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異端(仮)  作者: vastum
アリス編
95/103

第73話

結界を抜けた瞬間、空気が変わった。


 冷たい、というより――張り付く。

 肺に入るたび、重さを感じる。


「……来てるな」

 カイが低く言う。


 森は静かだ。

 虫の声も、風の音も、どこか遠い。


 だが、その静けさが逆に異常だった。


「音が……死んでる」

 レナ。


「管理されてる」

 ユウ。

「この一帯」


 足元の土は柔らかいのに、踏み込むたびに妙な反発がある。

 まるで、地面の下に何かが息を潜めているみたいだ。


 フェリスが手を上げる。


 全員、即座に止まる。


 前方。

 木々の隙間。


「……いる」

 フェリス。


 目を凝らすと、確かに“影”が動いた。


 人型。

 だが、立ち方が揃いすぎている。


「……冒険者じゃないな」

 カイ。


「軍でもない」

 ユウ。


「……管理者の実働部隊」

 レナ。


 影は、こちらに気づいている。

 隠す気は、もうないらしい。


 一歩、踏み出した瞬間。


 地面が鳴った。


「――ッ!」


 俺は反射的に跳んだ。


 次の瞬間、さっきまで立っていた場所が沈む。

 いや、正確には――引きずり込まれる。


「……同じだ」

 俺は歯を食いしばる。

「街の時と」


「学習してる」

 レナ。


「違う」

 アリス。

「……“近づいている”」


 影が、ゆっくり姿を現す。


 数は、五。

 武装は最低限。


 だが――

 魔力の質が、遺跡と同じ。


「……歓迎されてるな」

 カイが笑う。

 笑っているが、目は笑っていない。


 フェリスは、一歩前に出た。


「ここから先は」

 静かな声。

「通る」


 影の一人が、首を傾げる。


「……不要な干渉です」


 感情はない。

 言葉も、淡々としている。


「人を攫っておいて?」

 俺。


「必要な工程です」


 その返答で、

 何かが、俺の中で切れた。


「……工程じゃねえ」

 俺は、剣を構える。

「人だ」


 影が、一斉に動いた。


「来る!」

 フェリス。


 戦闘は、短かった。


 いや――

 短く終わらせた。


 カイの一撃が、正面を崩す。

 レナの魔法が、足場を奪う。

 ユウが、背後を断つ。


 俺は、迷わなかった。


 “正解”が分からなくてもいい。

 身体が、勝手に動く。


 斬る。

 躱す。

 踏み込む。


 影の一人が、俺を見て言った。


「……観測値、上昇」


「黙れ」


 次の瞬間、

 そいつは地面に沈んだ。


 残った影が、距離を取る。


「……これ以上の接触は不要」

「撤退する」


 逃げる。


 だが――


「……逃がすか」

 カイ。


「追わない」

 フェリス。

「目的は達した」


 息が、荒い。


 俺は、剣を下ろしながら、胸の鼓動を感じていた。


 さっきの戦闘中、

 一瞬だけ――


 確信があった。


(……近い)


 誰が、どこにいるかは分からない。

 でも、分かる。


 境界の向こうに、

 仲間がいる。


 アリスが、静かに言った。


「……繋がりは、もう切れない」


 フェリスが頷く。


「ええ」

「ここから先は――」


 言葉を切る。


「引き返す理由がない」


 森の奥。

 遺跡の方向。


 夜は、まだ深い。


 だが、

 何かが目を覚ました気配がした。


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