ᴥ クロぶちわんこ と トラがらにゃんこ ฅ
――『クロぶちわんこ と トラがらにゃんこ』――
クロぶちわんこは、いいます。
ぼくの声はまるで、どんどこひびく太鼓のように立派なんだと。
トラがらにゃんこは、いいます。
ボクの声はまるで、きらびやかなたて琴のようにステキなんだと。
二匹はいつもお互いの自慢ばかりを、いい合いっ子していました。
だから、二匹は毎日毎日、ケンカになりました。
クロぶちわんこは、トラがらにゃんこのことを、チビだとバカにします。
トラがらにゃんこもクロぶちわんこのことを、ノロマだとバカにします。
ある日のことでした。クロぶちわんこの姿がありません。
トラがらにゃんこは、羽を休めていた小鳥をつかまえて、たずねてみました。
おびえる小鳥は、クロぶちわんこは〈じどうしゃ〉とぶつかり、死んでしまったといいました。
トラがらにゃんこは怒ってしまい、小鳥をパクリと食べてしまいました。
べつのにゃんこが、マヌケなクロぶちわんこ、と笑います。
トラがらにゃんこも、一緒になって笑いました。
でも、なんだか楽しくありません。
ほかのにゃんこたちも、クロぶちわんこをバカにします。
トラがらにゃんこは、とても嫌な気持ちになりました。
その日からトラがらにゃんこは、にゃーにゃーではなく、わんわんと鳴くようになりました。
わんわんと鳴くトラがらにゃんこを、周りのにゃんこたちは仲間ハズれにしました。
にゃんこなのに、わんこのマネをして鳴くからです。
それでもトラがらにゃんこは、わんわんと鳴くことをやめませんでした。
毎日毎日、にゃんこなのに、わんわん、わんわん。
わんわん泣いていました。
いつ頃からか、トラがらにゃんこの泣き声は、消えてなくなりました。
ずっとなくならない、不思議な水たまりだけが残りました。
おしまい。
読んで頂きありがとうございます。
かえるが投稿した短編はいくつかありますが、
今回の話だけは毛色が違うものになっています。
トラ柄だけにと戯れて、再度目を通して頂きありがとうございました。