我が家からの支援金を他の女のために使うというのは、さすがに問題だと思いますよ……。
婚約者である彼ガウィンが我が家から彼の家に出していた支援金を使い込んでいた。
しかも、生活のためにとかちょっとした趣味のためにとかではなく、浮気相手の女性のために。
「……ということで、ガウィン、あなたとの婚約は破棄とするわ」
だから私は決めた。
彼とはここで終わりにすると。
「あなたは、我が家からの支援金を、他の女のために使っていたのでしょう? しかも贅沢のために」
我が家が彼の家に支援金を出してきたのは、私たちの婚約があったからこそ。つまり、私たちの関係が終われば支援金うんぬんも終わるのだ。彼にこれ以上無駄遣いさせないために今私がすべきことは、この関係を終わらせること。目の前の彼と婚約者同士でなくなること。
「か、勘違いだよ! 違う! 絶対違う!」
「記録があるのよ。言い逃れしようとしても無駄」
「無駄遣いなんてしてないよ!」
「我が家からのお金で他の女のためにドレスや宝石を買う。それって、無駄遣いでないの?」
「ちが、う……」
「それに。そもそも、浮気相手がいること自体がおかしなことだし。婚約者がいる身で他の女とも仲良くしているとか、あり得ないわ」
だから、と、続ける。
「婚約は破棄。これは決定事項よ」
そこまで言ってもなおガウィンは「だから、勘違いなんだって!」「君は間違ってるよ! 間違った考えで一方的に婚約破棄とかおかしいよ!」などと返してきていて、話にならないな、と密かに思った。
証拠も示さず勘違いだとか何とか言っても意味なんてないのに。
「では、さようなら」
「待ってよ!」
「それはできません」
「話を聞いてよ!」
「あとのことは……親を通じて話をしましょう」
ガウィンと共に幸せになれればそれが一番良かった。
でもその道は選べないと決まってしまった。
ならばもう、その道は切り捨てて、また別の道を選ぶしかない――だがそれも人生であり仕方のないこと、生きていれば時にそういう状況に出会うこともあるのだろう。
その後、親同士が話し合い、ガウィンが勝手に女性のために使った分のお金は返してもらうこととなった。
無駄遣いされた分の支援金は返ってきたのでその点は良かったと思う。
そして、当たり前だが今後は支援金は出さないということで話はまとまったようだ。
向こうの親はかなり粘って何とか関係を続けようとしてきていたようだけれど、そこはこちらの親がはっきり拒否したようである。
また、話し合いの中では、ガウィンに浮気相手ができていたということも問題視されたようで。
そのことについて謝罪する意味でのお金も支払ってもらえることとなった。
おかげで、思った以上のお金が我が家へ入ってくることとなったので、結果的には良かったのかもしれないと思う部分も多少はあった。
◆
あの後、我が家へのお金の返却のために借金することとなってしまったガウィンの両親は、身勝手過ぎた息子を厳しい労働をさせられる場所へ送り込んだそう。で、そこで働いてガウィンが稼いだお金はすべてガウィンの両親が回収する、といったことをしていたようだ。
だがそんな生活も長くはもたず。
厳しすぎる環境での労働に体調を崩したガウィンは、衰弱し、一年も経たないうちに落命してしまったようだ。
ちなみにガウィンの浮気相手だった女性はというと。
後に、ガウィンの母親と話し合う中で揉み合いになった際に後ろ向きに転倒してしまい、打ち所が悪くこの世を去ったそうだ。
◆
あれから数年が経った、穏やかな初夏。
私はついに結ばれる。
想い合える人と共になる日がやって来た。
ガウィンの裏切り、婚約破棄の決心、などなど、ここへ来るまで本当に色々なことがあったけれど――でも、こうして、無事祝福の日を迎えることができて良かった。
この道を選んだことは間違いではなかった。
今は迷うことなくそう言える。
あのまま進んでいた私と、進む道を切り替え進んだ今の私と、どちらが幸せかなんて分からないけれど。でも、そんなことはどうもでいい。結局のところ、今の私だけが今の私なのだから。
ありのままの私で、最高に幸せになろう。
前向きな決意を胸に。
未来へと歩み出す。
◆終わり◆




