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幕間 十六年前のとある会話記録

???「魔王様……、ワタシの検査結果をお読みになったようですね?」

先代魔王「ええ、読んだわ……、やはりあの子、ジードは今までの魔王種と明らかに違うようね?」

???「ふむ……、なるほど。魔王様はそうお考えになった……と」

先代魔王「だってそうでしょ? 神核の構造強度にしたって、明確に異常な値を示して――、そもそも男性体で生まれている」

???「ええ……、歴代魔王種の資料によると――、ジード様の神核は各値が異常に高いということが分かっています。さらに言えばおそらくは歴史上になかった特異能力を持っている可能性も考えられます」

先代魔王「……それは、もはや()()()だと言えるの?」

???「……まあ、資料をご覧になった上で、魔王様がそう考えるのは仕方がないことですが……、ワタシとしてはそうは思わないのです」

先代魔王「それは?」

???「その答えは話が長くなりますが――、着いてきてくださいね?」

先代魔王「いいわ……お願い」

???「……さて、天魔族は女性体が基本です。その理由は、先史文明において我々が生まれた際、その基礎となった神霊が女神であったからと考えられます」

先代魔王「それは……、知っているわ」

???「そして、かつての創造主が神霊の機能を、中枢一に末梢七十二という形に組み替えた。……そこになんの意図があったのかは予測しか出来ませんが……」

先代魔王「……」

???「ワタシの仮説では――、基礎となった神霊が世界に対し霊的質量が大きすぎて、分体でしか世界に現界できなかったからと推測しています。そして、その性質は分化以降も一部残り――、その分化された神核を魂として生まれる生命構造が、神核の強い強制力で女性体に強制変化してしまうから……だと」

先代魔王「だから我々は基本女性しかいない?」

???「――そのとおりです。だからこそ先史文明の創造主は、現界した生命としては欠陥のある構造に、追加の機能を付与した――。すなわち、簡易精霊体構築による人工生命創造機能、ようは【繁殖種】と呼ばれる男性体生命の構築機能です」

先代魔王「簡易精霊体?」

???「はい……、正しく検査すると天魔族には男性体も生まれる基礎が出来ています。そもそも肉体は【魔人族】の構造を利用したカタチ故に当然ですが……、世界律への干渉ができる神核を魂に据えた場合、細胞内のDNA自体が書き換わってしまうのです。……これは過去のいくつかの検査でわかっている事です。だからこそ繁殖のための機能体を生み出すには、生命核である魂が生命から離れた機械的人工魂魄体である必要があるのです」

先代魔王「ああ……、要は魔法で生み出す使役獣とか。そういったモノは神核の影響を受けない。必ずしも女性体にはならないから……」

???「そう……。繁殖機能を抽出したモノ――【繁殖種】という存在は、要するに神核の影響を避けてDNAを書き換えずに次代へとつなぐ為の迂回機能であるわけです」

先代魔王「ならば……、やはりジードが男性体として生まれるのはおかしくない?」

???「ええ……、神核の影響を受けてしまうがゆえに、天魔族の男性体はDNAから書き換えられて女性体へと変化する。が……」

先代魔王「……?」

???「生命として……、正しく天魔族にも男性が生まれる基礎があります。さきほどそう言いましたね?」

先代魔王「ええ……」

???「そして……、何らかの条件下で、それまでなかった神核が構成される可能性がある。――それを貴方は知っているはずです」

先代魔王「え? なに?」

???「()()()()……、()や貴方のメイドのオラージュ――、天魔七姫将が保有する神核です」

先代魔王「あ!」

???「ええ……、元々、神核は中枢一に末梢七十二、――それ故にこれらを()()と呼びます。そして、そうでない特異神核は、()()()()の前に突如生まれ始めたものです。ええ……、魔王様がよく知っていらっしゃる――、魔力域異常の頻発による幻魔竜王の複数出現……」

先代魔王「ああ……そういう事?」

???「もちろん、あのかつての災厄と特異神核の出現には明確なつながりが示されてはいません。が……、少なくともワタシは関連を予想しております。だからこそ今回のジード様の件もそういった仮説を立てております」

先代魔王「……まさか」

???「ジード様の誕生は――、世界が来たるべき大災厄を予測した――、防衛反応……。すなわち……、世界、もしくは天魔族――、どちらかの滅びを前に生まれた――」


 ――()()()()()()()()()()()である……と。


???「ええ……、しかしながらこれはあくまでもワタシの仮説――。証拠もなければ、現状、上級幻魔すら出現していない、平和な世界に何があるのか? とも思いますが……」

先代魔王「――その仮説は、とりあえず貴方と四博士の心のうちにとどめておいて。それを決して口外はしないように」

???「はい……、理解しております」

先代魔王「……ただ、あなた達だけはその仮説を()()()とする前提で、いろいろな準備と対策をしておいてほしいの。そして、何かしらの準備不足で、回避不能な最悪が来た場合――、貴方の()()()()でその最悪を回避してほしい」

???「――!」

先代魔王「……ごめんなさい、こんな事を押し付けることになって。メディアとのこともあるのに……」

キルケ「いいえ、それこそが我らの使命ですから、……ご安心を。大丈夫……、これでも自他ともに認めるマッドサイエンティストですし」

先代魔王「ふふふ……、そうね」

キルケ「魔王様や()()()()(メディア)や天魔族の仲間たちのためならば――。どのような手段を使ってでも守り抜きますとも……」


 ――この【キルケ・アスモダイオス】にお任せください。

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