第二話
洗練という名の違和感
焚き火の火が小さく爆ぜた。
夜は静かで、静かすぎて落ち着かない。
「ここ、ほんとに大丈夫か?」
カイが仰向けのまま言う。
「見通しはいい。水場も近い。通り道からも外れてる」
ユウが淡々と答える。
「初心者向けだね」
レナが楽しそうに言った。
フェリスは周囲を一瞥しただけで黙っていた。
それが逆に怖い。
眠りに落ちかけた頃、違和感が来た。音でも気配でもない。
ただ、間だ。
「……起きて」
小声で言う。
フェリスがすぐ目を開いた。
「何?」
「来ます。たぶん」
「根拠は?」
「ないです」
短い沈黙のあと、フェリスはユウを呼び、全員が起きた。
闇が裂けた。魔獣が飛び出す。
「左!」
言ったのは俺だ。
一体目は突進型。直線で、速い。
俺は避けない。当たらない場所に立つ。
すれ違いざま肘を入れる。短く、硬く。魔獣が地面を転がった。
「え?」
カイの声が裏返る。
二体目が跳ぶ。角度がいやらしい。
俺は下がらず、軸を切り替えて脚を払う。落下した瞬間、掌を押し出す。
魔力は“使った”というより、無駄がない動きに勝手に沿った。
残り一体は距離を取った。賢い。逃げる。
追う。計算はしていない。でも動きが止まらない。
振り向いた瞬間、動きが鈍る。そこに刃。浅く、確実に。
静寂が戻る。
「……全部、シオン?」
レナが呟く。
「動きが分かりやすかっただけです」
俺は頭をかく。
「嘘だ」
ユウが即座に切り捨てた。
「判断が早すぎる」
フェリスだけが黙って俺を見ていた。
値踏みじゃない。確認だ。
「戦いは慣れてる?」
フェリスが言う。
「……慣れてるっていうか」
言葉を探す。
「迷わないだけで」
フェリスは頷いた。
「眠れ。今夜は終わりだ」
背中が少し近くなった。
それが、少しだけ嬉しかった。




