第二話 バイト
だって私は・・・・・・
まだした事がない。
まだ経験がない・・・・・・。
この年で経験が無いなんて恥ずかしくて絶対周りの子に言えない。
言いたくない。
チコだけが私が処女だと知っている。
チコは遊び慣れた人が初めての方がええんちゃう?って言ってたけど、
やっぱり怖かった。
だからタイプの男でもついていかなかった。
チコは経験豊富。だから私は彼女に、初めての時はどういうものなのかを聞いた。
「なあチコ・・・・・・初めての時ってやっぱり痛いもんなん?」
「んーどうやったかな?? 昔の事すぎて忘れてもーた
そんな思ってるほど怖ないって! すぐ慣れるって。さっきの人なんか
めっちゃ遊んでそうやから女の扱いも慣れてるんちゃうん? 今からでも
遅くないからいっときーや、チコがかんちゃんに電話して、こうき呼んでもらおうかー?」
彼女はそう言って携帯をかばんから取り出した。
「やめてーや! さっきの人は軽すぎやから怖いねん、確かにチコの言ってる通り
女の扱いは慣れてそうやけど・・・・・・」
「軽すぎって! あんたが固すぎやねん! そんなんやからいつまでたっても・・・・・・」
いつまでたっても‘処女’チコは私にそう言いたかったのだろう。
でもそんな事言われても、私にはこうきの部屋に行く勇気は無かった。
しばらくしてから、一人暮らしがしたかったのと、お金が欲しかったので
私はコンビニでバイトを始めた。
最初は失敗も多くて、お箸を付け忘れたり、弁当を温めすぎたりしてしまった。
店長に怒られるのはしょっちゅうで、でも毎日が充実して楽しかった。
ある日カップルが弁当を買いに来た。
いかつい感じの背の高くてかっこいい男の人と、夜のお仕事をしてそうな
派手な感じの女の人の二人。腕を組んでラブラブそうに見えた。
「タケ、今日はこのお弁当にしよーや。めっちゃ美味しいそう」
女が弁当を手に取り、男に見せていた。
「俺はまきがいいって言うもんやったら何でもいいから。まきの好きなんにしーや」
まき・・・・・・一文字違いや。でも私とは全然違う。
あの人は綺麗やけど、私は・・・・・・。
「じゃあこれにしよー。 レジ行こ」
二人はその弁当と、飲み物を持ってレジに来た。
「1053円になります」
男は財布から1000円と、小銭の50円を出した後、女に小銭がないかを聞いていた。
「まきー3円ないか?? 俺こまかいの持ってないわ」
「あるで! うち、出すわ」
めっちゃラブラブのカップルやなぁ。
・・・・・・別に羨ましくなんかないもん!!
彼氏がおらんかっても生きていけるわ!
心の中でそう叫んだ。
その日からカップルは毎日のようにコンビ二に弁当を買いに来た。
彼女さん・・・・・・全く料理とか作らへんのかなぁ?
まぁ、うちには関係けど。