ・イケダ、クリム、ホワイト・ナイト、イルデッシュ、ナビたん、クロ、シロ、キー
以上8名をパーティ―ランク、Cランク適正があると認め、これを任ずる。
F⇒Cにランクアップ
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と書いてあったのだ。
「あの、ホワイトとイルデッシュの冒険者ギルドカードは作ってませんけど……ランクアップさせていいのでしょうか?」
「はい、もちろんです、その場にいたことは私が証人しますので、冒険者ギルドの職員が確認していた場合は適用とされます」
なるほど、それならいいのか。
「ただ今回は例外中の例外なので、余り適用されないと考えてください」
やっぱり例外だったようだ。そりゃあ普通は、冒険者職員は戦闘に立ち会わないよな。
◇
ゼーガンさんが、ここにいるメンバーの冒険者ギルドカードを一度預けてくれと言ったので、手渡した。
ランクアップなどの記述をここに記載してくれるのだという。
そして、ホワイトとイルデッシュの冒険者ギルドカードに必要な事項も先ほど紙に書いて渡したので、
その分も同時に作って、一緒にギルドカードを渡してくれるのだそうだ。
ゼーガンさんって凄い仕事ができる人である。
出来すぎな気もするが。
数分後、銀メッキの様なカードをゼーガンさんから手渡された。
前の冒険者ギルドカードはくすんだ色だったが、今は銀色のカードになったのだ。
反応はそれぞれ違うが、皆自分のカードを眺めている。
「冒険者ギルドカードは、ランクアップすると、色も変わるようになっていて、一目で見分けがつくようになっております。
それに伴い、店によっては提示することで割引など特典が望めます」
なるほどな、ランクも上がると店から色々と融通してもらえるっていうことか。
ということは、やはりランクアップを狙った方がいいのだろうな。
前回の様な群れとはもう戦いたくはないけどな。
◇
ゼーガンさんから、ランクアップなど一通りの説明をしてもらった。
ナビたんに関しては、後日、ここに来てくれればギルドカードを更新するとのことだ。
「―-以上です、特に質問などはございませんか?」
「ないようですね、次の話に移っても構いませんか?」
「はい、お願いします」
「畏まりました、次のお話となりますが、ヒデキ様方のパーティーに依頼が来ています」
依頼か、さっきコープさんが依頼をお願いしたいと言っていたけども……。
「依頼とは誰からの依頼なんですか?」
「はい、王都までの馬車を警護して欲しいとの依頼ですね、依頼主はコープ様です」
先ほど、店主であるコープさんが言っていた依頼というのは、これのことだろう。
とは言え、これだけでは判断がつかない。
「具体的な内容を教えてくれませんか?」
「はい、ここから王都までは片道馬車で1週間程かかります、
その途中、いくつかの街を経由します、その間食事代、宿代は全てコープさんが出すとのこと、
パーティ―メンバーは最低3名から、報酬は全部で金貨4枚だそうです」
通常の依頼であれば、冒険者に護衛依頼を出すということはけっこうあるらしい。
だが、大抵は食事代、宿代というものは自腹で、今回の様な食事代、宿代も出してくれるなど珍しいようだ。
その上で金貨4枚とは、いい意味での破格の値段だそうだ。
「それ程、ヒデキ様たちを信頼してくれているということだと思います」
ゼーガンさんはそう言った。
だが、一週間片道かかるとして、最低2週間は見積もらないといけないわけで。
この村でエレナさん達とノンビリ暮らしていたい俺としては、
気軽に頷けるものでもなかった。
一旦保留ということにした。
そして、ゴブリン討伐時の報酬を貰ったので、アイテム袋にしまうと、
エレナさんの家に俺たちは帰ったのであった。
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●今回の報酬
合計:金貨2枚銀貨109枚
●今までの所持金:金貨5枚、銀貨48枚、銅貨20枚(アイテム袋に収納中)
●合計:金貨7枚、銀貨157枚、銅貨20枚(アイテム袋に収納中)
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次回も本編の予定です。次回更新予定日 9/28