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異端(仮)  作者: vastum
戦争編
22/103

第15話

正しさの軍靴


 ヴァルグラント帝国首都、ヴァル・エルディア。


 石と鉄でできた都市は、どこまでも整然としている。

 道は直線。建物は均一。人の流れは管理されている。


 帝国軍特務部隊――

 人間のみで編成された捕獲部隊は、静かに集結していた。


「対象は五名」

「武装は不明」

「能力測定不能」


 指揮官が淡々と説明する。


「繰り返す」

「殺すな」

「捕らえろ」


 一人の兵が、わずかに眉をひそめた。


「……捕らえられるんですか」

「あれを?」


 空気が凍る。


「可能かどうかは関係ない」

 指揮官が言う。

「帝国は、定義で勝つ」


 地図が広げられる。


「対象は、アウレア連合首都リュミエラに侵入した可能性が高い」

「混成国家だ」


 兵の一人が吐き捨てる。


「……あそこは、気持ち悪い」

「人間の国じゃない」


「だから行く」

 指揮官は即答した。

「人間の正しさを示すために」


 隊列が整う。

 軍靴が鳴る。


 一方、港湾都市リュミエラ。


 俺たちは宿の二階で、簡単な食事をしていた。


「……なんか」

 レナが言う。

「落ち着かない」


「分かる」

 ユウが頷く。


 俺は、剣を見た。

 刃が、微かに――海風に反応している。


「……来ます」

 思わず言った。


「何が」

 カイが聞く。


「人間だけの、やつら」


 フェリスの目が細くなる。


「帝国か」


 その瞬間、街の鐘が鳴った。


 警戒でも、非常でもない。

 ただの合図。


 港の方で、人の流れが変わる。


「……英雄の国に」

 俺は呟いた。

「正しさが、踏み込んでくる」


 フェリスが立ち上がる。


「表には出るな」

「今回は、向こうが“試し”だ」


 窓の外で、帝国の旗が翻った。


 人間だけの色。

 秩序の色。


 俺は剣を握る。


 英雄は、もういない。

 だが――


「……それでも」

 小さく言う。

「ここで、見せられるものはある」


 異端ノイズは、

 英雄の国に足を踏み入れた。


 そして、

 定義される戦いが、始まろうとしていた。


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