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異端(仮)  作者: vastum
アリス編
87/103

第66話

静かな破壊音


 動き出したのは、夜だった。


 街を出てから半日。

 街道から外れ、森を抜けた先。


「……ここか」

 カイが、低く言う。


 小さな施設。

 遺跡ほどではないが、明らかに“新しい”。


 石造りだが、継ぎ目が整いすぎている。

 周囲には、監視用と思われる簡易魔術痕。


「外郭拠点」

 フェリス。

「補給か、観測か」


「どっちでも」

 レナ。

「壊せば困る」


「雑だな」

 カイ。


「褒めてない」

 レナ。


 ユウが、建物を一周して戻ってくる。


「……人数」

「六」

「交代制」


「管理者?」

 俺。


「……違う」

 ユウ。

「雇われ」


「なら話は早い」

 カイ。


「殺すな」

 フェリス。

「必要以上に敵を増やすな」


「分かってる」

 カイ。

「……多分」


 フェリスは、全員を見る。


「目的は三つ」


 指を一本立てる。


「一、ここが何の拠点か確認」


 二本目。


「二、管理者勢力の動線を掴む」


 三本目。


「三」

 少し間を置く。

「“壊せる”と示す」


 全員が頷いた。


 これは宣戦布告だ。

 だが、静かなやつ。


「行くぞ」

 フェリス。



 最初に落としたのは、灯りだった。


 レナの魔法で、外周の魔術灯が一斉に沈黙する。


「……暗っ」

 カイ。


「当たり前」

 レナ。


 次に、音。


 ユウが、監視役の背後に回る。

 首に当てた刃で、気絶。


「一」

 小声。


 俺とカイで、反対側。


 扉の前に立つ二人組。


「……なあ」

 カイが、軽く声をかける。


「ん?」

 振り向いた瞬間――


 昏倒。


「二、三」

 カイ。


「雑だ」

 レナ。


「速い」

 俺。


 内部は、思ったより狭い。


 机。

 書類。

 簡易な魔力計測装置。


「……研究資料」

 レナが、眉をひそめる。

「だが、核心はない」


「中継点だな」

 フェリス。


 アリスが、壁に触れる。


「……ここ」

「記録が残っている」


「どんな?」

 俺。


「……人の移送」

「数と、時間」


 全員が、息を呑む。


「……やっぱりな」

 カイ。


 ユウが、奥の部屋を指す。


「……来る」


 最後の二人。


 扉が開く。


「――誰だ!」


 声を上げる暇はなかった。


 俺が踏み込み、

 関節を叩く。


 カイが、後ろから抑える。


「……静かに」

 カイ。

「寝ててくれ」


 六人、制圧。


 死者はなし。


 フェリスが、地図を広げる。


「……動線が見えた」

「遺跡と、ここを結ぶ経路」


「輸送路か」

 俺。


「おそらく」

 フェリス。


「……壊す?」

 カイ。


「壊す」

 フェリス。

「だが、派手にはやらない」


 レナが、魔術陣を描く。


「……魔力遮断」

「内部だけ、焼く」


「いいね」

 カイ。


「褒めてない」

 レナ。


 数分後。


 建物の内部機能だけが、完全に沈黙した。


 外から見れば、

 ただの空き施設。


 だが、中枢は死んでいる。


「……戻ろう」

 フェリス。


 森を抜ける途中。


 カイが、ぽつりと言った。


「……エッグ、今頃何してんだろうな」


「同じこと」

 俺。


「違う場所で?」

 カイ。


「同じ方向を向いて」

 俺。


 フェリスが、歩きながら言う。


「今日の件で」

「管理者は気づく」


「何に?」

 カイ。


「ノイズが」

「“脅威”だということに」


「遅いくらいだ」

 カイ。


 アリスが、静かに付け加えた。


「……向こうも」

「動く」


 夜の森に、風が吹く。


 静かな破壊音は、

 確実に、届いている。


 管理者勢力のもとへ。


 そして。


 離れた場所で動く、

 一人の仲間のもとへも。


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