第1話 つかの間の休息
なぜ、グーフォ・ビヤンコは地球にやってきたのか?
なぜクロウはクロシメジ族をあれほどまでに憎んでいるのか・・・
話はピーコック達の先祖の代までさかのぼる。
第4章は、クロシメジ族の歴史に迫ります。
クロウがマネキンと向かい合って語りだしていた頃
ピーコックはモンドの知人であるブルが運転するトレーラーの中にいた
ハンドルを握ると人格が変わるらしいその男のおかげで
街からずいぶん離れたところまでやってきた
「ここまでくればあいつらもそう簡単に追っては来れないだろう」
「・・・・よく・・・この状態で・・・普通にしゃべれるな・・・」
こんな状態なのに、モンドはいつもの通り冷静であった
しかし、ピーコックは違う
遊園地のアトラクションのように、いや、それ以上に揺れる車内の所為で
意識を保っているのがやっとである
「ブルの運転には慣れているからな」
「・・・・そりゃ・・・お前は・・・そうかもしれないけど・・」
もう車を止めないと本当にやばい、死ぬ!とピーコックは思った
その思いが通じたのか
車はある施設の中に入り、そしてようやく停止した
「助かった・・・・」
ピーコックはそうつぶやいて意識を失った
目が覚めると見覚えのない天井があった
あわてて起き上がろうとするも、めまいがひどくうまく起きられない
車酔いがまだ残っているようだ
「ピーコック、目が覚めたか?」
そう言って駆け寄ってきたのはモンドだった
知っている顔を見てホッとしたピーコックは
「あぁ」と弱く返事をした
「よかった ここはオレの務めている研究所の救護室だ
具合がよくなるまで休んでいろ」
「研究所・・・・?」
研究所で働いていることは知っていたが
まさかそれが、自分が変身してしまった
このベルトとドリンクの開発だとは思いもよらなかった
親友だと言っているが、実のところモンドのことで知らないことは多々ある
いい機会だし、いろいろ聞きたいが
まだ頭が重い所為でうまく話せない
まずは体調を戻すことが先と思い
ピーコックは瞼を閉じた
再び目を覚ますと、窓から明るい光が入ってきた
眠っている間に朝になったらしい
たっぷり寝たおかげですっきりと目覚めたピーコックは
ベッドを降りて、体を伸ばした
そうしている間に、モンドが救護室に入ってきた
「気分はどうだ?」
「あぁ、ゆっくり寝たおかげですっきりした」
「そうか、変身したままだし、寝づらいかと思ったけど大丈夫みたいだな」
「えぇ!オレ変身したままなの!!」
そういえば、よく見るといつもの自分の格好じゃない
真っ赤なスーツのままだ
あまりにも体になじんでいて気が付かなかった
顔を触ってみると金属のような感触
仮面みたいなものもついたままのようだ
「そう言えば・・オレ自分の姿ってまだ見てないかも・・・」
「・・・・・・そうだったか?」
「鏡はねーのか?」
ピーコックの言葉にモンドは焦った
かっこうつけのピーコックが、今の姿を見てしまったら
ショックのあまり落ち込んで
再起不能になってしまうかもしれない
それだけは避けねばならないと
モンドはうまく話を逸らす方法を
一生懸命に考えた
「あ、そうだ!ガルもパラキもキートンも無事だったようだ
さっき電話をしたら何とか逃げたって言ってた」
焦った挙句に出た言葉は
今まで話題にもならなかったバンドメンバーのことだった
モンドのほうがパニックになっている、どう考えても
だが、単純なピーコックは、「そうか?よかったな!!」と
鏡のことを忘れて、仲間の無事を喜んだ
その様子にモンドはホッと息をついた
それも束の間
「あ!」とピーコックが手をたたいて大きな声を出した
それにびっくりしたモンドは大きく体を震わせた
「あのさ、モンド」
「な・・・なんだ?」
「ちょっと聞きたいんだけどよ」
「な・・・何を・・・」
「あの白いシメジたちってなんなの?なんで地球に来たんだ?なんでオレは変身したんだ?」
鏡のことじゃないとわかりモンドは再びホッとした
そして顔をあげてピーコックに向き合った
「そうだな、ちゃんと話さなければいけないな・・・」
「長くなるが、今からオレが言う話は全部本当のことだ
ちゃんと聞いてくれるか?」
真剣な表情のモンドに、ピーコックは「あぁ」と小さく頷いた