第4話 心に落ちた黒いしみ その4
クロウとクロウの父を捕らえたのは
クロシメジ族の王クロキングだった。
自分達とは正反対、体も心も真っ黒なこの男の出現によって
クロウの運命は大きく変わる
しばらくの沈黙の後
クロキングは「はぁぁ」とオーバーアクションをつけながら
ため息をついた
「しかたないなぁ、アタシこういうのあんまり好きじゃないんだけど、あんたの息子をアタシに譲ってくれるっていうなら、この国の国民の命は保障してあげるわよ?どう?国民が第一の国王さん、悪くない話でしょ?」
「貴様!!!この外道が!」
「ふふふ、そうよ・・外道で結構!でもね、そのお高くとまった真っ白な態度がアタシは気に入らないのよ!クロシメジがなぜ黒いのか?あんたに教えてあげるわ!ガキの縄をほどきな!」
クロキングに言われて、部下の黒いシメジが我の縄をほどいた
せっかく解放されたのに、体に力が入らなくて動くことができない
「クロウ・・・クロウ大丈夫か?」
「父上・・・ちちうえ・・・」
自分のことよりも、我の心配をしてくれることがうれしくて
残された力を振り絞り、父のもとへと駆け寄った
「父上・・・」
「クロウ、クロウ・・・・!!」
我は父に抱き着き、ようやく触れたぬくもりに安心し涙を流した
その姿を黙ってみていたクロキングが
大きな拍手をしながらわざとらしく我らに近づいてきた
「いいわ!とてもいいわ!感動的よ!こうでなくちゃ、ここからのショウが始まらないわ!」
興奮した顔をして両手を頭上に挙げるクロキング
今にも踊りだしそうだ
「さあ、息子をシロキングから引き離しなさい!It’s show time!よ」
無理やり父から引き離された
嫌だ!と抵抗したがやはり無駄だった
「父上!父上!!」
「クロウ!クロウをどうするつもりだ!」
クロキングが父に近づき
「大丈夫よ、息子にはなーんにもしない、国民にも何もしないわ」
そういいながらクククと不気味に笑った
「でもね、あんたの命をもらうわ」
その言葉に我も父も固まった
命をもらう、それはつまり父を殺すということ
我は泣き叫び部下の手をすり抜けクロキングに駆け寄った
「やめろ!父上に手を出すな!」
力いっぱいクロキングをたたくが
所詮、子供の力
あっさりと跳ね除けられてしまい
我は床に思い切りしりをついた
「クロウ!」
「クロウ・・・あんたはこれから父親の最後を見ることになるのよ、その目によーく焼き付けるのよぉ!」
そういうと、野党のボスはシロキングのところに行き
腰にさしてある剣をおもむろに抜き、父の首元にかざした
「シロキングちゃん、よぉく聞きなさい!」
「アタシね以前から白シメジ一族が掲げる公明正大の精神とやらが気に食わなかったの」
「そんなきれいごとで政が務まるとでも思ってた?思ってたのよねぇ、こんなチンケな軍しかなくて、自衛する能力もない・・・バカな王様には無残な死に方がお似合いよ!」
オーホッホッホッホと高笑いするクロキング
「でもね、ただ死んでいくだけじゃつまらないでしょ?
だからね、あんたの大事な息子に真っ黒なシミをつけてあげるわ、
憎しみという黒くて大きなシミをね!」
そう言い終わるとクロキングは、
父にかざしていた剣を高く振り上げ、そしてその剣は父の命をいともたやすく奪っていった
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
「嘘だ!父上・・嫌だ・・・あぁぁぁぁぁ!!」
父の体から、おびただしい血が流れでる。
あまりの恐ろしさに呼吸が浅くなる
これは夢だ悪い夢だ
夢だと思いたいのに
クロキングは我に近づき、容赦なく現実を見せつける
「怖いわね、つらいわね、苦しいわねクロウ」
我は瞑っていた目を開き、クロキングをにらみつける
涙でかすんでよく見えないがクロキングがにやにや笑っているのは分かる
「いいわね、その目・・・初めて誰かを憎んだ目ね・・・憎みなさい、私を恨みなさい」
「うわぁぁぁぁぁ!父を返せ!父を返せ!」
我はがむしゃらにクロキングに殴りかかった
「フフフ、かわいいわねぇ、非力で無力で」
クロキングは、ハエでも払うかのように我を突き飛ばしたが
突き飛ばされても、我は立ち上がり奴に殴りかかった
そういうことを何度繰り返しただろうか
気が付けば夜が明けていた