「この子ども服は誰の?」
家に帰りたいと伝えた途端、笑顔が消えたリュカ様。
私の本音を探るように、ずっと私の目を見続けている。
なんで……こんなに怖く感じるの?
「家で待っているのは男じゃないの?」
「……違います」
妙な威圧感に押され、つい嘘をついてしまう。
でも、違うと答えたあとにもリュカ様の表情は暗く冷たいままだ。
「アミーリア。君に聞きたいことがあるんだ」
「な、なんでしょう?」
「この子ども服は誰の?」
「!?」
リュカ様が指をパチンと鳴らすと、数着の子ども服がベッドの上にパッと出てきた。
先ほど私が街で買った、レオルドの服だ。
荷物を見られていたの!?
リュカ様はその中の1着を手にすると、まるで汚らわしいものでも見るように目を細めた。
この子ども服に嫌悪感を抱いているのが、嫌というほど伝わってくる。
「これ……君の子どもの服じゃないよね? まさか、他の男との間に子どもを作ったの?」
「…………」
子ども服が3歳用で小さいからか、リュカ様は自分の子だとは疑っていないようだ。
しかし、その分激しい怒りのオーラが言葉の隅々から滲み出ている。
チラシで見た『冷酷魔術師』という言葉が頭に浮かぶ。
こんなに怒ってるリュカ様は初めて……怖い……!
「あ、あの……」
「ねえ。答えて、アミーリア。この服は、誰の?」
「それは……近くに住んでいる……子どもの服……です」
「……君の子どもじゃない?」
「は、はい……」
「…………」
少しの間を置いたあと、ずっと真顔だったリュカ様がニコッと微笑む。
そして、そっと優しく私の頬に触れた。
怒りのオーラが……消えた?
「よかった。君が他の男に触れられたのかと思って、焦っちゃったよ」
「…………」
「もしそんなことになったら、俺はその男を殺しちゃうよ?」
「え……何、を……」
そこまで言ったとき、リュカ様が突然キスをしてきた。
えっ?
そのままベッドに押し倒され、何度もキスを重ねてくる。
顔を動かすことができず、それを拒むことができない。
「んっ……リュ、カ……様……」
手で押し返しているけど、ビクともしない。
リュカ様とのキスはもちろん初めてではないけど、こんなに強引にされたのは初めてだ。
まるで別人とキスしているみたいで、怖くなってくる。
なんで、こんな……。
しばらくして、唇を離される。
涙目になっている私の目元に軽くキスをしたリュカ様は、満足そうに笑っている。
「君は俺のものだから。他の男には、絶対に触れさせない」
「…………」
「これからはずっと一緒だ」
そう言うなり、リュカ様はギュッと強く抱きしめてきた。
昔も愛の言葉をよく伝えてくれる人ではあったけど、こんな束縛のような言葉を言われたのは初めてな気がする。
リュカ様のようで、リュカ様でない。
本当に……どうしちゃったの?
こんなの、リュカ様らしくない。
殺すという言葉も、独占欲のような言葉も、何もかもが違和感だ。
でも、本音でそれを言っているのが伝わってくるからこそ怖いと思ってしまう。
ニコラが言っていたとおり、本当にリュカ様は変わってしまったのね……。
彼が変わったのなら、それは私のせいだ。
だから彼が望むならずっと一緒にいてあげたい。
でも、それはできない。私には、自分よりもリュカ様よりも大事なレオルドがいるのだから――。
私への愛に疑いはないけど、今のリュカ様にレオルドのことは話せないわ。
どんな反応をされるのか、怖い。それに……。
「リュカ様……」
「ん?」
「リュカ様は、ナディア様と結婚されたと聞いたのですが……」
「!」
ふと思い出した、ナディア様のこと。
再会や監禁に驚いて忘れていたけれど、リュカ様はナディア様と結婚しているはずなのだ。
……たとえ変な噂があったとしても。
私の質問に、リュカ様は一瞬目を見開いたあと苦々しい顔で「ハハッ……」と吹き出した。
「あんな女と結婚なんてするわけないだろう?」




