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異端(仮)  作者: vastum
アリス編
98/103

第76話

世界が、砕けた。


 魔力がぶつかり合う衝撃は、音じゃなく圧として来る。

 肺の奥が、きしむ。


「……散開!」

 フェリスの声。


 その一言で、全員が動いた。


 説明はいらない。

 何度も修羅場を越えてきた動きだ。


 カイが、正面に踏み出す。


「――来いよ!」


 拳に集まる魔力が、空気を歪める。

 一歩、踏み込んだだけで、地面が割れた。


 管理者の一人が、即座に対応する。


「……出力、想定以上」

「近接、危険」


 遅い。


 カイの拳が、防御ごと叩き割った。


「一人!」


 衝撃で吹き飛ぶ影。


 その背後を、ユウが通る。


 無音。

 影の足元が、崩れる。


「……拘束、解除」


 刃が閃き、

 管理者の足運びが、一瞬だけ狂う。


 そこに。


「――落ちろ!」


 レナの魔法が、空間そのものを押し潰す。


 重力が、反転した。


 影が地面に叩きつけられ、

 魔術陣が乱れる。


「……構造、崩壊」

 管理者の声に、初めて焦りが混じる。


 俺は、踏み込んだ。


 剣を振るう。


 考えていない。

 正解を探してもいない。


 ただ――

 最も洗練された動きが、自然に出る。


 刃が、魔力の継ぎ目を裂く。


「……観測不能」

「動作が――」


 言葉の途中で、

 その影は沈黙した。


「二人!」


 息が荒い。

 でも、身体はまだ軽い。


 背後で、エッグが笑った。


「……相変わらずだな、お前」

「戦い方が、気持ち悪い」


「褒め言葉として受け取る」

 俺は言い返す。


 フェリスは、全体を見ていた。


 誰がどこにいるか。

 どこが崩れ、どこが持つか。


「……来るわ」

 低い声。


 最後の影が、ゆっくりと前に出た。


 今までのとは、違う。


 圧が、段違いだ。


「……なるほど」

 影。

「これが、“変数”」


 視線が、俺に向く。


 嫌な感じがした。

 まるで、内側まで測られているような。


「……測るな」

 俺は、剣を構える。


「測らねば、管理できない」

 影。

「世界は、危うい」


「世界を守るために」

 俺。

「人を壊すのか」


「壊しているのではない」

「再構成している」


 その言葉で、

 エッグの表情が、凍った。


「……やっぱりな」

 エッグ。

「中で聞いた話と、同じだ」


 フェリスが、即座に判断する。


「……全力」

「ここを越える」


 誰も、異論を出さない。


 カイが、歯を剥いた。


「……上等だ」


 次の瞬間。


 全員の動きが、一つに重なった。


 カイが正面を叩く。

 ユウが死角を断つ。

 レナが空間を縫い止める。


 フェリスの声が、正確に飛ぶ。


「――今!」


 俺は、踏み込んだ。


 剣を振るう。


 それだけだ。


 だが。


 刃が触れた瞬間、

 影の身体に走ったのは――亀裂。


「……観測、失敗」

 影が、初めて声を荒げる。


「不確定要素が――」


 言葉は、最後まで続かなかった。


 影は、崩れ落ちる。


 魔術陣が、完全に乱れた。


 空間が、震える。


「……崩れる!」

 レナ。


「撤退!」

 フェリス。


 走る。


 背後で、空間が潰れる音。


 だが。


 足が、外へと抜けた瞬間――

 圧が、消えた。


 夜の森。

 冷たい空気。


 全員、倒れ込むように息を吐く。


「……生きてるな」

 カイ。


「ええ」

 フェリス。

「全員」


 エッグが、仰向けに倒れたまま言った。


「……なあ」

「これで、分かっただろ」


 俺は、顔を向ける。


「……ああ」


 エッグは、空を見上げた。


「……あいつら」

「世界を、作り直す気だ」


 その言葉が、

 静かに、胸に落ちた。


 夜は、まだ深い。


 だが。


 もう、

 元の世界には戻れない。


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