第5話 心に落ちた黒いしみ その5
目の前で父親を殺されてしまったクロウの心には
大きな黒いしみができてしまった。
父の死の悲しみを引きずったまま
クロキングに連れられ、生まれ故郷を後にするクロウ
彼の人生はこの後どうなってしまうのか!?
今回で第3章の最後となります。
目を覚ますと見慣れない天井の模様が見えた
ゆっくりと体を起こす
どうやら馬車の中にいるようだ
「なんでこんなところに・・・」
馬車の窓から外を見ると
街の広場にシロシメジ国の国民たちが集められていた
そして、その中央に父を殺したクロキングが立っていた
「おバカなシロシメジ族の皆さんに大事なお話があるわぁ
昨夜・・・この国の王シロキングは・・・」
「アタシが殺しちゃいましたぁ!」
クロキングの発言に国民が動揺しざわつき始めた
どういうことだ、王様が殺された?
嘘だ、まさかとクロキングの言葉を信じられないという感じだった
我も信じたくなかった
目が覚めれば、いつもと同じ毎日が待っていると思っていた
だが、目を閉じると浮かんでくるのは昨日の悲惨な光景
真っ赤な血の色と父の死に顔
あれは嘘ではなかったんだ
「んもう!うるさいわねぇ・・・」
クロキングは空に向かって銃を撃った
バン!という銃声で国民たちは口を噤んだ
「シロキングはもういないの、だからね、この国はこのアタシ、クロキング様が支配することにしたわ!」
再び国民がざわめく
ふざけるな!国へ帰れと野次を飛ばすが
クロキングはまたも銃をうち、国民たちを黙らせた
「税金は収入の8割をアタシに納めてもらうわ、逆らいたいなら逆らってもいいわ、あんたたちの子供がどうなってもいいならね」
クロキングがそういうと
縄で両手を縛られた子供たちが広場の真ん中に連れてこられた
助けて、こわい、おかあさん、おとうさんと泣いている子供たちの前に
クロキングが立った
「この子たちは人質としてもらっていくわ、それでもアタシに逆らうならお好きにしなさい」
オホホホと高笑いするクロキングに
「ふざけるな!こんなおかまになんで従わなきゃならないんだ!」と男が叫ぶと
次々に「そうだ!」「ふざけんな!」とまた野次を飛ばした
「・・・おかまって言ったのは誰だ・・・・」
それまで笑っていたクロキングの顔つきが変わった
おかまと言った男に近寄り、持っていた銃をその男の口にねじ込み引き金を引いた
「おかまじゃないわよ!今後、アタシのことをバカにするようなことを言ってみなさい!殺すわよ!」
その一連の行動に
誰もが言葉をなくした
街は静まり返り、とらわれた子供たちと我は馬車でクロシメジの国に連れて行かれた
それからというものシロシメジ王国は
クロシメジ王国の支配下となり
国民たちは高い税金を納めた
あんなに笑顔であふれていた街は
すすり泣く声と、国民の嘆きの声
そしてクロキングに対する憎しみの念で覆い尽くされていた
あの日、人質として我らシロシメジ族の子供たちは
クロシメジ王国へ連れて行かれた
国を出て初めて見た景色は
どこまでも続く砂漠ばかりだった
今までと違う景色に唖然とした
ここには色がない
豊かな自然に囲まれた白シメジ族の国とはまるで違った
そこで奴隷にされて、死ぬまで働かせるとクロキングは言った
子供たちはただ泣くことしかできなかった
我も同じく泣くことしかできなかった
絶望しかない、そう思っていたが
天は我を見過ごさなかった
国についてすぐに内乱が起こった
クロキングの部下たちが国民を引き連れ
革命を起こそうとしていた
その戦場に紛れて
我らシロシメジ族の子供たちはこの国から逃げ出すことができたのだ
「我がクロシメジ族を憎む理由、わかったであろう?」
「・・・・・・・」
「分からぬなら壊れてしまえ!」
グシャ!
あの日、我に落とされた黒いシミは
今でもこの心の中に消えずに残っている
この恨みを果たすためだけに我は生きてきた
お前らの先祖のクロキングが我にしたように