第十二話 まき
あ・・・。
まきさん。。
まきは、一瞬びっくりした顔をしていた。
「・・・たけしの女? 私忘れた荷物取りに来ただけやから。すぐ帰るから」
私を見るなりそう言った。
「いえ、違います!! 彼女じゃないです。ごめんなさい私が帰ります。
まきさんはここにいて下さい・・・」
「どっちでも私には関係ないから。別に彼女ちゃうし。ここにいる理由もない」
「あの・・・」
「何?私急いでるんやけど」
「いえ、何でもないです」
まきさんにたけしさんの事を聞きたかった。たけしさんの事が知りたかった。
でも聞けなかった。私は黙ってしまった。
「帰るわ。たけしによろしく言ってて」
まきはそう言って部屋を出て行った。
まきさん・・・。本当はたけしさんと話したかったんちゃうんかな・・・。
お酒でも飲もうかな・・・。
私は冷蔵庫に入っていたお酒を飲み始めた。
「何やってるんやろ私、たけしさん・・・たけしさん・・・・・・」
涙が出てきた。
「呼んだ?」
「え?? たけしさん、起きてたんですか?」
「ついさっき目が覚めてん。マキコちゃん一人でお酒飲んでどうしたん?」
「あの・・・さっき」
私はまきさんがここに来た事を話そうと思った。
「さっき?? どうしたん?」
「さっき・・・さっき・・・・・・さっきおもしろいテレビがやってたんです」
私は嘘をついた。
「何やそれ」
たけしは笑っていた。
たけしさん笑ってくれた・・・。
「マキコちゃんどないしたんやー?何か今日変やで? よし俺も一緒に酒飲むか」
「たけしさん・・・あの・・・」
やっぱりまきさんが来た事を、話そうと思った。
「何?」
「何でもないです」
言おうとしても、言えなかった。
私達はいつも以上に酒を飲んだ。
「ねみーくなってきたぞー マキコちゃんー今日は一緒に寝るかー」
え?!