第5話 終幕
突如現れた真赤な仮面の変態に命の危機を救われたオオモンドと
変態パワーに押され気味のクロキング
戦場は一気に変態の空気になってしまった
この変態、一体何者なんだ!
赤い変態が大きな拍手をしてこちらに近づいてくる
クロキングはオオモンドに向けていた銃を
その変態に向けた
「なに!なんなのあんた!」
クロキングを無視し、赤い変態はオオモンドの目の前で立ち止まった
「なんだ・・・・!?」
近くで見ても気持ちが悪い仮面に
オオモンドは、後ずさる
「いやー!お前も立派なヒーローになったんだな!オオモンド」
変態の口から自分の名前が出たことに驚く
「なぜオレの名前を知っている」
「なぜ?俺様を忘れたのか?」
忘れたのか?その言葉を聞き
オオモンドは脳の中にある記憶の引き出しを一気に開けるが
どこを探しても赤い変態など知らない
「俺だよ俺様!」
そういい、変態は奇妙な仮面を外した
仮面に隠された素顔がオオモンドの前にさらされた
「どうだ?これでもまだ思い出せないか?」
「お前・・・・・・」
「思い出したか?」
「イーヤン・・・・イーヤンじゃないか!」
オオモンドは剣を捨て、イーヤンに抱き着いた
実に20年ぶりの再会である
「ちょっと・・・・アタシの存在忘れて仲良くしてんじゃねーわよ!」
無視をされたクロキングが怒りのあまり発砲した
放たれた銃弾はイーヤンの後頭部を掠めた
「そうだった、そうだった!まずはこの独裁者の始末が先だな!」
イーヤンはうきうきしながら
再び仮面を取り付けた
仮面をつけると、再びあの変態の姿に逆戻りする
色々つっこみどころ満載ではあるが
今は目の前にいるクロキングを討つことが先だ
「かめーん・・・・キーック!」とイーヤンが
クロキングの腕を蹴りあげる
その衝撃で、クロキングの手から拳銃が落ちる
すかさずイーヤンは「かめーん・・・パーンチ!」と
クロキングの顔を殴り、地面にたたきつけた
あまりのダサい技の名前に
開いた口がふさがらないオオモンド
効果音をつけるなら「ポーカーン」だ
「さぁ!オオモンドいまだ!」
「あ・・・あぁ!そうだな!」
イーヤンに声をかけられ、慌てて落ちた剣を拾い上げる
地面に叩き付けられたクロキングを見下ろした
「オオモンド!やめて!王は退くは!だから命は!!」
「最後の最後で情けない奴だ・・・」
オオモンドは剣を大きく振り上げ
そしてクロキングの首を狙い、一気に振り落した
「討ち取った・・・・・・」
「・・・・やった・・・・」
「やったー!!!オオモンド将軍!やりましたね!我々の勝利です!」
「もう、もう苦しまなくていいんだ!クロキングの時代は終わったんだ!!」
皆が一斉に歓喜の声を上げた
戦争は終わったのだ
オオモンド率いる地下組織「HERO」のクーデーターは成功を収めたのだ
「やった・・・・」
やり遂げて、気が抜けたのか
オオモンドは地面に膝をついた
そこに仮面を外したイーヤンが駆けつける
「よくやったなオオモンド!お前は立派なヒーローだ」
オオモンドの肩を組んで大喜びしている
「イーヤン・・・・・」
親友からのうれしい一言にオオモンドは笑みを見せる
しかし、できればこんないい場面でくらい
その仮面を取ってほしかったと
後世に残す記録書に、オオモンドはそう記した
クーデーターが終わり、クロキング王が死んだ今
新しい王に選ばれたのは、このクーデーターの最高責任者
将軍オオモンドだった
翌朝に即位式を控えたオオモンドは
窓際にある二人掛けのソファに座り窓から夜空をボーっと眺めていた
ここまで長かった
クロキングの勝手な意見で決められていた法により
多くの国民が苦しみ、命を落としていった
他国との関係も悪く、孤立した国であった
だが大変なのはこれからだ
今までの悪行を改善していく
法を改正し、政治を立て直す
他国との関係性も改善しなければならい
「ふう・・」とため息をつく
そこに幼馴染のイーヤンが入ってきた
「よう、王様」
「よせ、お前は今までどおり名前で呼んでくれ」
「ははは、俺様のはただの冷やかしだ、気にしないでくれ」
「まあいい、座れ」
促されて、イーヤンは
オオモンドの隣に座った
すかさずオオモンドはグラスを渡し、酒を注いだ
「こうしてオオモンドと飲めるなんて、20年前では考えられなかったぜ」
「そうだな、お前は成人してさっさと冒険家になったからな」
乾杯とグラスを合わせ
20年ぶりに再会した2人は月見酒を楽しむことにした