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仮面シメジーJ(カケス)  作者: クロシメジ
第4章 伝説の仮面シメジー
17/21

第3話 クーデター

打倒クロキングを掲げて結成された地下組織「HERO」

ついにクーデターを決行するときがきた


苦しい現状を打破するべく

オオモンドは仲間を引き連れクロキングと対峙する


勝利はどちらの手に・・・・!!


話し合いの末、クーデター決行の日が決まった


「決行はクロキング王が遠征から戻ってくる明日の朝だ」

オオモンドは組織のメンバーを集めそう告げた


その日、クロキング王は直属の部下を大勢引き連れて

シロシメジ王国に遠征へ行っている


シロシメジ王国の乗っ取りに出たのだ

領土拡大の目的もあるが

クロキング王はシロシメジ王国の財産でもある「水」を

何としてでも手に入れたかったのだ


その作戦を耳にしたとき、オオモンドは決意した

明日、クーデターを起こすと


シロシメジ王国はこの国からずいぶん遠い

いくら強い部隊を引き連れていようとも

遠征帰りであれば少なからず疲れているはず

つまり、そこを狙えば

武力が低い国民軍であっても、勝てる見込みが出てくるというものだ


卑怯だとも思った

しかし、世の中を変えるために手段を選んでいる場合ではなかった


オオモンドは仲間たちの中心に立ち

酒杯を持ち、腕を高く挙げ

「今宵は宴だ!明日の皆の活躍を期待する!共に戦おうぞ!」と声を張り上げた


オオモンドの掛け声に仲間たちは「おー!」と両手を掲げて叫んだ

この夜の宴は大いに盛り上がった



クーデーター当日

民衆たちは、この日のために用意した大量のコンロに火をつけ

新調した鉄のフライパンでバターを溶かしていた

ジューという音に、バターの焦げるにおいが

街中に立ち込める

バターを焦がすシメジたちの体にもその香りが染み付いていた


シメジにとってバターの香りは脅威である

自分が料理をされているような

憂鬱な気分になってしまうのだ

はたから見たら狂気の沙汰だ


しかし、そんな自虐的な行為を行うのも

オオモンドの作戦の一部だった

クロキングは、この国の誰よりもバターが嫌いだった

嫌いだからこそ、自分の意にそぐわないものに対し

バター炒めの刑をしてしまうのだ


まあ、そんな話はさておき


バターの香りを身にまとったシメジたちの間を

「HERO」という文字が刺繍された旗をなびかせて

オオモンドを筆頭とした騎馬隊が駆け抜けて行く

その後ろをフライパンを持った民衆たちがついて行く


何ともシュールな光景だ


まあ、またそれもさておき・・・


それが戦争開始の合図だった



クロシメジ王国へ入国するためには

大きな門をくぐらなければならない

もう少しでその門をくぐってクロキング王が帰ってくる


オオモンドたちはその門に向かって走っていた


そして、その様子をいち早く見つけたのは

門を守っている門番だった


望遠鏡をのぞくと、馬に乗ったオオモンドの軍勢がこちらに向かってやってくる

ほのかではあるがバターの香りも漂ってきた

門番はすぐに分かった

これはクーデターだと


オオモンドから視線を逸らし、反対側を向くと

クロキング王の軍が見えた


門番は急いで狼煙を上げた

なぜなら、クロキング王は出国する際に門番に告げていた

「もしも、アタシが帰ってくる日に何かあったら狼煙を上げなさい」と


その狼煙は城に残っている兵隊たちにも見えた

城内は大騒ぎだ

「謀反だ!オオモンド将軍の謀反だ!!」


王が留守なのをいいことに

兵隊たちは警備を薄くしていた

仕事をさぼるものまであった

その所為で、武装を済ませて城の外に出ると

バターの香りを身にまとった民衆たちに囲まれてしまっていた


これもオオモンドの作戦であった



「なんだ、この精神をえぐるようなにおいは・・・バターか!」


兵隊シメジたちは鼻を押さえ、表情を歪めた

すぐに民衆を押さえつけたいが、においの所為で動けない


「我々は!今の王政を解体するために結集した地下組織「HERO」だ!」


民衆はフライパンを突出し、名を名乗ると

兵隊シメジたちとの距離を詰めた

一歩、また一歩と兵隊シメジたちは後ずさるが

四方を囲まれているために身動きが取れない

それに


「なぜお前たちはそんなに平然としていられるんだ!」

バターの香りを身にまとっているのに

平然としている様子の民衆を見て、1人の兵隊が叫んだ


「俺たちが今までお前たち王族にやられてきた仕打ちに比べたらこんなものなんてことない!お前たちを討てるのなら、この身がバターまみれになることなどどうでもいいことだ!」


フライパンを持ちバターの香りをさせた民衆たちは最強である

どんなに強い武器をもち、丈夫な鎧で身を固めようとも

このバターのにおいの所為で兵隊たちは力が入らない


持っていた武器が次々と手から抜け落ち

しまいには立っていることも出来なくなり

バタバタと兵隊たちは倒れて行った


倒れた兵隊たちを民衆たちは縛り上げ

国外へ繋がる門でクロキング王を討ちに行ったオオモンドたちへ合流するべく

城を跡にした


城に残ったのは

バターの香りと、気を失った兵隊シメジだけが残っていた



一方その頃

オオモンド達は帰ってきたクロキング王の部隊と対峙していた

奥のほうで鼻を押さえているクロキング王の姿が見える

バターのにおいに参っているようだ


オオモンドはクロキング王に向かって叫んだ

「クロキング王に告ぐ!我ら地下組織「HERO」は今日を持って、この不公平で不条理な王政を解体する!」


その言葉に仲間たちも大声で応戦した


クロキング王を取り囲む兵隊達がどんどん地面に膝を突き出す

バターの香りが体中の神経を刺激し、立っていることができないようだ

そんな中でもクロキング王は、しっかりと2本足で立ち

オオモンド達に向かって歩いてくる


オカマといえども一国を統べる王だけあり

そこら辺のシメジとは体のつくりが違うようだ


「オオモンド・・・・やってくれたわね」

「さあ、引導を渡せ!そうすれば命は奪わない!」

「フフ、アタシが何も知らないとでも思った?あんたが謀反を起こすことなんて最初から分かっていたわ!」

「なんだと!」


ゴゴゴゴという大きな音がこちらに近づいてくる

その音がするほうを見ると

巨大なクロキングの顔がこちらに向かってくる


「なんだあれは!!」


オオモンドと仲間たちは、その姿を捉えてたじろいた

それはクロキングの顔を模った巨大な何かだった


「その時のことをオレの先祖はこう続いいていた・・・・“気色悪かった”と」



「オーホッホッホ!あれはアタシが他の国の武器商人に作らせた魔王1号よ!」

「魔王1号は私の顔を模った重機関銃よ!あの愛らしい唇から銃弾が連射されるのよ!

無数によ!やはり数は美しいわ!」


自分の作品に酔いしれるクロキング

こんな気色の悪いものを作るのに、自分たちのお金が使われていると思うと

腹の底から怒りが沸いてくる


「なんだと・・・あんなものをいつの間に作ったんだ・・・」


「詰めが甘いのよオオモンド!あんたの仲間にはアタシの部下が何人か紛れていたのよ!この魔王1号は、今日、このために作らせたのよ!」


再びオーホッホッホと高笑いするクロキング

まさか裏切り者がいたとは

ショックを隠し切れないオオモンドと仲間たちだが

今はそんなことに引っかかっている場合ではない


「少しおイタが過ぎたようね、オオモンド

でも、その反逆精神・・・アタシ嫌いじゃないわぁ!だからこれはご褒美よ!」


「ご褒美・・・だと?」

「そうよ、この魔王1号を使って1番最初にあんたを殺してあげるわ!」


「お行きなさい!魔王1号!」


魔王1号という気色の悪い重機関銃が動き出し

唇から種を吐くように銃弾が飛び出してくる


その銃弾は容赦なくオオモンド達を襲ってくる



先ほどとは一転して不利な状況になってしまった

第3話 クーデター その7


戦場に銃声と悲鳴が響き渡る

重機関銃と剣では、当たり前だが分が悪い

オオモンドの仲間たちは次々に倒れて行く


「こうなればもはや正面突破しかない!」


オオモンドは強硬手段に出ることを決めた

「お前たちは左右に旋回してクロキングの兵隊どもを討ってくれ!

オレはこのままクロキングに向かって突進していく!」


オオモンドの命令に対し、フライパンを持った庶民たちは

「わかりました!」と敬礼しクロキングを討ちに行ったが

100旗ほどの兵がその場に残っていた


「何をしてる?お前たちも行くんだ」


「いいえ!我々もお供します!最後まであなたと共に戦います!」


「お前たち・・・」


「死なば諸共!我々はあなたについて行きたい!」


仲間たちの熱い思いに

オオモンドの目から涙がこぼれる

その涙を手の甲で拭い、気持ちを引き締めなおす


「よし!行くぞ!!」

「はい!!」


その掛け声とともに

オオモンド達は、突き進んでいった



オオモンドを一番後方に置き、兵隊たちはクロキングに向かって突進した

重機関銃の激しい銃弾により、仲間たちが次々と倒れて行く

その間をオオモンドは突き進んでいく


仲間たちが壁になっているおかげで

オオモンドは何とかクロキングの顔を確認できるところまで近づいた

腰に差していた剣を抜き馬のスピードを上げる


「その首もらたぁぁ!」


オオモンドは馬から飛び降りた

クロキングの首を狙って一直線に


「甘いんだよぉ!この庶民無勢がぁ!!」


いつもの女言葉はどこへやら

完璧に男に戻ったクロキングは

懐に隠していた拳銃で

飛び込んできたオオモンドを打った


放たれた銃弾は、オオモンドのこめかみを掠った

打たれた衝撃でオオモンドはその場に倒れてしまった


クロキングは、倒れたオオモンドの頭を蹴りあげ

無理やり仰向けにした

そして間髪入れずに、拳銃をオオモンドの口に押し込んだ


「死になさい、オオモンド!アタシに楯突いた罪は重いわよ!」


カチャっと引き金を引いた音がダイレクトに脳に伝わる


(ここまでか・・・・)


オオモンドは死を覚悟し、静かに目を閉じた


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