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転生先は異世界でした。  作者: U1
第一章 旅立ちまでの話
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王様は○○○○な人

この国には、魔王がいる。

初めはかなり疑っていた。何故かというと、魔王がいるならもっと平和じゃないんじゃないの?と思ってしまうからだ。離宮に引きこもってる自分が何言ってんだって話でもあるけど。


しかし、魔王や魔族について調べていくうちに、その疑問は解消された。

そもそも、私の中には魔王イコール倒すべき存在という方程式があった。元ゲームッ子ですから。だがまず、その方程式が間違っていたのだった。


魔王とは、魔族を統べる者。それはこの世界でも同じ。違うのは、魔族は歴とした人間であるということだ。

魔力を多く持ちすぎた結果、体の一部が変形したり異常な力を持ったりした人間、それが魔族の始祖である。遙か昔は魔族なんて存在しなかったのだ。


古い古い記述によると、迫害されて故郷を追われた人間達が集まって未開地だった南の大陸に国を作り、そして王を決めたのが魔王の始まりだという。


それ以上詳しいことは分からないが、とにかく魔王は基本的に人間とは関わらないようにしているらしい。文献を読んでからはむしろ報復に来るんじゃないかと思うけど、昔の話を掘り起こす気も無いらしい。


その代わり、魔族は無関心だ。


復讐も侵略もしない。かといって、友好関係を結ぶつもりもさらさら無いらしい。彼らが原因で生まれる魔獣を放置している現状がそのことを如実に表している。

しかも最近、ずっと昔に殲滅したはずの上級魔獣がこの国をおそいに来たことがある。

魔獣は理性を持たないケダモノだ。しかし、魔族から漏れた魔力を身体にためているため人相手ではなかなか倒せない。上級と来ればなおのこと。魔獣は減らしても減らしても魔力を得れば復活するため、本当に殲滅したいのなら魔族を滅ぼさなくてはいけない。


王が選定の儀の内容を簡潔に述べたとき、私はぽつりと思った。

戦争、するんだ?



「お前が王になりたければ、『魔族領への行き方を探す』ことだ。」

毎度毎度思うけど、うちの王様で私のお父サマって偉そうだよね。いや、偉いんだけど。どこか俺様を感じさせるお人です。一人称私だけど。


王の言葉に広い部屋がざわついた。喜んでいる奴は未だに王位を諦めてない奴か?それは置いておくとして、何やら考え込む人もいれば納得したように頷く人、慌てている人もいる。ちなみにルエーナは慌てていて、アレージュノ様は無表情だ。…アレージュノ様は通常運転だね。


魔族領は南にある大陸だ。それはこの世界では常識である。しかし、魔族領の行き方を問うてただ南に行けばいいと応えた奴はただの馬鹿にということになる。


海は荒れに荒れているため却下。飛行機なんて物は無い。空を飛ぶ生き物に乗っていくなら、私が思いつく限りでは、聖獣に連れて行ってもらうしかない。ちなみに、獣人はほ乳類しかいないため却下。ていうか例えいたとしても同じ体格の人間を乗せて海を渡るのは無理だろう。

聖獣とは理性を持った魔獣だ。魔族と同じかそれ以上の魔力を持ち、たまに人間の味方をしてくれる。ただ、本当にたまにだし気まぐれで仙人のような存在なので、これも却下だろう。

すなわち、魔族領に行くことなど不可能なのだ。


だから、行き方を探せなんて言う王様は、とんでもない悪王となる。だが、いつでも国や民のためを思うこの王は自分のためにそんなことを言う人間じゃない。


それならば、やはり理由は戦争だろう。

魔族領の行き方をルヴェイトに調べさせ、そこから魔族を殲滅するのだ。無理にしか思えないが、相手はあのチート、ルヴェイトだ。父と同じように不可能を可能にしてしまうかもしれない。魔族を殺しに行く算段をつけてしまうかもしれない。


胸にどっしり重い物が降りた気がした。戦争なんて、好きじゃない。血も、痛みも、死も。

ルヴェイトはどうするのだろう。私は顔をわずかに顔をゆがめながら王の前に堂々と立つルヴェイトの顔を見た。


ルヴェイトはまったく動揺していなかった。こう言われるのが分かっていたような、そんな顔だった。何の感情も読み取れないその顔は、逆に不安になる。

「御意」

短くそれだけ応えた自分の息子に、王はにやりと口の端を持ち上げて見せた。


この人やっぱりディープだわ。………息子もな!

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