リュカ視点④
「ふぅ……」
気を失っているアミーリアを抱いて、転移魔法で自分の部屋に帰ってきた。
いつもなら家の前に転移し、帰宅を家族や使用人にわかるようにするのだが、アミーリアの姿を誰にも見せたくなかったため直接部屋にやってきたのだ。
そのまま何もない真っ白な壁に触れて呪文を唱えると、スウゥ……と扉が現れた。
俺しか知らない、秘密の部屋だ。
アミーリアが見つかったとき、まだ表に出せる状況ではない場合を考慮して作っておいたが……正解だったな。
その部屋に入り、すぐにアミーリアをベッドに下ろす。
寝ている彼女をマジマジと見つめ、改めて彼女と再会できた喜びが溢れ出てきた。
アミーリア……!
ああ……やっと会えた……!
彼女の額、頬、唇にキスをして、ギュッと強く抱きしめる。
目を覚ました彼女とまた話したいところだが、会議中に突然消えてしまったせいで隊員たちはパニックになっているだろう。一度王宮に戻らなければいけない。
「もう少し眠っててもらおう」
そう言ってアミーリアの髪を撫でていると、彼女の手元に買い物袋があることに気づいた。
気を失っているが、手首に引っかかっていたらしい。
何を買ったんだ?
ほんの少しの興味から紙袋の中身を見た俺は、その意外するぎるものを見て思わず床に落としてしまった。
数着の服が、床に散乱する。
「子ども服……?」
ゾッした寒気が全身に走る。
すべて同じサイズの、男児用の服。
なぜこんなものをアミーリアが買ったのかと、嫌な妄想が頭に浮かぶ。
まさか……子どもがいるのか……?
6年だ。
その間に妊娠・出産をしていてもおかしくない。
アミーリアに新しい男ができる――その可能性を考えていなかった。いや……考えないようにしていた。
そんなわけない……。
目の前が真っ暗になり、息が苦しくなる。
痛む胸の奥から、激しい憎しみが湧き上がってくるのがわかった。
アミーリアに対してではない。
彼女に触れたかもしれないその男の存在に、抑えきれないほどの怒りを感じる。
「アミーリア……」
今着ている服も、靴も、すべてその男が選んだものかもしれない。
そう思うだけで耐えられず、俺は彼女の服を脱がして部屋に用意してあった服に着替えさせた。
久々に見た彼女の素肌に、一度だけ結ばれた夜を思い出し一瞬自分の子どもではないかと頭をよぎったが、この服の小ささからしてそれはないだろう。
俺の子どもであれば、どれだけよかったか。
――結果、その子ども服は彼女のものではなかった。
近くに住んでいる子どもの服。そういう答えだった。
本当にそうなのか。
他人の子どもに服を買ってあげるほど、仲がいいのか。
今どこに住んでいて、誰かと一緒なのか。
聞きたいことはたくさんあるが、どれも聞くことはできなかった。
何を聞いても誰に対しても嫉妬してしまいそうで、自分を抑えるためにも聞くことはやめた。
これからずっと俺といてくれればそれでいい。
そう思っていた。
アミーリアと再会した2日後。
王宮での仕事中、ずっと感じていたアミーリアの魔力が突然消えた。
「!?」
それと同時に、自分の拘束魔法が解かれたのもわかった。
すぐに転移魔法で自分の部屋に行ったが、そこにアミーリアの姿はなかった。
アミーリア、どこだ!?
……魔力を感じない。また……魔力が消えた?
6年前と同じ状況に、頭が真っ白になる。
自分の魔力を消す魔法を習得していたのか?
いや……だとしても、俺の拘束魔法はアミーリアには解けないはずだ。
アミーリアだけじゃない。俺の魔法を一瞬で解く者など、俺の知ってる魔術師の中には1人もいない……。
それどころか、この部屋に入れる者なんているはず……。
なぜ、どうやって彼女がここから出ていったのかも気になるが、それ以上に彼女がいなくなった事実が俺の心を蝕んだ。
黒いモヤが体中に広がり、すべてを破壊したい衝動に襲われる。
アミーリア……まさか、君の意思でここから出たのか?
俺から……逃げたのか?
帰りたいと言っていたが、俺と一緒にいることを優先してくれると思っていた。そう信じていた。
今、彼女には俺よりも大切な何かがある。
その事実をどうしても認めたくないし、許せない。
「もし本当に俺より大切なものがあるなら……俺がそれを壊してあげる。アミーリア……君には俺だけいればいいんだ」
なんとか心を落ち着かせ、俺は再度どうやって彼女がここから出たのか考察することにした。
絶対に……アミーリアを諦めたりしない。




