表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端(仮)  作者: vastum
王国編
1/103

第一話

追放施設の門前で、わりと人生詰んだと思った



 その施設は、外から見る分にはやたらと立派だった。


 高い石壁、無駄に分厚い門、重ねがけされた結界符。

 知らない人が見たら、「あ、ここ重要施設だな」って思うと思う。


 まあ、中身を知ってたら、そんな感想は一瞬で吹き飛ぶんだけど。


 忌み子保護施設〈第七収容棟〉。


 俺――シオンは、今日までここで「保管」されていた。


 そして、さっき追い出された。



「――以上の理由から、君をこれ以上ここに置くことはできない」


 管理官は、相変わらず無機質な声だった。

 表情も、声色も、いつも通り。


「危険度は低い。暴走の兆候もなし」


「それ、良いことじゃないですか?」


「だが、制御ができない」


 即答。


「検査結果に再現性がない。

 指示通りに魔力が出ない。

 逆に、出すなと言った時に出ることがある」


「……あー、はい。自覚はあります」


 俺がそう言うと、管理官は一瞬だけ言葉に詰まった。


「自覚があるのか」


「ええ。

 正直、俺も困ってます。

 出ろって言われると出ないし、出るなって言われると出るんで」


「……」


「空気読めない魔力って、どう思います?」


 無言で書類を閉じられた。


 あ、これ、完全にダメなやつだ。


「結論として、君は――扱えない」


 その言葉で、すべて終わった。


 危険すぎて追放されるわけでもない。

 役に立つから残されるわけでもない。


 ただ、面倒。


「本日中に退去してもらう。荷物は用意してある」


「行き先は?」


「指定しない」


「ですよねー」


 思ったより、冷静だった。


 たぶん、心のどこかで覚悟してたんだと思う。



 渡された袋は、軽かった。


 着替え、簡単な食料、最低限の生活用品。

 俺の人生、ずいぶんコンパクトだな、と思った。


 廊下を歩いても、誰も声をかけてこない。

 ここではそれが普通だ。


 門の前で、最後の確認。


「この先、施設に戻ることはできない」


「はいはい」


「トラブルを起こしても、我々は関与しない」


「起こさない方向で頑張ります」


 返事はなかった。


 門が開き、夕方の光が差し込む。


 外に一歩出た瞬間――


 門は、容赦なく閉じた。



「……さて」


 俺は門の前で立ち尽くした。


 行く場所はない。

 金もない。

 社会経験? 施設内限定なら豊富です。


「いや、詰んでない。

 まだ“完全に”詰んだとは限らない」


 声に出してみる。

 出すとちょっと楽になる。


 その時だった。


「なあ」


 背後から、やけに気の抜けた声。


「今の、追放シーンだったよな?」


 振り返ると、四人組がいた。


 旅人風の装備。

 武器あり。

 でも、空気が軽い。


 というか、この場所で軽すぎる。


「門の前で立ち尽くしてるし」


「珍しいな、ここから出される人」


「え、逆に出られるんだ」


「……静かに」


 最後の声は低く、鋭かった。


 銀髪の女性が、俺をじっと見ている。

 怖い、というより――見られてる。


 先頭の男が笑った。


「よー。大丈夫?」


「えっと……物理的には大丈夫です」


「精神的には?」


「未定です」


 赤髪の女性が吹き出した。


「正直でいいね」


「施設、追い出されたんです」


 言ってから、ああ俺いま追放直後なんだな、と実感が湧いてきた。


「理由は?」


 銀髪の女性。


「制御不能、だそうです」


「うわ」


 黒髪の男が、なぜか楽しそうに声を上げた。


「一番めんどくさいやつ!」


「褒めてないよね?」


「褒めてる褒めてる!」


「褒め言葉じゃない!」


 なんでこの人たち笑ってるんだ。


「普通、怖がられません?」


 俺が聞くと、赤髪の女性が肩をすくめた。


「慣れてるから」


「慣れてる……?」


「私たちも、似たようなものよ」


 ああ、なるほど。


「カイだ」


 黒髪の男が名乗る。


「ユウ」


 真面目そうな男。


「レナ」


 赤髪の女性。


「フェリス」


 銀髪の女性。


「シオンです。元・施設備品」


「言い方」


「自分で言う分にはセーフかなって」


 カイが笑った。


「で、シオン。行き先は?」


「ないです」


 即答。


 一瞬の沈黙。


 フェリスが言った。


「次の街まで、同行する?」


「……え?」


「どうせ私たちも、宿を断られる」


「断られる前提なんですね」


「前提」


 ユウが頷いた。


「危険でも?」


「そのうち慣れる」


 即答だった。


 俺は少し考えて――肩をすくめた。


「じゃあ、お邪魔します。

 今さら危険度が一人増えても、誤差ですよね」


「いい心構えだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ