5/103
第四話
鉄の匂いと、選ぶということ
街道の宿場町は、王都へ向かう人と噂で溢れていた。
俺たちが入った瞬間、視線が刺さる。露骨じゃないが、探る目だ。
「武器屋ある?」
俺が聞くと、カイがにやりと笑う。
「やっとその気になったか」
「借り物、落ち着かなくて」
鍛冶屋は町の端。鉄と火の匂いが濃い。
「いらっしゃ――」
職人の声が止まり、俺たちを値踏みする。
「武器を買いに」
フェリスが淡々と言う。
「一人分」
棚の剣を試す。重い、鈍い、遅い。
悪くはないが、俺の動きの邪魔になる。
「贅沢だな」
鍛冶屋が言う。
「贅沢じゃなくて、相性です」
俺は正直に返した。
鍛冶屋は奥から一本持ってくる。装飾のない細身の片手剣。
「試せ」
受け取った瞬間、分かる。
軽い。重心が自然。刃が遅れない。
振る。
無駄が消える。空気が切れる。
「……これだ」
声が漏れた。
フェリスが小さく頷く。
「それでいい」
「売れ残りだ」
鍛冶屋が腕を組む。
「扱いが難しい。だが……合ってる」
俺は剣を腰に下げた。
初めて、“自分の武器”だと思えた。
町を出ると、遠くに城壁が見えた。
「あれが王都アルフェインだ」
ユウが言う。
俺は剣の柄に手を置く。
「行きますか」
「行くしかない」
フェリスが言った。




