帰ってきたレオルド
レオルド……!
本当にリュカ様のところに行ってしまったの!?
口には出さなかったけど、みんな考えていることは同じだった。
無言のまま外に出て、転移魔法陣が敷いてある場所で立ち止まる。
もし本当にレオルドがどこかに転移していたとしたら、この場所に戻ってくるはずだからだ。
リュカ様に気づかれることなく、帰ってこられるかしら!?
今は深夜だ。
もしリュカ様の部屋に転移してしまっていたとしても、きっとリュカ様は寝ているだろう。
彼を起こすことなく、無事に戻ってきてくれたら――。
そんなことを考えながら天に祈っていると、地面に転移魔法陣が浮かび上がった。
「!」
次の瞬間、その魔法陣の中にキョトンとしたレオルドが現れ、私は勢いのままレオルドに抱きついた。
もう離さないと言わんばかりに、ギューーッと強く抱きしめる。
「レオルド! よかった!」
「ママ!!」
泣いた様子のないレオルドを見て、ホッと一安心する。
リュカ様のこととは別に、知らない場所に転移したことで泣いていたらどうしようという不安もあったからだ。
後ろでニコラとシンが「よかった」と呟いている声が聞こえる。
思っていたより元気そうだわ。
リュカ様には見つからなかったみたいね。
「心配したのよ。レオルド。1人で怖くなかった?」
「うん!! ぼく、泣かずに戦えたよ! 悪者に、ちゃんと怒ったよ!」
「…………ん?」
少し目を輝かせながら、興奮気味に答えるレオルド。
やはりリュカ様のところに行ってしまったのか――という心配より先に、もっと気になる言葉が出てしまった。
戦えた……? 怒った……?
え? リュカ様に???
「レオルド……? リュ……悪者と、会ったの?」
「うん! ぼく、悪者のベッドで寝てたから起こされたの。さいしょは誰だろうって思ったんだけど、魔力ですぐに悪者だってわかったよ」
「それで、お話したの……?」
「うん! ママのことたくさん聞いてくるから、ぼくのママに近づくなって言った!」
「…………」
ママのことをたくさん聞いてくる?
え? レオルドが私の子どもだって、気づかれて……?
クラクラしてしまい、倒れかけた私をシンが支えてくれる。
もうこのまま気絶して現実逃避したいところだけど、しっかり受け止めて話を聞かなくては。
「……レオルド。最初から順番に話してくれる?」
家に戻り、まだ興奮の冷めない様子のレオルドから詳しく話を聞く。
レオルドは悪者からママを守った! と思っているみたいだけど、会話の内容やリュカ様の行動から察するに、リュカ様はレオルドのことを使用人の子どもだと思っていることがわかった。
ママの名前を聞いてきたこと。
自分の部屋に戻れと追い出されたこと。
常にリュカ様は冷静で、慌てた様子がなかったようなので、それは間違いないだろう。
ニコラとシンと目を合わせ、3人同時に安堵の息を吐く。
よかった……。
使用人の子どもが間違って部屋に入ってきたと勘違いしたのね。
でも、その子どもに「ママに近づくな」って言われるなんて……リュカ様はさぞ困惑したでしょうね。
笑っている場合ではないのだけど、つい吹き出してしまいそうになった。
父と子の初めての会話がそんなすれ違いの喧嘩だなんて、少し微笑ましいと思ってしまう。
不思議ね。あんなに2人を会わせなくなかったのに……。
正体を知られていない安心感があるからか、2人が顔を合わせたことを嬉しいと思ってしまうなんて。
お互いに自分の父、子であることを知らずに会ってしまったリュカ様とレオルド。
互いのことをどう思ったのか、気になってしまう。
「悪者に会って、怖くなかったの?」
「うん! ぼく、悪者って魔獣みたいなやつかと思ってたんだ。でも、すごくかっこいい人だったからビックリした! 悪者は嫌いだけど、もうこわくないよ!」
「……そう」
その人は、あなたの父親なのよ――そんな言葉を飲み込んで、私は涙が出そうになるのを見られないようにレオルドを優しく抱きしめた。




