第四話 たけし
今日もバイトだった。
あ!!
また彼がお酒を買いに来た。
一人で来るようになってから、毎日のようにお酒ばっかり飲んでるみたいやけど・・・・・・
大丈夫なんかな・・・・・・。
そう思いながら彼を見ていたら、レジに来た。
酒くさ!!
もう既に酒を飲んでいたのか、離れていてもわかるくらいお酒の匂いがした。
「最近毎日お酒買ってますね、お酒好きなんですか?」
話かけるつもりじゃなかったのに、彼の事が気になりすぎて話しかけてしまった。
「・・・・・・」
やっぱり無言や。
「何で俺に話しかけるわけ?」
無言だった彼が、初めて話してくれた。
・・・・・・まさか言葉が返ってくるなんて思わなかった。
「あなたと話したかったからです!」
「はぁ?? 何言ってるん?」
あきれた顔をしていたのか、驚いていたのかは、分からない。
「あなたの事が気になるんです」
‘気になる’って・・・・・・!言ってしまった。
‘好き’って言った訳じゃ無かったけど、私の心臓は破裂しそうなくらいバクバクしていた。
「じゃあ俺の事なぐさめてや」
何て投げやりな発言。でも私は彼に返事をした。
「はい・・・・・・」
「バイト終わるの待っとくわ。名前なんて言うん」
「山本です」
「名札に書いてるやん。そうじゃなくて下の名前」
「マキコです」
「マキ・・・・・・コか。了解。外で待っとくわ」
彼はそう言って店を出た。
何でマキとコの間で言葉を詰まらせたのかは、この時は分からなかった。
なぐさめるって、一体何したらいいんやろ。
勢いで‘はい’って言ってしまったけど・・・・・・。