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転生先は異世界でした。  作者: U1
第二章 二人が旅をする話
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人の為と書いて

「とりあえず、どうぞ中へ」

扉が音を立てて開き、レヴィアが顔を出した。身元確認は済んでいないが、どうやら俺達が入る許可は得たらしい。先導するレヴィアにならい孤児院へと入る。

日が落ちているからだろうか。子供がいる気配はするものの、孤児院の中は静かだった。灯魔道具がほのかに照らしている廊下を無言で歩いて行く。

応接間らしき広い部屋に入ると、中にいた中年女性が笑みを浮かべて軽く頭を下げた。彼女が椅子を勧めたのでそれに甘える。

「お茶を持ってきますね。」

そこまで対応して貰わなくても構わないのだが、レヴィアはそう言うと早々に他の部屋へ消えてしまった。長椅子に座り直した女性はそれを見送ると俺達にもう一度深く礼をした。

レヴィアは先に一人で入った時に一体何を言ったのだろう。理由の分からぬ感謝をされ混乱している俺達を前に、女性は顔を上げて朗らかに笑った。

「貴方達がレヴィア…、あの子を助けてくれた人ね?」

俺達と会った経緯を話したのか。穏やかにそう言われ、リードが笑いながら頭を掻く。

「助けたつもりは無かったんですわ。だだ魔獣狩りたかっただけで。むしろ助けられたのはこっちです」

リードは怪我をしたほうの手を緩く振った。

「怪我を治してもらったんですよ。だから礼を言うのは俺の方ですって。」

「でもその怪我っていうのは、魔獣と戦ってついた怪我でしょう?」

「まぁ…」

油断した自覚のある阿呆の口元が引きつった。

本来ならあの程度の奴らにこの男が傷つけられることは無い。自分の力を過信した証拠だろう。大鼠返り討ちになりそうになっていた旅人の一人をかばった結果だろうが、それは変わらない。

「それに貴方たちが居なかったら恐ろしいことになってたのは事実だわ。あの子に怪我が無くて、本当に良かった…」

女性は軽く目を伏せて胸をなで下ろした。ふうと息をついて安堵している様子は本物の母のように見える。

だが、それ以外の何かにもよく似ている気がした。

女性は笑んだ顔を上げて俺達を見る。困ったように眉を下げて口元に手を当てると、長いすから身を乗り出した。

「本当に助かったのよ?あの子はホントにいつもあぶなっかしくて困っちゃうわ。今日の朝もね」

「院長様!それより自己紹介は!?」

茶を盆にのせて現れたレヴィアが声を上げて遮った。女性はレヴィアの大声に一瞬驚いたようだがすぐに照れ笑いする。

「ごめんなさいね私ったら。私は、この孤児院の管理をしている者です。ジーラ=ウリーティエと言うの。ジーラと呼んでくれると嬉しいわ」

「私はレヴィアといいます。」

言葉と共に茶が置かれる。茶器の中はやはりと言えばいいのか灰色だった。

「俺はリーディンっす。呼びづらきゃリードで」

「ルヴェイトです」

「リードさんに、ルヴェイトさんね!」

ジーラには何の反応も無い。

それにほっとした自分を誤魔化すように茶に手を伸ばすと、茶器に赤い紋様で虎のような絵が描かれていた。スレイア神だろうか。そう思いながら飲んで茶器を下ろすと、ジーラが伺うような顔でこちらを見ていた。

「やっぱり、旅人さんには飲み慣れないかしら」

「いえ、美味しいです」

事実こちらの方が味は上等だった。孤児院も思っていたより広く立派な物であるし、彼女は裕福な家の出なのだろう。


その後、しばらく他愛のない話が続く。夜が更けてしまいそうだったのをレヴィアが止めて、俺達はようやく解放された。





「この部屋です」

灯魔道具が大分重用される暗さになった廊下で、レヴィアが一つの扉を指した。並ぶ扉の感覚からして広さは一般的な宿の一部屋分と行った所だ。院は大きく部屋数が多いということか。

「ほんと、泊めてくれてありがとな。おやすみ」

リードがそう言って扉に手をかけると、レヴィアが小さく声をあげた。

「どうした?」

「あの、一つお願いがあって…」

「おうおう。何だ?」


「朝にあったこと、院長様には黙っていてください!」


腰を綺麗に、だが勢いよく折って、彼女はそう言った。そう言う割に声が大きいのだが良いのだろうか。

「構わないが、何故?」

俺が問うと、レヴィアは躊躇いながら訳を話した。

「院長は、ちょっと心配性の方で…。もし朝にあったことを知ったら、私は、外出禁止になってしまうかもしれないんです」

だからあの時わざと遮ったのか。納得しつつ、解せない。少し、過保護すぎではないだろうか。

「わかった。気をつけるな」

そうは思っていないのだろう。呑気な顔でリードがレヴィアの頭を撫でた。レヴィアは特にいやがる様子

を見せない。

「引き留めてしまってすみません。じゃあ、おやすみなさい。」

先ほどとは一転して安堵の表情で腰を折ると、彼女は長く続く廊下の中消えていった。


「似てるのか」

中に入るリードの後ろをつきながら俺がそう言うと、頭をかいて苦笑した。

「まぁ、な。後先考えないところが特に」

「お前がそれを言うか」

「いや!俺はちゃんと考えてる!」

つまり考えてあれということか。口に出すのも億劫になり、俺は寝る支度をすることにした。外套を脱いで腰に差していた剣を外して寝台の側に置く。背後から阿呆の言葉が続いた。

「ま、似てる似てないおいといて、世の中の女の子全員に幸せになって欲しいと思ってるぜ。全員な、全員。ちょっとイロイロ大人びてて愛想笑いが異様に上手い子とかもな。」

「………」

口を開くのが億劫だった。なので下ろした剣をもう一度拾った。

「イッテ!んだよ何がわりいんだよー幸せにしてやれよー」

恐らく下品な笑みを浮かべながらこっちを見ているだろう馬鹿を無視して寝台に潜り込んだ。


次代の王として期待する者、ねたむ者、利用しようと企む者、様々な者が俺に近づく。それは俺が皇子である限り当然のことで、逃げることは許されなかった。情けないことに俺は逃げていた。腹違いの妹がいる離宮は、俺にとっていい逃げ場所だった。

そんな俺を、笑みを浮かべて迎えるエーリをいつしか妹と思えなくなっていた。スレイア神国に来て一日目だが、早く帰りたいと思う。早く帰って、会いたい。



意識が沈む寸前、ふと気づいた。自国でのことを思い出したからだろう。

ジーラの見せる動作はエーリを担ごうとにじりよる下等な貴族によく似ていた。

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