第三話 孤独
ある日、チコが私のバイト先に遊びに来た。
「まきこー遊びにきたで」
彼女はテンションがいつも通り高かった。
「うわ! びっくりした。チコいっつも、うちの事‘マキ’って呼ぶのに。
何で今日は‘まきこ’なん??」
「何でって?? あんたがバイト中やから」
「意味わからんし!」
バイト中だからって、私の事を‘まきこ’って呼ぶ意味がわからなかった。
本名は‘まきこ’やけど、‘マキ’って呼ばれる方がいいもん。
チコは私に差し入れと、自分用のお酒を買って店を出た。
チコが帰った後、いつも来ていたカップルの男だけがコンビニに入ってきた。
あれ・・・・・・・?今日はあの人一人で来てる。
昨日までは仲良さそうに二人で来てたのに。
まあ、たまには一人でコンビ二来たりとかもあるか。
この時は、そう思って彼等の事をそんなに気にもとめていなかった。
その日からカップルは二人で来なくなった。
次の日も、その次の日も、男だけがコンビ二に来た。
やっぱり何かあったんかな・・・・・・?
あんなにラブラブだったのに、彼女さんと喧嘩でもしたんかな??
さすがにあれだけ印象が深かったカップルが
二人で来なくなると、不思議で仕方がなかった。
彼がここに一人で来るようになってから、少しずつ彼の事を意識するようになっていった。
・・・・・・今日は思い切って話かけてみようかな。
彼が商品をレジに持って来た時、私は勇気を出して話かける事にした。
「あの・・・・・・」
話しかけようって思っても、やっぱり私は言葉に詰まってしまった。
「・・・・・・」
彼は無言だった。
「今日も暑かったですねー」
何でこの時こんなくだらない事、言ってしまったんだろう。
「早く会計してくれへん・・・・・」
男がそう言った時、私は慌てて「あ・・・・・・ごめんなさい」
と言い、急いでレジをすませた。
うう・・・・・・話かけるんじゃなかった・・・・・・。
私は彼に話しかけた事を、後悔していた。
・・・・・・でも、あの人なんであんなに大量のお酒買ってたんやろ?
この日、私はバイト中ずっと彼の事を考えてぼーっとしていた。