第1話 心に落ちた黒いしみ その1
今回から第3章が始まります。
モンドとピーコックは、隙を突いてクロウの魔の手から逃げ出すことに成功した。一方、ピーコック達に逃げられたクロウは怒り心頭!
これからが恨みつらみをはらすとこだったというのに・・・・
クロウの憎しみの物語、第3章の始まりです。
「どこへ消えた!クロシメジ王国の末裔ども!」
ようやく恨みを果たすべき時がきたというのに
あと一歩というところで逃げられてしまった
だが、地球に住むクロシメジ族どもに我ら白シメジ族の脅威を見せつけることはできた
それだけでも良しとしよう
クロシメジ王国の末裔どもの抹殺は後の楽しみだ
あいつらには最高の恐怖を味あわせてやろう
我が、お前たちの先祖にされたのと同じように
ただ一つだけ気になることがある
赤いあの変態仮面だ
地球侵略のためにいろいろ調べた
地形や文明などいろんなことをこと細かく
しかし、あの変態仮面の記述だけはどこにもなかった
ただのコスプレならば気にすることもないが
我の兵隊シメジを倒したあの威力はいったいなんだ
これは調べる価値がある
「お前たち、あいつらの居場所とあの変態仮面について調べてこい!見つけたらすぐに我に報告しろ!」
クロウは振り返り、隊列を組んでいる兵隊シメジに向かってそう指示をだした
「御意!」と兵隊シメジたちがクロウに向かって敬礼し
謎の変態仮面の情報と居場所を探するために街中に散らばっていった
「クロシメジ族か?忘れたくても忘れようがない種族の名よ」
クロウは廃墟と化した街に降り立つと壊された建物の脇に立つマネキンに向かって話し始めた
その姿を見た兵隊シメジは「話足りないんだろうな」と思いながら、クロウに指示されたとおりあの変態仮面の調査へと向かった
我は、シロシメジ王国の王子としてこの世に生を受けた
王国は山脈に覆われているせいか他の国から孤立していた
しかし、水には恵まれていた
他の国では貴重とされている水がこの国には豊富にあった
人々はその水で畑を耕し作物を作り、それを醗酵させ酒を醸造することができた
そしてその王国産の酒は、他の国との貿易に欠かせない商品になっていた
我が酒好きなのは、そのせいであろう
「お前は酒が好きか?」
「・・・・・・」
「ふ、無言か・・・まあいい」
当たり前だがマネキンなので無言である
しかも喋れたとしても、それは子供服用のマネキンなので酒はご法度だ
そんなことにかまわずクロウは話を進める
我の一族は、みな陽気で、仲が良く、笑いが絶えなかった
小さな小競り合いはあったが、酒があれば仲直りできる
そんな連中ばかりだった
そして、そんな連中を治めていたのが、白シメジ族の王、「シロキング」
我の父だ!
父は酒貿易で得たお金を国民のために使った
水道光熱費はタダ、税金も必要最低限しか取らなかった
国民の幸せを第一に考える、尊敬すべき父だった
「お前は父親を尊敬しているか?」
「・・・・・・」
「いないのか、まあ、尊敬できるような人物などそうそういるものではないからな」
そして、何よりも父は争いを好まなかった
シロシメジ王国の外では、領土拡張のための戦争が数多く行われていた
そのせいで多くの命が失われていくことを、父は嘆いていた
山脈という地の利は、侵略されるかも?という恐怖を払拭してくれた
「自然に守られている国」と誰もが思っていた
そのため、必要最低限の軍しか持たなかった
我は父が大好きだった
いつか父のように国民から愛される王になりたいと思っていた
そのために勉学に励み、精神鍛錬のためにいろいろな武術も習得した
そして常に父のそばに身を置き
父の仕事の手伝いをした
書類を整理したり、お茶を出したり、お菓子を焼いたりと
時折り父は、目を細め「お前が女の子だったら、いいお嫁さんになるんだろうな」とつぶやくことがあった
それだけ気が利くということを言いたかったのであろうが?
まだ9歳だった我は父の意図していることがわからず
「僕は男の子なのでお嫁さんにはなれません・・・・」と至って真面目な答えしか返せずに場の空気をしらけさせたこともあった
今だったらもう少しましな答えを返せたかもしれな・・・いや、無理だ、絶対無理!
まあ、話はそれたが
我は、父が大好きだった
父のようになるための努力が楽しかったし幸せだった
こんな日々がいつまでも続くと我は思っていた
だが、現実は容赦なく我の目の前にやってきたのだった
「何だと思う?」
「・・・・・・・・」
「ふ、貴様のような凡人には分かるまい」