シルクって気持ちいい。
どうも始めまして。ユーギストン王国第二皇女、エーリ=ユーギストンと申します。
トラックにはねられて、気づいたら赤ちゃんだった。知らない人に囲まれ暮らす日々は、初めこそ夢ならいいと思ったけれど、あれから16年。さすがにもう未練は無い。
ていうか死んじゃってるわけだから、未練持ってもしょうがない。むしろ、転生できたことを喜んでいる。
だって、この世界楽しすぎる!
シルクのような手触りの寝間着を脱いでいく。こんな高価な物、昔なら絶対着なかっただろうなあ。
第二皇女って良い身分なんだよね。お姫様なわけですから。
ユーギストン王国は、この世界でもっとも大きい国と言っていい。と言っても、国として成り立っているのはたったの四つ…いや、五つなんだけど。
とにかく、そんな大きな国であるユーギストンのお姫様な私は、良いご身分なんですよ。まったくもって似合わないと思うけど。すでに用意されているドレスをまとう。そう、似合わないよねえ。こんな素敵で綺麗なドレス。装飾品も、必需品のピアス以外はつけたくない。
姿見に自分を映して、服に負けている自分に軽くため息をつく。そんな時、扉がかるく叩かれた。
「どうぞー」
入ってきたのは、いつも通り年老いた侍女だった。私の乳母を務めた人で、私が一番信頼している人です。
「朝食ができました。」
「はいはい」
こんな風に気安く会話できるのも彼女と兄妹くらいだ。
皇女としてこの会話はまずいからね。他の人にはもっとしっかり敬語を使ってます。礼儀が成ってない皇女、なんて言われたくない!たとえ、昔習った記憶が曖昧すぎて怪しくなる敬語でも!
腰は低くしておくに超したことはないと思うの。
皇女皇女と言っているが、私の立場は決して高くない。むしろ、恩情でここにいると言っても過言ではない。どういうわけだと言われてしまうが、こちらも複雑な立場なのだ。