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H.Aさん、おめでとうございます!
やはり日陰でお祝いさせていただきます! 見ていないかもしれませんが、それでも自己満足にやらせていただきます!
うとうと……。
おっと、しまった。
うす暗いバスの中で、疲れている私はついつい、バスの中で眠ってしまうところだった。もうちょっとで降りないといけない。この後に降りても、バスは来ない。この前はそれで酷い目に合った……。
その時の失敗談を思い出して、私はついクスっと微笑んでしまった。まだ一人か二人乗車しているバスの中で物音をたてたのは恥ずかしかったが、これで目が覚めた。
ん?
音楽を聴きながら外の景色を楽しんでいると、20代半ばの女性が目に映った。様子がおかしい。視界がはっきりしているおかげか、一瞬だけ映っただけでも、その女性が、怪我を負っていることをすぐに察した。
大変だ!
頭に血が上ると、私の行動は早い。反射的に降車ボタンを押して、バスを降りるとすぐ、女性に下に近寄った。
「大丈夫ですか!?」
うずくっている女性の表情は解らなかったが、スタイルの良い体つきだった。なんとなく、美人なんだろう、っと予想した。
「あ、いエ、大丈夫なんデす……。えっと、オ構INあく(おかまいなく)」
あれ、女性の発音がおかしい。
もしかして、外人の人?
「でも、こんな状態の人を置いて帰れません。救急車か、最悪タクシーを呼びます」
「あの、メい惑デす……。止めてください」
「ですが……」
これじゃあ、ラチが明かない。
ただでさえ、田舎の深夜。コンビニのような施設も無いのだから辺りは乏しい電灯の明かりだけ。人も滅多に出歩かない。この女性の家がどこかはわからないが、まともに歩くことさえ難しそうなのに、ほうっておいて、は無茶な事を言う……。
そんな時。
女性のポケットから、カエルが一匹、飛び出してきた。
「カエル……?」
「わっ、カエルちゃん! 出ちゃダメ!」
女性は初めて、私の前に顔を出した。やはり美人だった。大人びていて、色気の香る妙齢の女性、って感じだ。
女性はなんとか飛び出したカエルを捕まえようと手を伸ばしたが、素早い動きでカエルはそれらを避けた。
そしてカエルは勢いよく、私の胸に飛び込んだ。
「あれ……」
飛び込んできたカエルは、私の胸に触れると同時に、姿を消した。慌てて全身を弄ってカエルを探したが、どうしてだろう、どこにも見つからない。
「カエルちゃん、若い女の子の方が好きなのかしら……?」
自虐的な子を言っている。
「それにしてもどうしよう、カエルちゃん、でておいで」
私に向かって話しかける。
「あの、カエルちゃん? というのは……」
「もう仕方ないわね……」
女性は落胆した。




