夢の終わり~2
『世界の意思は覆ることはありません、従ってください、なお従わなかった場合、世界条約第12条三項目、家畜民の存在意義、により粛正の対象になります……世界の意思は覆ることは~……』
機械的な女性の声が薄暗い部屋に響いていた、地下に設置されたその部屋はコンクリートに覆われ、出入口を厳重に施錠されていた、部屋の中央にはデスクアップスクリーンにポップアップされた女性が無表情に言葉を繰り返していた
「そんな!!急すぎるじゃないか!!……せめて娘だけは!!娘だけはネクストに入れてくれ!!頼む!!」
そう叫んだ男はスクリーンにすがり付いた、おおよそ平民では着ることが出来ないであろう服装に、男がある程度の立場であると感じさせた
『世界の意思は覆ることはありません……』
しかし女性のは変わることなく告げた、その様は彼女が無機物である証明にもなった
「お仕舞いだ、何もかもお仕舞いだ…」
男はゆらりと立ち上がり、施錠された扉を開けた
「行ってくるよ、母さん!今日はでかいの捕ってくるから!!」
「いってらっしゃいジン、あんまり無茶するんじゃないよ」
「わかってるって!」
バタン!!
勢い良く閉まる扉の音を背に聞きながら家を飛び出し、村の外にある森えと歩を進めた
「今日は何が捕れるかな~ウルフにボアそれともエレフかな~」
とても気分が良かった、今日の日差しが強すぎるのも今日は許せた、むしろ清々しかった
「なんたって今日は母さんの誕生日だし、でかい奴一匹狩って、そろそろ母さんを安心させないとねっと」
今日の予定を考えるうちに森えとたどり着いた、ここからは人間ではなく魔物の棲みかだ
「よし、行くか!!」
一言気合いをいれジンは森えと足を踏み入れた
「どうしたのお父さん!?」
視線の先には憔悴しきった男の姿があった、俯きふらふらと歩く様にただならぬものを少女は感じた
「お父さ…」
「ミナ逃げろ…」
「えっ?」
「早く行くんだ!!この村から少しでも遠くに!!」
ミナの腕を掴み、引きずるように引っ張った
「痛いよお父さん!!それに今日はジンのお母さんの誕生日だよ!?私料理作るんだから!!」
引きずられながらも抵抗するが、どんどんと村の出口に連れられていく、その時だった、聞いたことのない雄叫びのような、叫び声のようなものが聞こえたのは
「おいおい、頼むよ~何で今日に限ってラットすらいないんだよ~」
腰に提げていた短剣で辺りの木や草を叩き、音を立てながら森を進む、何時もならその音に引かれ何匹もの魔物が姿を表す、故に普段の狩りでは極力音を出すことはない、今の状況は余りにも異常だった
「何時もなら、いやっ!!てほど出てくんのに、ついてないな~」
ジンがため息を吐くと同時に
「ウォーーーン!!!!」
周りの木々が余りの声量にビリビリと震えた、ジンは腰を抜かしその場に尻餅を着きながら、周囲を探るためキョロキョロと視線を巡らす
「な、なんなんだよ…明らかに上位種の声じゃないか…に、逃げなきゃ…」
匍匐前進の様に草を掻き分けながら進み、木陰えと身を隠した、視線はキョロキョロと動かすが足はすくんで動けずにいた、動けずにいたのが幸いしたのか、変わりに思考を巡らせることができた、何故上位種が?この森には最下位種、下位種しかいない、だからこそまだ15歳になり間もないジンが狩りに来ることが出来た、そして上位種は縄張り意識が強くめったに縄張りから出ることはない、ジンには読書家とゆう一面もあった、知識は人を選ばずまた、知識は人を救うからだ、そのために魔物に関する本は読み漁っている、ジンは得た知識を思い返した、なら何故上位種が?答えは簡単だった
魔物は人肉を好み、また上位種以上であれば自ら村を襲う場合もある
「母さん!!」
ジンは足の震えも忘れ走り出していた