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異端(仮)  作者: vastum
アリス編
85/103

第65話

戻る場所と、進む場所


 街の門が見えたとき、正直ほっとした。


 石壁に囲まれた、どこにでもある地方都市。

 派手さはないが、人の気配がある。


「……人の声がする」

 カイが、妙に感慨深そうに言う。


「文明」

 ユウ。


「生きてる証拠」

 レナ。


 エッグがいない。


 その事実が、歩くたびに少しずつ重くなる。


「……妙に静かだな」

 カイ。


「いつもより一人少ないからな」

 俺。


「それだけじゃない」

 フェリス。

「街も、だ」


 門をくぐる。


 視線が集まる。


 敵意ではない。

 だが、警戒は確かにある。


「……噂」

 アリス。

「回っている」


「遺跡か?」

 俺。


「それも」

 アリス。

「それ以上に――“人が消えている”」


 宿に入る前に、二手に分かれた。


 フェリスとレナがギルド。

 俺とカイが市場。

 ユウとアリスは、街の外縁。


 情報は、足で拾う。




 市場は、思ったよりも活気がなかった。


 露店は並んでいるが、声が低い。

 値段交渉も、短い。


「最近、物騒らしいな」

 俺が、何気なく聞く。


 商人は、一瞬だけ俺を見てから言った。


「……遺跡だろ?」


「やっぱりか」


「行方不明が増えてる」

「冒険者も、住民も」


 カイが、軽く笑う。


「危険な遺跡なんて、よくある話だろ」


「……違う」

 商人は声を落とした。

「戻ってこない」

「遺体も出ない」


 その言葉は、重い。


「ギルドは?」

 俺。


「依頼は出てる」

「でも、深追いはするなって」


「上からの圧か」

 カイ。


「……さあな」


 別の露店でも、似た話を聞いた。


 遺跡に近づいた者が消える。

 夜、奇妙な音が聞こえる。

 森で、見慣れない影を見た。


「……管理者勢力」

 カイが、低く言う。


「間違いないな」




 ギルドでの情報も、芳しくなかった。


 戻ってきたフェリスとレナの表情で、察する。


「規制が入っている」

 フェリス。

「遺跡関連の依頼は、E〜D止まり」


「つまり」

 カイ。

「奥に行くなってことか」


「そう」

 レナ。

「でも、実際には――」


「もっと深刻」

 フェリス。


 ユウとアリスも合流する。


「外縁部」

 ユウ。

「監視がいる」


「冒険者ではない」

 アリス。

「だが、兵でもない」


「管理者の手先か」

 俺。


「可能性は高い」


 宿の一室に集まる。


 扉を閉め、結界代わりの簡易術式。


 ノイズだけ。


 エッグの席は、空いたままだ。


 フェリスが、口を開く。


「……情報は揃った」


 地図を広げる。


「遺跡周辺は、半封鎖状態」

「街は、見て見ぬふりをしている」


「理由は?」

 カイ。


「恐怖と、圧力」

 レナ。


「管理者勢力は」

 アリス。

「“表に出ない”ことを徹底している」


「つまり」

 俺。

「正体が掴めない」


「掴ませない」

 フェリス。

「それが、戦略だ」


 沈黙。


「……エッグがいれば」

 カイが、ぽつりと言う。


 誰も、否定しない。


「だが」

 フェリス。

「今はいない」


「……戻ってくる」

 俺。


「分かっている」

 フェリス。

「だからこそ、今決める」


 フェリスは、全員を見る。


「次の一手だ」


「正面突破は無理」

 レナ。

「戦力も、情報も足りない」


「遺跡は、生きている」

 アリス。

「時間をかければ、対応してくる」


「……なら」

 カイ。

「外から削るしかねえ」


「同意」

 ユウ。

「監視、拠点、補給線」


 フェリスは、頷いた。


「管理者勢力を、“管理者”でいられなくする」


 俺は、息を吐いた。


「……地味だな」


「ノイズらしくない?」

 カイ。


「いや」

 俺。

「一番ノイズらしい」


 フェリスが、最後に言った。


「遺跡は、敵だ」

「だが、敵は一つじゃない」


「管理者」

 レナ。


「生成体」

 ユウ。


「そして」

 アリス。

「“完成”を待つもの」


 全員が、同じ方向を見る。


 遺跡のある方角。


「……行こう」

 カイが言う。

「エッグが戻ってきたとき」

「“無茶”が出来るようにな」


 誰も笑わなかった。


 だが、全員が頷いた。


 ノイズは、動く。


 静かに。

 確実に。


 仲間が戻る場所を、

 壊されないために。

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