もらえるものならもらっとく
結果だけを言うなら、私は成功した。鉄を作り出すイメージをしてそれが装填されるのを感じてから、ゆっくりと構えて引き金に手をかけた。
鉛の塊である弾丸が飛ぶには、色々な作用が必要なのだがこれは魔法だ。引き金が起こす力を最大限に引き出して、それを装填された弾丸にぶつける。弾丸は勢いよく飛び出していった。フェディオさんとルーエが高い歓声をあげて、それはすぐに私の悲鳴にかき消された。
さて、誰が予想したであろう。
とんだ弾丸が、狙いだった木を打ち抜いてさらに遠くに行くなんて。少なくても私は予想していなかった。木の半ばで止まれば理想、と考えていたのに。
呆然としていると、なにやら固い物が当たる鋭い音が聞こえた。
「こわしたかっ!?」
慌てて撃った方へ走る。あの先には確か離宮を囲む門があったはずだ。外敵を阻むそれは並大抵のことじゃ壊れないらしいが、今回はどうだろうか。
心臓がばくばくと鳴る。入り口である門の、離宮側を眺めるが何も壊れていない。ほっと息をついて弾丸を探すと、それはすぐに見つかった。足下に落ちていた弾丸を拾うと、魔力が切れたのだろう。糸がほどけるようにそれは自然に返っていった。
「エーリ様っ!」
ルーエが息を切らしてこちらに向かっていた。
「大丈夫だった!」
思わず破顔してそう伝えると、ルーエはほほえんで私の頭を撫でた。私が眼を瞬くのも気にせずに、ルーエは驚くことを言った。
「当たったのがこれで良かったですね。これは、アレージュノ様が結界の媒体にしている物です。簡単には壊れませんから。」
「え、そうなの!?」
「あら、アレージュノ様から聞いてませんか?」
「まったく…」
兄妹二人は知っていたという。というか、気づいたのだとか。魔力が高い二人はそういう物を察知する力も強いらしい。
「ここは皇女二人が住んでいます。それなのに中に護衛が誰もいないのは、そういう訳なんですよ」
「ちなみに、いつから…?」
「貴女が、ここに入れられてから」
ほほえみを浮かべるルーエからは、アレージュノ様への敬愛が見て取れた。
私も胸がいっぱいになった。しかし、頭の片隅から無機質な声が聞こえる。
『これは、単純な好意なのか?』
疑心暗鬼な自分が、実は嫌いではない。だが、申し訳なかった。自分はここまで良くしてもらっているのに、やっていることと言えば完全にニートだ。この世界の成人は17歳。そろそろ恩返しをするころだろう。私は静かに決意をより固くした。
ルーエは私の頭を未だなで続けている。この女にも伝えなければ。決意と、感謝を。
「エーリ様、大丈夫でしたか?」
戻ってみると、フェディオさんは呑気に椅子に座っていた。おい。
「ここには王妃様の結界が張られてるそうじゃないですか。なら、大丈夫でしょう?」
ルヴェイトにでも聞いたのだろうか。ジト目で睨む私に気づいたのか、そんな言葉を口にした。
「大丈夫でしたけどね。驚きましたよ…」
「そうですね。僕も驚きました」
フェディオさんは銃をくるくると玩んでいた。何で彼が持っているんだろうと疑問が浮かんで、すぐに思い出した。そういえば、走ったときに放りだしたんだった。
「あんなに威力が出るとは…」
恍惚とした表情のフェディオさんに、私は少し恐怖を抱いた。
これは武器。しかも、恐ろしい威力を持っている。魔獣だって、人だって殺せる。
だけど私は、まっすぐフェディオさんに向かった。
「それ、ください」
フェディオさんは少しだけ目を瞠った。だが、すぐに目元をゆるませる。
「それは、もう貴女に差し上げた物です」
差し出された黒光りするそれを、私はしっかり受け取った。
これは、きっと役に立つ。外に出るのなら。




