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姿を消したあと、妊娠に気づきました〜ヤンデレ化した天才魔術師様が私を諦めない〜  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売


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リュカ視点①


 アミーリアが死んだ。


 アミーリアの家――シュラール男爵家で作られていた薬には毒が仕込んであり、王族殺し未遂の罪で監査団が動いた。

 しかし、証拠を消そうとしたシュラール男爵が娘や家もろとも全て燃やし、自害した――という話だった。




 ……そんなわけない。




 それが、話を聞いた俺の最初の感想だった。

 

 シュラール男爵家が、王族に背き薬に毒を仕込んでいた?

 ……ありえない。


 シュラール男爵が、証拠を消すために娘を殺した?

 ……ありえない。


 そんな、誰もがわかるくらいの簡単な話だというのに、シュラール家の味方をしている貴族はほぼいなかった。

 シュラール家の裏切りを信じているわけではない。

 みんな無実だとわかっていながら、それを口に出さないようにしているのだ。




 ドーファン宰相……まさか、ここまでするとは。




 アミーリアの死を信じているわけではないが、彼女が姿を消したのは間違いない。

 どこにも彼女の魔力がないのだ。

 おそらく、魔力探知できない魔法を使って身を隠しているのだろう。




 今見つかれば、投獄は避けられない……最悪、即処刑もありえる。

 それなら、このまま見つからずに隠れていてほしい。




 だが、それは俺も彼女に会えないということだ。

 俺にだけは居場所を伝えてほしいと思うものの、薬学に関する魔法以外は苦手な彼女にとって、それは難しいことだとわかっている。




 まさか、こんな卑怯な手に出るとは……!




 シュラール家に罪を着せ、自ら死を選ぶほどに彼女の父親を追い詰め、アミーリアを危険に晒した。

 俺から彼女を奪ったドーファン宰相への怒りで、我を忘れそうだ。

 もしこれでアミーリアの死体が出てきたなら、間違いなく俺はドーファン宰相とナディアを殺してしまうだろう。

 まだ彼女が生きていると思うからこそ、なんとか理性を保てている。




 魔力探知不可の魔法……おそらく、彼女の父がやったのだろう。

 アミーリアの魔力は母親譲りで、父親は彼女より魔力が高かった。

 ……とはいえ、男爵家だ。4年か5年で、その魔法も効果がなくなるはずだ。



「4年も……アミーリアに会えないのか……?」





 


 俺とアミーリアが初めて出会ったのは、6歳の頃だ。

 当時いろいろな魔法に興味を持っていた俺は、治癒魔法や魔法薬学に長けているシュラール家を訪ねた。

 数ヶ月、勉強させてもらうだけのつもりだったが――いつしか、俺の興味は魔法薬よりもアミーリアに向いていた。



「アミーリア!? どうしたの、それ!?」


「あ。リュカ様いらしていたのですね」



 いつものようにシュラール家に到着すると、庭には顔やドレスを汚し、傷だらけになったアミーリアが立っていた。

 馬車から落ちたのかと疑うほどの状態だというのに、アミーリアはケロッとした様子で自作の薬瓶を運んでいる。



「そのケガはどうしたの!? 大丈夫!?」


「はい。問題ありません。これから、自分の薬がちゃんと効くのか確かめてみるところです」


「え? ……アミーリア。もしかして、そのケガは自分で……?」


「はい。薬の効果を早く確かめたくて」


「…………」



 にっこりと満面の笑みで答えるアミーリアを、呆然としたまま見つめる。

 そんな俺の様子には興味ないのか、アミーリアはウキウキしながら裏庭に向かって歩いていった。

 家の中で試さないのは、きっとわざとケガしたことを父親に知られたくないからだろう。



 

 ……薬を試したいからって、自分を傷つけるなんて。




 好奇心旺盛で、勉強熱心で、変わっている女の子。

 それがアミーリアの印象だった。


 魔術をもっと知りたい、極めたい。

 そう自分のためだけに魔術の勉強をする俺とは違い、アミーリアの勉強はすべて他人のためだった。


 両親の仕事を手伝いたい。ケガをした人、病気になった人を少しでも多く救いたい。

 そんな気持ちで、彼女は魔法薬の勉強をしているのだ。

 その努力を誰にも見せることなく、自分の体を犠牲にしてまで。

 



 ……すごい。かっこいい。




 周りから魔術の腕を褒められ、天才と言われていた俺が初めて尊敬の念を抱いた人物――それがアミーリアだった。


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