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転生先は異世界でした。  作者: U1
第二章 二人が旅をする話
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否定せず、

孤児院でリードを待っていた俺達は、今は何故か神殿の廊下を歩いている。大勢の乱雑な足音が不快だ。統率性に欠けているんじゃないのか?

なめらかな白磁の壁が続いているのを眺め、小さくないため息を漏らす。すると前で先導していた男が顔だけ振り向いた。

「お疲れのようですね。休憩室を用意しておきましょうか?」

「必要ない」

男は軽く肩を竦めた。その拍子に、明るい茶髪が揺れる。そいつが着ている白い神官服は、豪奢かつ繊細な作りになっていて、どこからどう見ても高級品であることが分かる。

隣を歩くレヴィアは、一生縁がないままでいられた神殿と柔和な笑みを浮かべながら冷えた空気を流す神官に怯えていた。そうなるだろうとは思っていた。故に彼女を連れ出すかは最後まで迷ったが、目の届く場所にいてくれた方がまだ安全なのだ。彼女の心境はまるで孤立無援だろうが。




この高位の神官は、突然孤児院にやってきた。対応していたジーラ院長が慌てた様子で俺達と所へやってきて、俺を強引に連れ出したときには既に嫌な予感がしていた。

入り口には、十数人の神官たちが直立で並んでいた。その列より前に立ち、青い龍を模した華奢な杖を持つ男は穏やかな笑みを浮かべていた。俺が目の前に立ったのを目にいれ、静かに頭を下げる。

「御目にかかれて光栄です、ルヴェイト皇子。私はスレイア神国第二級神官、アルフェビアと申します。」

誰かが、息をのんだ。

本来なら見るだけの存在だったであろう高位の神官の、丁寧な礼。そしてその言葉の意味を、レヴィアもジーラ院長も、およそ正確に理解したようだった。

「神官殿が、一介の旅人に随分なことをしてくれるな」

身分を肯定せずに俺がそう言うと、何を思ったのか含むように笑った。

「..では、旅人のルヴェイト殿。貴方にお願いが会ってここへ参りました。」

内容はわかっていた。返事をしない俺に、高位の神官は己の手で、ある場所を示す。

「貴方には神殿へ来て、神官長に会っていただきます。」

「...急な話だな」

同行人とともに霊山へ赴く予定なので、一週間待てと言いたい。

「例えそうでも貴方が断わる理由はないはずですが?」

...その通りだ。

俺は面倒だという態度を隠さないまま、結局神官アルフェビアの頼みをとやらを引き受けた。



正確には断れる理由がなかった。


俺が行っているのは自国の神聖な儀式。他国が口出すことはよほどのことでない限り不可能。

だがそれは軍事力や政治的行動という意味で、ただの助言や誘いを断るのはさすがまずい。

ここで俺が断れば、ひいてはユーギストンの魔族に対する感情が疑われる。魔族の友好を優先して他国を無下にすると、後々厄介な大きな問題になる。

四大国全てで魔族との友好関係を結べればいいのだが、そううまくいく話でもない。

ユーギストンでは議会はあれど王が全てにおいて優先され、意志の統率が叶いやすい。

しかし共和国となったフェイヴァーノでは恐らく意見が別れ、まとまるには時間がかかる。上級魔獣の脅威が復活してしまった俺達にはそんな時間はない。

またローキードは五つの工場区がそれぞれ独立した国のようなもので、尚更便宜が図りにくい。それにあの国はあの国で魔族嫌いが多い。

そしてこの国はスレイア主義の国。スレイアを侮辱したとされる魔族を許すには時間が足りないだろうし、霊山という魔獣の住処があるおかげか魔獣が国の結界を破ることは極めてまれだ。つまり、魔族と組む理由がない。

魔族との友好はユーギストンだけの望みであるのだ。

だから見つかり、請われてしまえば、こちらは表立って誘いを断わることはできなかった。だが会うのが神官長一人ならむしろ話を通しやすくもある。これは、出来れば回避したかった絶好の機会。


…俺はいつから皇子ばれていたのか。顔でばれるような場所には行っていないし、監視されていた心当たりはない。一つを除いて。

つまり、そういうことだったのだ。ある仮定がひとつ、俺の中で形になった。



神殿の奥に進むにつれ、少しずつ、空気が重くなっていく。魔力が濃くなる。

レヴィアの様子に異変はなかった。神殿の奥に行くということは霊山を進むことであり、しいてはスレイアに近づくのと等しいのだが。

すぐに見つかるなどという楽観視は出来ないようだ。



精巧な文様が描かれた扉の前でアルフェビアが立ち止まる。扉を軽く鳴らして、すぐに返答がされる。

そのとき、ずっと黙っていたレヴィアが口を開いた。

「あの、私ここで待ってますね?」

彼女は未だ、自分が連れてこられた理由を理解していないようだった。アルフェビアがくるりと彼女と向かいあった。

「そうしてもらうとしましょうか。ルヴェイト殿の頼みなので断れませんでしたが、生憎神官でない方をここまで連れるのは違反でございますので。」

「待て」

何処ぞへ連れて行きそうなアルフェビアの手を後ろから掴む。振り向いたアルフェビアの目は僅かに苛立ちを含んでいた。

「隣の部屋を使わせてもらう」

「....分かりました」

すぐに隣の礼拝室が空けられる。


「俺が渡した物を、忘れないように」

不信がる彼女にそれだけは伝えると、何のことだかは覚えていたようだ。戸惑いながらも、それを服の上からしっから握った。

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