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第一話

下手な文章ですが、よろしくお願い致します。

 ほとんどが煉瓦で造られた街での事です。

 この街は洋国大陸で最も治安の悪い街として知られています。

 何故かというと犯罪組織が日々争い、無関係の人まで巻き込んで殺してしまうという悲劇が何度も起きているからです。

 夜になればまるでお祭りのパレードのように爆発音や銃声が聴こえてきます。

 そして、ちょうど今そのような時間帯。

 何処からか聴こえる破裂したような音。

 地面に溜まる血液と転がる死体を男が平気な顔で踏みつけて歩きます。

 黒のビジネススーツ姿の男はまだ若く、少し長めの茶髪。

 瞳は洋国特有の青い色で冷ややかさを感じさせます。

 街から出ると一面草原の静かな景色。

 男の視線の先には木製の小屋があります。

 人が住んでいるとは思えない程脆く、地震の揺れで一番先に崩壊するのではないでしょうか。

 小屋の中へと入る木製のドアの前に五段ある階段。

 そこを上り、ノックもせずに男はドアを開けました。

 男の視界に映ったのはまるで来るのを知っていたかのように待っていた一人の少女。

 感情のない紅玉の瞳は男を睨んでいます。

 腰には純白の鞘に収められた白銀の刀を差していました。

 倭人特有の黒髪と幼い顔立ち。首には赤いマフラーを巻き茶色のコートと黒のズボン姿。

「お前がセツナだな?」

 少女は答えません。

「お前に話がある」

 それでも返答しない少女に男は話を勝手に進めて行きます。

「俺はキングのボスをやっているんだ」

 男は椅子に座ると古いテーブルの上に足を乗せた格好で喋ります。

「お前がクローンだろうがそんなのは関係ない。俺は力のある奴だけを仲間にする。つまり」

 少し間を空けた男。

「セツナ、キングに入」

「断る」

 少女の第一声が男の話を遮りました。

 次に、

「さっさと帰れ、私は頼まれた仕事をしたい」

 少女は自室から出て行ってしまいました。

 取り残された男は口元から笑みを浮かべ、胸ポケットから携帯電話を取り出します。

 着信履歴から番号を探し出しボタンを一回押して発信。

 受話器に耳を近づけ男は相手の応答を待ちます。

『はい、ボス』

 女性の声ですが、少し低い。

「お前と同じ特殊クローンがこの街にいるそいつを消せ。名前はセツナ、倭人だから見ればすぐに分かる。逃すなよ」

『了解しました』

 通話が終わり、男は満足げに笑いながら少女の部屋から出て行きました。

 先に自室から出た少女、セツナは街の公園にいます。

 公園の前には小さな酒場が一軒、そこに用があるようです。

 店内に入ると数人の客と店員がいました。

 客にお酒が入ったグラスを運ぶ店員で唯一の女性も、カウンターで酔った客の相手をしている中年の男性も皆バーテンダーの服装。

 セツナはカウンターに背を向けてワイングラスを洗っている少年に寄って行きます。

 そして、その少年の襟首を後ろから思いきり掴むと無理矢理こちらを向かせました。

「セ、セツナ!?」

 短い金髪に青い瞳、意志の弱そうな表情でセツナを見ます。

「昨日老人に孫娘が行方不明なので探してほしいと頼まれた」

「へ、へぇ、た、大変だね」

「孫娘の情報を探していたらどうやらこの街で売春行為をさせられていると聞いた」

 無言の睨みに、少年の表情が強張っていきます。

「ジャン、酒場の倉庫で何をしている?」

「し、知らない!」

 ジャンと呼ばれた少年は必死に首を横に振ります。

 セツナは襟首を掴んだ手に力を入れると、ジャンの顔をそのまま煉瓦の壁へと叩きつけました。

 その震動で棚から商品のワインボトルが落ちて地面で割れてしまいます。

 煉瓦の壁は血で汚れ、ジャンの鼻や額、唇と鮮血が溢れ出ていました。

 お客も思わず口を開けて、唖然とします。

「正直に答えろ」

「ゴメン……」

 か細い声で謝罪するジャンにセツナは納得したのか襟首を離しました。

 力無くジャンは座り込みます。

 駆け寄る他の店員達は慌てて応急手当を施しました。

 そんなことは気にせずセツナは足早に酒場の倉庫へ。

 倉庫は地下にあるようで、セツナは暗い階段を下りて行きました。

 人間では見えにくい暗さですがセツナの視界からは明るく映ります。

 人がいるような気配はありません。

 地下には酒やワインが入った樽が積まれていました。

 行き止まりでもある一番奥に辿り着くと、確かにそこには人がいました。

 ですが生きていません、上半身裸のまま男が三人倒れていたのです。

 頭部には小さな穴がありそこから鮮血が溢れ出ていました。

「まだ新しい……」

「貴様がセツナだな?」

 セツナしかいないはずの倉庫から別の声が聞こえてきました。

「残念だが貴様が探している娘は森の中で殺されていた」

 響き渡る革靴の音は後ろから。

 セツナは来た道を振り返ります。

 視界には同い年と思われる少女で、長い茶髪を後ろで結び、力強く真っすぐな青い瞳でセツナを睨んでいました。

 両手に拳銃が二挺、腰には二本の刀を差しています。

「誰だ?」

「今から死に逝く奴に名乗る名は無い!」

 銃口から飛び出す弾丸。

 セツナは自慢の反射神経で速く反応し、刃を抜刀して弾を真っ二つに斬り落としました。

「覚瞳をしていないのにその反応」

 少女はさらに何発も銃弾を撃ち続けてきます。

「む」

 目が疲れてきたのでしょう、次第にセツナの動きは鈍くなりあっという間に隅に追いやれてしまいました。

「なんだ、避けるだけか? 貴様」

 セツナは無言のまま白銀の刃を前に構えているだけです。

「所詮自分の力も知らぬ身だ。その状態でいつまでも避けれないだろう」

 これで最後だ、と少女は引き金を力強く押さえました。

 ですが、

「あれ?」

 掠れた音だけが響きます、もう一挺も同じ音しか出ません。

 そう、弾切れです。

「しまっ」

 セツナはすぐ様少女の胸元まで接近し二挺の銃身を簡単に切断させました。

「っ!」

 次にセツナは刀の柄で少女の腹部へ突きを入れ、打撃を与えます。

 その衝撃は少女の意識を飛ばしてしまうほど。

 それでも少女はセツナを視界から離さず、よろけてしまう両足を地面に踏ん張らせて拳銃を投げ捨てました。

 マフラーと襟を両方掴まれ、セツナは壁へと突き飛ばされてしまいます。

 その隙に少女は刀を二本鞘から抜き取り構えました。

 灰色の刃と輝きの無い漆黒の刃がセツナに向けられます。

「ゴホッゴホッ……貴様! その力をキングの為に使おうという気はないのか?」

「無い」

 戸惑う事無く答えるセツナ。

「なら、今度こそ殺してやる」

 少女はセツナに向かって走り出しました。

 二本の刃が左から右へと横に動きます。

「不気味な刀だな?」

 一本の刀で少女の攻撃を弾いたセツナ。

「倭国の宝刀、というやつだ」

 返答しながらも少女は斬撃をやめません。

 上から下からと刃が襲いかかりセツナは全く反撃することができません。

 左から右へと振られる刃をセツナはしゃがみ込んで回避します。

 すると後ろにあった酒樽が代わりに割れ、中からアルコールの入ったお酒が地面に零れてしまいます。

 セツナの全身にもお酒がかかります。

 嫌なのでしょうか眉をひそめました。

 振り翳された二本の刃がセツナに向けて急降下。

 それを白銀の刃で受け止めたセツナは力ずくで立ち上がりました。

 勢いで少女を押し返します。

 少女もまたセツナの刃を軽く横に流して、距離を取りました。

「貴様の大事なお友達の倉庫が壊れる方が早いな」

「ここの地域じゃ酒もワインも高い、弁償しろ、ジャンに謝れ」

「だったら早く貴様がこの世から消えろ」

「断る。命を奪われる理由もない、お前のその行為は意味を持たない」

 セツナは構えたまま少女を睨みます。

「仕方がない……」

 少女は目を閉じて、俯きます。

「?」

「私の名前はヘレナ。貴様同様クローンだ」

 次に目が開き、俯いていた顔がセツナの方を向きます。

 その瞳は収縮し、まるで獣のような眼光。

「いくぞ!」

 ヘレナの移動する速度は異常なものでした。

 気付いた時にはセツナの体が天井を突き抜け、外に放り出されていたのです。

 地下の天井は見事に粉砕され、大きな穴が空いていました。

 砂煙が舞う中セツナは空中で目の前にいるヘレナを視界に捉えます。

「これがクローンの力だ」

「クローン?」

 ヘレナは交差する様に刃を構え、そのまま地上へと落ちて行くセツナに襲いかかります。

 それと同時にセツナは目の前を横切る何かに視線を奪われました。

「あ……猫」

 純白の子猫が空中にいる二人の間を通って行ったのです。

「えっ!?」

 ヘレナは何を思ったのかそこで瞳孔を元の形に戻してしまいました。

 二人より先にヘレナの刀が地面に落ちました。

 その隙にセツナは左手にある刃の切っ先をヘレナに向けて投げつけます。

「くぅ!」

 刃はヘレナの右肩に命中。飛び散った返り血がセツナの顔に付着しました。

 セツナは両足でしっかり地面に着地します。

 ヘレナはしゃがみ込む態勢で着地し、突き刺さった刃を無理矢理抜き取りました。

 後ろと前から血が吹き出し、左手で右肩を押さえます。

「くっ、情けない、たかが猫に驚くとは……」

「ナー」

 先程の子猫がヘレナに近寄ってきます。

「ヒッ!」

 顔を青ざめてお尻を完全に地面へと密着させるヘレナの姿に、

(猫嫌い?)

 セツナは内心そう思いながら二本の刀を拾いました。

 鞘で追い払うと、子猫は人間では通れない狭い道へと逃げます。

 二本の刀を持ち主であるヘレナに差し出しました。

「な、何故私を殺さない?」

 セツナは眉をかしめます。

「犯罪組織は嫌いだ。私は人も殺したくない」

 セツナは受け取ろうとしない刀を前に置くとヘレナに背を向けてそのまま暗闇に去って行きました。

 取り残されたヘレナは歯を噛み締めながら俯きます。

「情けない……」

 そんなヘレナを覆う大きな影。

「!」

 その影の正体を見た瞬間、ヘレナは怒りと失意の感情を湧きあがらせます。

 ヘレナは輝きの無い漆黒の刃を手に立ち上がりました。



 夜の街に響き渡る破裂音。

 ですがそれで騒ぐ住民はいません、慣れているのです。

 地面に飛び散る血、落ちた刀と拳銃。

 決して誰も外には出ません。

 誰も巻き込まれたくはないのですから。


 続く。



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