リュカ視点①
アミーリアが消えた。
俺の拘束魔法を解いて、この部屋から一瞬で姿を消してしまった。
魔力も感じないため、すぐに捜し出すことができない。
「はぁーー……っ」
俺はアミーリアのいたベッドに座り、深く息を吐いた。
アミーリア1人では無理だ。できるわけない。
考えたくはないが、彼女には魔術師の協力者がいる。
それも、下位貴族ではなく、俺の魔法を解くことのできる者……かなり魔力の高い協力者が。
……誰だ?
考えてはみるが、1人も候補が浮かばない。
そもそも俺と同じくらい魔力の高い人間は希少だ。
数人は頭に浮かぶが、みんなアミーリアとの接点などない者ばかりだ。
俺の部屋からこの秘密の部屋に入ることは絶対にできない……。
つまり、その協力者はアミーリアの魔力を探知して転移魔法を使ったんだ。
アミーリアの生存を知っていなければ、できないこと。
その協力者は、もしかしてアミーリアと一緒に暮らしていたのかもしれない。
「…………っ」
また深い憎しみに覆われそうになる。
アミーリアの男が、彼女を迎えにきたのではないか――そんなことを考えるだけで、激しい殺意が湧いてくる。
高位貴族の魔術師が、俺を裏切ってアミーリアと恋仲に……?
もし本当にそんなことになっていたら、俺は……。
怒りで震える拳をもう片方の手で押さえつけ、なんとか深呼吸をして心を落ち着かせる。
感情的になっている場合ではない。
今は、1日でも早くアミーリアを見つけることが先決だ。
「……何か、アミーリアの住んでいた場所の情報は……」
アミーリアと再会したとき、あまり栄えていない街にいたことは覚えている。
だが、彼女に会えた喜びから街の名前や正確な位置など何も確認することなく、この家に帰ってきてしまった。
あの街がどこにあるのか、見当もつかない。
くそ……浮かれて、あの街に転移魔法陣を敷くのを怠ってしまった……!
それさえしていれば、すぐあの街に行けたというのに!
悔しがっていても仕方ない。
他に何か覚えていることはないか……そう考えながら部屋を歩き出したとき、ふとあの子ども服のことを思い出した。
「服……。そうだ。服なら、その地域特性の布やデザインがあるはず!」
田舎であれば、なおさらだ。
その地域にしか流通しないもの、使用できないものなど、何かあるはずだ。
まずは、この服を調べさせよう!
「この服がどこで作られ、どこで売られているのか……すぐに調べてくれ」
「かしこまりました」
この子ども服をどこで手に入れたのか――そんな余計な質問などはせず、執事はすぐに了承するなり部屋から出ていった。
有能なこの執事であれば、数日で結果を出してくれることだろう。
アミーリア……すぐにまた見つけてやるぞ。
その日の夜も、次の日の夜も、俺はアミーリアの夢を見た。
何度も何度も、俺を拒むアミーリア。
俺以外に大事な人がいると、涙ながらに語るアミーリア。
そんな悪夢にうなされて、俺は夜中に何度も目を覚ました。
「……アミーリアッ!」
ハッ
自分の声で目を覚まし、自分が汗だくになっていることに気づく。
ただ寝ていただけだというのに、走ったあとのように息が弾んでいる。
「はぁ……はぁ……また、あの夢か」
夢だとしても、アミーリアに拒まれた傷がしっかり胸に刻まれている。
これを悪夢と呼ばずになんというのか。
魔獣と戦ったときよりも、高度な攻撃魔法を使ったときよりも、俺の体力を消耗させる最悪の悪夢――。
「水……」
そう言って起き上がったとき、自分の隣に何かいることに気がついた。
一瞬動物か何かかと見間違えたそれは、体を丸めて横になって寝ている小さな子どもだった。
……は?
見たことのない子どもが、俺の隣でスヤスヤ寝ている。




