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異端(仮)  作者: vastum
アリス編
84/103

第64話

敵を、敵と呼ぶために


 朝は、思ったより普通に来た。


 鳥の声。

 冷たい空気。

 焚き火の残り香。


 昨日までの地獄が、嘘みたいだった。


「……生きてんな」

 カイが、伸びをしながら言う。


「生きている」

 ユウ。

「確認済み」


「確認しなくても分かるわ!」

 カイ。


 エッグは、少し離れたところで剣の手入れをしていた。

 動きはぎこちないが、集中している。


 泣いたあと特有の、

 妙に落ち着いた空気。


 フェリスが、全員を集めた。


「……状況を整理する」


 地面に、簡単な図を描く。


「敵は三つだ」


「三つ?」

 俺。


「遺跡そのもの」

「管理者勢力」

「――そして、内部の“生成体”」


 生成体、という言葉に

 エッグの手が、一瞬止まった。


「昨日見た限り」

 フェリス。

「生成体は段階がある」


「途中のやつと」

 カイ。

「人工的なのと」

「……あいつみたいなの、だな」


 最後の言葉は、濁した。


「……成功例は、まだ出ていない」

 アリスが静かに言う。

「だが、“次”を作ろうとしている」


「それが」

 俺。

「エッグの仲間?」


「可能性は高い」

 アリス。


 エッグは、剣を置いた。


「……俺」

 はっきり言う。

「……中に戻りたい」


 空気が、少し張る。


「今すぐじゃない」

 エッグは続ける。

「……でも」

「……準備が整ったら」


「準備って?」

 カイ。


「……一人で突っ込まない準備」

 エッグ。

「……頼る準備」


 その言葉に、

 カイが少しだけ笑った。


「成長したじゃん」


「……殴られたからな」

 エッグ。

「いろんな意味で」


「俺か?」

 カイ。


「お前だ」

 エッグ。


 フェリスが、話を戻す。


「問題は、優先順位だ」


 地面に、線を引く。


「遺跡を破壊するか」

「制御を奪うか」

「あるいは――」


「中の人を助ける」

 俺。


 フェリスは、頷いた。


「全てを同時には出来ない」


 沈黙。


「……俺は」

 エッグが言う。

「……最後を、選びたい」


「分かってる」

 フェリス。

「だが、それには情報が足りない」


「街に戻る?」

 カイ。


「一度な」

 フェリス。

「補給と、調査と」

「……敵の規模を知る」


 レナが、短く頷く。


「正しい判断」


 エッグは、少し考えてから言った。


「……俺」

「……その間、別行動していいか?」


 一瞬、空気が止まる。


「理由は?」

 フェリス。


「……あいつのこと」

 エッグ。

「……俺なりに、調べたい」


 フェリスは、即答しなかった。


 だが、しばらくして。


「……条件付きで許可する」


「条件?」

 エッグ。


「生きて帰ること」

「連絡を絶やさないこと」

「そして――」


 一拍。


「戻ってくること」


 エッグは、目を見開いた。


「……いいのか?」


「“仲間を見捨てない”のが」

 フェリス。

「ノイズだ」


 エッグは、深く頭を下げた。


「……ありがとう」


 俺は、少しだけ笑った。


「抜けるって顔じゃないな、それ」


「……一時離脱、だ」

 エッグ。

「……絶対戻る」


 カイが、肩をすくめる。


「じゃあさ」

「戻ってきたときは」

「もっと無茶できるくらい、強くなっとけ」


「……言われなくても」


 アリスが、ぽつりと言った。


「……あなたは」

「鍵を持っている」


「鍵?」

 エッグ。


「遺跡が、あなたに反応した」

 アリス。

「それは偶然じゃない」


 エッグは、静かに頷いた。


「……だから」

「……俺が行く意味がある」


 フェリスが、最後に言った。


「ノイズは、遺跡を敵と定義する」


 全員が、頷く。


「壊すか」

「奪うか」

「救うか」


「……全部だな」

 カイ。


「欲張りだ」

 レナ。


「いつも通り」

 俺。


 エッグは、焚き火の残りを見つめた。


「……行ってくる」


「行ってらっしゃい」

 カイ。


「死ぬな」

 ユウ。


「情報を持ち帰れ」

 レナ。


「……待っている」

 フェリス。


 エッグは、背中を向けた。


 だが、振り返る。


「……次は」

「……ちゃんと、助ける」


 その言葉を残して、

 森の中へ消えていった。


 ノイズは、動き出す。


 遺跡を、

 “倒すべき敵”として。


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