13.5 クリムの思い(番外編)
短編の番外編です。クリム側の視点です。
私はマスターによって創造された人間、クリムよ。
名前の由来は”燃えるように綺麗な赤い髪”ということだから”クリムゾン”から取って”クリム”という名前から付けられているわ。
私のマスターが考えた名前にしては、上出来だと思うわっ!
マスターって本当っに名前を付けるセンスないのよっ!
元々奴隷の女の子たちに、仮の名前だけど”クロ”、”シロ”、”キー”ってそれぞれに付けるぐらいだもんっ!
髪の毛の色で名前を決めるなんて―――って思ったけど、私もそうだったわね……うん。
私がこの世界に生まれてからマスターの記憶とか、この世界の常識の知識とかを予め持って生まれたから、
なんていうかその……もうちょっと可愛い名前とか、付けてあげたらどうなのっ!って思ったのよ?
でも、それを言うタイミングを逃したのよね……名前を付けられた本人達は満更でもなかったし。
だから言わなかったわ。
それに、私の使命はマスターの邪魔者を排除することだからよ。
このマントや刀もそのためにマスターから貰ったもので、
私はそのために存在していると言ってもいいから。
◇
今日は、マスターと出会ってから2日目。
マスターとナビたんを待ってから、”エレナ”の家で朝食を食べた後、
マスターに連れられて冒険者ギルドというところに行ってきたわ。
見たところ小さい外見は小さい山小屋なんだけども、外の看板に看板があったから間違いないみたいね。
建物の中に入ってみると、
昨日の衛兵をやっていた”ゼーガン”というお爺さんがギルド職員をやっていたことには驚いたけど、
この人は只者じゃないみたいって何となく分かってたから、余り驚かなかったわ。
顔がなんだか鋭いし、昨日だって、何やら隠れてこそこそ活動していたみたいだから。
私的リストの中でも注意した方がいいわね。
それは別にしておくと、ギルド職員としての説明は、簡潔で丁寧で分かりやすかったわ。
うちのマスターにも見習ってほしいぐらい。
それから、私も晴れて冒険者カードを貰って冒険者になったわ。
その時は、ナビたん程じゃないけど……とっても嬉しく思ったわよ。本当に。
これで私も、少しは……本当の人間に近づけた気がするから。
◇
先ほど、マスターと他の女の子達を合わせて、今後どう活動するのかという会議が終わったわ。
まあ、この会議はマスターが積極的に主導しただけだから、会議と言えるのかは微妙なんだけど。
その会議内容は、
まず、私やマスター以外にも戦える人を増やして、この村を整備していくとのことなんだけど、
本当に出来るか不安だわ。
それについては、マスターが持つスキルを使って、私の様なモンスターを増やすって聞いたけど……。
マスターには、なるべくなら危険な目にも合って欲しくはないし……。
死なれたら私が、困るんだからねっ!!
そりゃあ……私がマスターに、この村に住んでみたら?と提案はしたんだけども。
これは、マスターの為を思って言っただけなんだからねっ!!
決して、他の子のためじゃないわっ!
でもねぇ……私がそんなことを考えていても、
マスターの目がいつもいつも”エレナ”の胸に目が言っているのは明らかにみえみえだわっ!!
そうよっ!やっぱり他の女に目を向けるなんて……いい気はしないわっ!!
だって、私がマスターのはじめての人間なんだからねっ!!
成り行きとは言え、私の他に女が4人も増えたわけだし、”エレナ”とかいうお邪魔虫は、特に要注意だわっ!
なによ、あの胸っ!! 大きすぎじゃないのっ!?
マスターの世界で例えると、スイカかメロンぐらいの大きさがあるじゃないのよっ!!
マスターがわたしを創った割には、私に対してあんまり積極的でもないし……一体どういうことなのよ?
やっぱり……胸の大きさが原因なの?
マスターが私を創造した筈なのに……ぅぅぅ…。
やっぱり、その対策を考えないといけないわね……。
そうだわっ!確かこの村には牛がいたわねっ!
ナビたんに、ちらっと聞いただけだけど、
牛の牛乳を分けて貰えれば……少しは私の胸も大きくなるみたいだからっ!
「マスターっ!!私、村の見回りに行ってくるから、心配なんかしなくていいんだからねっ!」
マスターに一言そう告げてから、村の外縁部の見回りに出かけたのだった。
次回は本編に戻ります。 更新予定日9/11