第79話
朝は、等しく訪れない
空が、白み始める。
森に、音が戻る。
鳥の声。
風の擦れる音。
世界は、何事もなかったかのように朝を迎えた。
だが。
「……来てる」
アリスの声は、静かだった。
それが逆に、重い。
「夜の間に、配置が変わった」
「……外側が、動いてる」
フェリスは、即座に地図を広げた。
昨日までは、なかった点。
薄く、しかし確実な反応。
「……包囲じゃない」
ユウ。
「“封鎖”だ」
カイが、歯を鳴らす。
「朝っぱらから、いい趣味してんな」
レナは、空を見上げた。
「上も、いる」
「飛行型……監視用」
エッグが、低く笑った。
「……なるほどな」
「外で逃げ場を塞いで」
「内側で、仕上げる気だ」
シオンは、ゆっくり立ち上がった。
胸の違和感は、消えていない。
だが、悪化もしていない。
「……俺」
シオン。
「まだ、動ける」
フェリスは、即答しなかった。
数秒、彼を見つめてから言う。
「ええ」
「でも、無理はさせない」
「それでいい」
シオンは、笑った。
「無理する場面は――」
一拍。
「向こうが決める」
その時。
森の外れで、
明確な魔力の収束が起きた。
隠す気のない、合図。
「……始まったわね」
レナ。
フェリスは、全員を見る。
「いい?」
「ここから先は」
誰も、目を逸らさない。
「追われる側じゃない」
「迎え撃つ」
朝日は、まだ完全には昇っていない。
だが。
ノイズの前に伸びる影は、
確実に――戦いの形をしていた。




