リュカ様の執着は昔から?
「……寝た?」
「うん」
ぐっすり眠っているレオルドの頭を撫でながら、声をかけてきたニコラに返事をする。
家に戻ってきてからずっと私にべったりだったレオルドは、今やっと夢の中だ。
寂しい思いをさせてしまったわね……。
ごめんね、レオルド。
私の服をギュッと握っている小さな愛おしい手を優しく離し、静かにベッドから抜け出す。
そろそろだとわかっていたのか、テーブルの上には温かい飲み物が用意してあった。
「ありがとう」
そうお礼を言いながら、ニコラとシンに向かい合うように席に着く。
レオルドが寝たので、これからこの3日間のことを2人に報告しなければ。
でもその前に……と、私は2人に頭を下げた。
「……私がいない間、レオルドのことを見ててくれてありがとう。2人がいてくれて本当によかったと何度も思ったわ」
「お礼なんていらないわ。レオルドは私たちにとっても家族なんだもの! それより、アミーリアは大丈夫なの? リュカ様以外の人に……会ったの?」
「会ってないわ。私が生きていたこと、リュカ様も誰にも話していないはずよ」
「そう……。よかった」
ニコラが安心したようにホッと息を吐く。
罪人であるシュラール家の娘が生きていたとなったら、私はすぐに王宮へ連行されてしまうだろう。
もしかしたら投獄されているかも……と、心配していたのかもしれない。
「ずっとリュカ様の家にいたわ。魔法をかけられた部屋らしくて、私がいることは周りに隠されていたの。拘束魔法もかけられていたし、自分で部屋から出ることもできなくて……」
「やっぱりシンの言ったとおりだったのね!」
「……え?」
シンの言ったとおり?
そこで、助けにきたレオルドが最初から拘束魔法を解くつもりでいたことを思い出す。
ネックレスをつけるのと拘束魔法を解くのを同時にやる――そういう作戦だと。
「あら? そういえば、どうして私が拘束されているとわかったの?」
「それは……」
なぜか、気まずそうな顔をしたニコラが隣のシンをチラリと見る。
シンは無表情のまま、あっさりと答えた。
「だってリュカ様ならアミーリアを拘束して監禁してると思ったから」
「えっ!?」
「わ、私はまさかって言ったのよ!? あの優しいリュカ様がそんなことするわけないって! でも、シンが……」
シンの言葉を聞いて、ニコラが必死にフォローしてくる。
シンがリュカ様のことをそんな危険人物だと思っていたことに対して、申し訳なく思っているのかもしれない。
まぁ、結果的にシンの予想は合ってたんだけど……どうしてわかったの?
ニコラの言うように、リュカ様は本当にいつも優しくて、とてもそんなことをするような人には見えなかった。
なぜ監禁するような人だとわかったのか──そんな私の疑問に答えるように、シンが淡々と話し出した。
「リュカ様のアミーリアへの執着は昔からちょっとおかしかったし。ニコラは女だからなんともなかっただけで、俺なんかいつも睨まれてたよ」
「えっ? 睨んでた? リュカ様が?」
「んーー……正確に言うと、魔力で圧をかけてきたっていうか、とにかくアミーリアに近づくなってオーラがすごかった」
「圧……」
「俺だけクラヴェル家で雇うとか言われたし。アミーリアの家に住み込みで働いてるのが気に入らなかったんだろうね。まぁ、断ったけど」
「そ、そんな話もあったの……?」
「うん。俺のこと、すごく嫌ってたと思うよ」
「…………」
6年前であれば信じられなかっただろうけど、今なら容易に想像できてしまう。
やけに嫉妬深かった、今のリュカ様。
私が消えたせいで性格が変わったのではなく、元々彼にはそんな気質があったのだ。
全然気づかなかったわ……。
私への好意は知っていたつもりだったけど、自分で思っていた以上にその愛情は深く重かったようだ。
それほど想ってもらえてありがたい……という気持ちや、なぜ私なんかをそんなにも? という疑問や、それがあの執着や監禁に繋がったのかという恐怖で、なんとも複雑な感情だ。
私がいなくなって、今リュカ様はどうしてるのかしら……?
きっとまた私を捜してるわよね?
今住んでいる家は、集落でもない森の中にポツンとある。
人の住んでいる家を探すとなると、なかなかこの場所には辿り着かないはずだ。
でも、リュカ様にはあの街で見つかってしまったため、その近くに住んでいることはバレてしまっている。
……見つかるのは時間の問題だわ。
なんとか対策を考えないと。




