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第十三話 律の破戒者――【Lawbreaker】

 さて――、

 数百年にわたる師匠から受ける修行の中で、結局、妹弟子は姉弟子を超えることはなかったとされる。

 ならば、その修業の意味はあったのか? そう思う者も居るであろう。


 ――しかし、である。


 その妹弟子は、姉弟子の本気で自らを断とうとする斬撃を躱し続けた。そして、自らの斬撃も相手に浴びせ続けた。

 それをまさしく、数十年単位、数百年単位で続けて、そして、自らを主となる者に()()()という立ち位置を確立させた。

 それは【メイド】という従者職に留まらず、その剣術においてもその性質がはっきりと見えていた。


 彼女は、確かに【普通の剣士】としては、天魔族でも平均的な才能しかなく、その道で大成することはなかった。

 だが、(しゅ)となる存在に従って剣を振るうことにかけては並外れた才能を示した。

 彼女の護衛剣術は、ただ凶刃から(あるじ)を守るだけにとどまらなかった。

 本筋の(しゅ)剣術に合わせて、その隙を塞いで間断のない一筋の流れを生み出す、(しゅ)剣術を振るう者の意図を読んでそれに高度な連携を行う、そういった方向性の剣術に関しては彼女はあまりにも天才すぎたのである。

 とくに――、その攻撃も防御も、足運びも、その【バカさ加減】も知るルーチェとの連携に関しては……。


 ザク!


 【征天のナンダ】のその身から幾度目の血しぶきが飛ぶ。彼女は眉をしかめながらその身を後退させていく。

 まさに【ナンダ】は、はっきりと防戦一方で抑え込まれていた。

 【ナンダ】の特別な力である強固な防御シールドも、節ごとに分かれる刃も、一定の力は示したがそれは目前の二人――、ルーチェ・イブリースとオラージュ・ヴェルゼビュートの前ではそれほどの有利を【ナンダ】に与えることはなかった。


 ――それらを使っていないのか? といえばそうではないとしか言えない。


 節ごとに分かれる刃は、彼女にとって明確な諸刃の剣となった。

 ルーチェは【不壊の曲刀・無銘】の超硬度と自身の超膂力(ちょうりょりょく)によって、相手の武器を砕くという戦法を時折行うのだが、それは普段であれば節ごとに分かれる刃による襲撃に変化させて戦闘を有利に傾けていたが、オラージュ・ヴェルゼビュートはその隙をついてその手の双剣を打ち込んで来るため、即座にもとの刀に戻してその斬撃を受けるしか無かった。


 【サーガラ】の【機竜】に匹敵する防御シールドも、二人の連携の前には中途半端に強いだけの【盾】にしかならなかった。

 ルーチェの斬撃を【盾】で防いでも、そうして出現した【盾】が守っていない部位へとオラージュの刃が襲い来て、そのまま【ナンダ】は回避行動とそして時には斬撃の痛みをその身に受けることになった。


 【ナンダ】がルーチェの隙を見つけて打ち込んだこともあった。――が、それは実際はルーチェによる誘い込みであって、そうして打ち込んだ【ナンダ】がその瞬間生み出す死角を突いてオラージュの斬撃が襲ってきたのである。

 そして――、それでも何とか放った必殺の刃を、ルーチェとオラージュは互いに互いの隙と死角を塞ぐことで、まさしく完全に()()してしまっていた。


 ――そして、それらの行動を、ルーチェとオラージュはなんの打ち合わせをした様子も、合図をしている素振りもなく、無言で――まるで思考が統一されているかのように【ナンダ】に対して示した。ルーチェとオラージュには傷はなく、【ナンダ】に新たな傷が生まれ続けていることがその証明であった。


(……二対一ゆえにある程度の予想はした……、だが我が能力によってそれを越えられると踏んでいたが……)


 再び傷を受けつつ【ナンダ】は苦渋の表情で思考する。

 自分のその予想は完全に外れてしまった。現状はまさに防戦一方でしかなく、ここに来てこのままではこの二人に太刀打ちできないことは【ナンダ】も理解できた。

 だからこそ()()()()()()を切るしかなくなったのである。


 ――その瞬間、ルーチェの動作に隙を見出す。それはコレまでの流れでは誘い込みからのオラージュによるカウンターと予想できた。

 その誘い込みに【ナンダ】はあえて乗ったのである。


 ――ヒュ!


 その【ナンダ】の身がルーチェの懐へと入って刃が閃く。それを予測してルーチェが回避行動を起こして――、【ナンダ】は死角からオラージュの刃が迫っていると考えた。

 その瞬間――。


 ――補助術式【歩法加速】。


 その瞬間、【ナンダ】の縮地走法――、剣士としての彼女の体術の極意と言える動きに加速強化が加わる。そして、それに相対するルーチェとオラージュの視界から、霞のごとく【ナンダ】の姿が消え去ったのである。――それを驚愕の目でルーチェは見た。

 瞬間的にルーチェの背後に腰を低くして現れた【ナンダ】。それはルーチェのその身によってオラージュからの視線を塞ぐ位置であり、そのまま気づいていないルーチェを一刀のもとに切り捨てられる最高の位置取りであった。この位置に在る【ナンダ】をオラージュがどうにかしようにも、当のルーチェの身が邪魔でオラージュ側からは何も出来ない。

 その必殺を予測して【ナンダ】は嘲笑を浮かべてルーチェの背を見つめる。


(……まあ、楽しかったと言ってやろう。貴様らの連携もどちらかが消えればそれで終わり。貴様らは……、我の力に及んではいない……)


 【ナンダ】はまさしく生まれついての戦闘生物。そのための知識のみを生まれた時点で埋め込まれた、敵を切り捨てる事のみに特化した生命体である。

 その戦闘技術と戦闘感覚は、ルーチェとオラージュのような長年の鍛錬によって培われたものではないが、それでも純粋で鋭すぎるそれらはその時のルーチェの驚きと恐れを読み取って、その先が正しく進むという証明を【ナンダ】に送ってきた。


 ――だから反応が遅れた。


(……?!)


 一瞬、ルーチェの身で遮っているオラージュのその両手が視界に入る。その手に持っているはずの二振りの長剣が消え失せていた。

 ――その瞬間、【ナンダ】の背筋に悪寒が走った。

 そして、何か空を斬る音が耳に聞こえてくる。咄嗟に【ナンダ】は自身の左に【盾】を展開しつつ、その斬撃を放とうとした動きを中断して、無理やりその身を後退させた。

 その視線のほんの数ミリ先をオラージュの長剣が、自身から見て右側から左へと真横に走り抜けた。さらに――。


 ガキン!


 左側から襲い来たオラージュのもう一つの長剣が、【ナンダ】が左に出した【盾】に防がれてそのまま地面へと突き立った。


(これは……)


 それはまさに自身が用いた補助術式と同じもの。オラージュは両手の長剣をそのまま自身の両側に投擲しつつ、その双方に曲射の術式を込めることでルーチェを迂回して【ナンダ】を攻撃したのである。その素早い判断に驚きを隠せずオラージュを睨む【ナンダ】。しかし、そのオラージュの唇がある言葉を紡いだのを彼女は見た。


 ――これで終わりです。


 その意味に気づいてやっとその瞬間、消失していたルーチェへの警戒を取り戻す。しかし、その行動はまさに遅すぎたのである。

 ルーチェが姿勢を低くして、【ナンダ】から見て右側からその刃を振り向きざまに下段から斜め上へと神速で振るった。【ナンダ】は冷や汗を飛ばしながら必死でそれを回避しようと動いた。

 ――そして。


 ザク!


 その竜骨の刀を手にした右腕が宙を舞う。ルーチェの凶刃を避けきれずにその腕を飛ばされてしまった。

 【ナンダ】は目を見開いてその右腕を見送る。そこに再び両手に長剣を再召喚したオラージュがその双剣を打ち込んできた。

 ……そう、オラージュは剣をどう扱おうが再召喚できる。ただ両手剣を振るうだけの連携など、オラージュの戦闘連携技術のほんの一部でしかなかった。


 ――そこを読みきれなかった【ナンダ】の完全敗北だった。


 そして、【ナンダ】にも終わりが迫ってきた。しかし――。


 ――■■■侵食定理・■■■■。


 その瞬間、オラージュの双剣が硬いものにぶつかって止められる。

 目前の【ナンダ】……、そしてその片腕と刀が、漆黒の立方体に変化していたのである。


「……これは?! 術式?! ……いや」


 オラージュは即座にそれの正体を見抜く。


「特定範囲の時間凍結による保護……。それは自身では不可能な行為……」


 ……そして、目前のような効果を発揮出来るのは【固有権能】か【侵食定理】のみ。


「うえ? なんじゃこりゃ、オラージュ? ……この黒い箱は?」


 オラージュは、事態をいまいち飲み込めていないルーチェの言葉を無視して、周囲に警戒の視線を向けた。そして、倉庫の一角に静かに佇む修道女を見つけた。


「……貴方は……」

「……ふふふ、危ない危ない……、折角の()()()()()()が危うく消えるところでした……」

「……? なに?」


 その修道女【極天のワシュキ】は、微笑みを深くしてその手に十字架を模した長剣を呼び出す。


「私は剣士ではないので……何処まで通用するでしょう?」


 そういって朗らかに笑いつつ、ルーチェとオラージュに小さく頭を下げたのであった。



◆◇◆



 【サーガラ】と【プリメラ】の一騎打ちもプリメラが優勢に進みつつあった。

 【サーガラ】は以前と違い攻撃のみに労力をつぎ込むことが出来ずに、襲い来るプリメラを防ぐ事に割かれて攻めが緩慢になっていた。

 さらに、時折支援として【ケロナ・アグレアス】や【カミーラ・パイモニア】から飛ぶ強化が、プリメラのその能力を引き上げて猛攻を生み出し、それによって【サーガラ】は追い詰められていったのである。それを静かに見守る【破戒のウパラ】はもはやこれまでだろうと、今回の作戦の失敗を理解していた。


 ――補助術式【超加速】……、補助術式【放電掌】。


 【サーガラ】が苦しみ呻きながらその【機竜】に二重の強化を加える。送電する腕が超速で振り抜かれてプリメラを襲った。


「……ぐ!!」


 その放電の範囲を突き抜けてプリメラは反対側に走り抜ける。総司の【冥護】が正しく働き、そのダメージを軽減してそのまま放電の嵐の突破を支えた。

 そのまま、地を走り抜けたプリメラがその【機竜】の足元へと迫る。それを後退させて避けようとする【サーガラ】だったが……。


 ドン! ……メキメキ……!


 プリメラの刃が【機竜】の右足に命中し、その刃による傷を幾度も受けていたそれに重大な亀裂を与え、そのまま自重を支えきれずにへし折れてしまった。

 その機体が揺れて【サーガラ】が落ちそうになる。その彼女らの隙をプリメラは見逃さなかった。


「覚悟!!」


 プリメラはそう叫んで一気に【機竜】を駆け上る。そして【サーガラ】の元へと到達し……。

 ……その刃がひらめいて【サーガラ】へと向かった。


(……まさか! この私が……?)


 その斬撃が自身へと向かうのを【サーガラ】……、いやスクリタは見た。そして――。


【ma……aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaam!!】


 不意に【機竜】が絶叫に近い悲鳴を上げた。――その轟音に一瞬怯むプリメラ。

 その、もはやなりふり構わない【機竜】の必死の動きが、スクリタを守ろうと高速で動く。その打撃がプリメラへと向かい、そのまま彼女を振り払った。

 そのまま地面へと墜落するプリメラ。……その瞬間。


仮想魔源核(ロウアマナコア)――開放(リリース)!!」


【system ALAYA:――分割竜核機能・世界律への強制干渉――、侵食を開始致します】

【system ALAYA:――個体識別符名・幻竜八姫将げんりゅうはちきしょう、サーガラ】


侵食定理行使(リミットブレイク)!!」


【system ALAYA:――侵食定理・竜雷轟掌(Thunder of the End Times)】


 ――そして、スクリタの侵食定理がプリメラに決まった。

 その両手がプリメラに向けられ、その範囲に小さな捕縛結界を生み出す。その中に閉じ込められたプリメラは内部に渦巻く放電に打ち据えられて身動きを封じられた上に、そのまま全身を焼かれ続けた。


「プリメラさん!!」


 さすがの事態に総司は叫ぶ。それをケロナが制した。


「魔王様!! ……ムートです!!」

「……あ! はい!! ……魔源核(アッパーマナコア)――開放(リリース)!!」

 

【system LOGOS:――中枢神核機能・世界律管理者権限をもって従神核への拡張機能を実行致します】

【system LOGOS:指示をどうぞ:▶】


「魔王真名――、ジードの名において権能を行使する!! ――我がもとに集え眷属よ! それは次なる進軍への布石なり! 【帰召(きしょう)】!!」


 その瞬間、総司たちの目前に、――天魔七十二姫、序列66番、魔剣士【ムート・キマリス】が出現する。

 そして、現れた彼女はその場の状況を素早く理解して、そしてその言葉を紡いだ。


仮想魔源核(ロウアマナコア)――開放(リリース)


【system LOGOS:――分割神核機能・個別世界律限定適用を開始致します】

【system LOGOS:――個体識別符名・天魔七十二姫(てんまななじゅうにき)、序列66番、ムート・キマリス】


固有権能行使(リミットブレイク)


【system LOGOS:――固有権能・幻夢断剣(Supernatural Destruction)】


 そのままプリメラへと奔ったムートは、その刃を下段から上段へ向けて振り抜いた。


「……そんなものこの捕縛結界には……」


 スクリタはそう叫ぶが。


 ガシャン!!


 その捕縛結界はあっさり砕けて侵食定理が中断され、全身を焼かれたプリメラはその場に崩れ落ちる。

 その彼女を素早く抱えてその場から飛び退るムート。


 そして――、総司は現状を見て決断を下す。


(……足を折って動けない今がチャンス!! すこし時間が早いですが……)「……ケロナさん!! 万騎同心(Spirit Union)!!」

「は!!」


 ケロナがその固有権能を行使する、それに合わせて総司も再び【帰召(きしょう)】を実行した。


 そして――、その後の光景にスクリタは驚きの表情を浮かべる。

 すでに仮想魔源核(ロウアマナコア)を開放して、その固有権能である【竜断閃】を放つ直前のイラ・ディアボロスが自身の目前に出現したからである。

 スクリタは心のなかで思う。


(まさか!! あの大ぶりの対幻魔竜王固有権能は発動前の隙が大きいから……)


 ――呼び出す寸前に発動準備させて……その隙を消した?!


 まさにその通りであり、これこそ総司たちの切り札だった。もはやもう一度侵食定理を打つ暇もない、避けることも出来ないであろう、何より相手は対幻魔竜王の最大奥義――、もはや自分は助からないだろうと覚悟した。


 ――だが……。


 不意にイラ・ディアボロスとスクリタの間にヒトがわって入った。その右手をイラに向けたそのヒトは――、


 ――当然、【破戒のウパラ】であった。

 そして、常識は覆った。



◆◇◆



 ――その瞬間を、誰も見ていなかった。

 戦いが進み、互いに集中する余りに、ただ静かに見守るだけしかしない【破戒のウパラ】を警戒する事を総司達は忘れていた。

 そして、ただ一人、その【破戒のウパラ】だけが、そのとき別の“世界”を見ていた。


 事態が進み――、その【竜断閃】が奔ろうとした時――、【破戒のウパラ】はその身を静かにその目前へと晒して、その右手をその必滅の輝きに向けたのである。

 ――そして、それは起こる。


 世界律の輪郭がゆらりと歪む。

 【竜断閃】が纏う魔力の層が、薄紙を剥がすようにひび割れてゆく。その構造が崩れ去ってそのまま方向性のない、ただ膨大なだけの魔力へと逆変換されてゆく。

 ――そして、それは巨大な河の如き奔流となって【破戒のウパラ】の右腕へと収束した。


 その光景をイラは無論、総司も……そしてムートも、その場の皆が驚愕の表情で見た。

 【破戒のウパラ】は膨大な魔力で輝く腕をかざして笑っていた。


 自身の、必殺の固有権能がキャンセルされた事実に素早く気づいたイラ・ディアボロスは、目前の【破戒のウパラ】に危険を感じてその刃を高速で振るった。

 その刃が【破戒のウパラ】のその首を切り落とそうと、その首へと到達しようとする。


 だが……、その瞬間【破戒のウパラ】のその口が「当然――、YESだとも……」と言葉を紡いだ。


 ――即席術式【物理斬撃完全無効】。


 ガキン!


 刃がその首に届いた瞬間、その刃に宿っていた速度と力が消失した。そして、【破戒のウパラ】の右腕の輝きが急速に小さくなる。

 それを見たムート・キマリスが焦ったようすでイラ・ディアボロスへと叫んだ。


「イラ!! 下がれ!! そいつはヤバい!!」

「……く?!」


 その忠告に従いイラは総司たちの元へと後退した。

 それを見守った【破戒のウパラ】は背後のスクリタの方を向くことなく呟く。


「……作戦はここまでです。今回は彼らの勝利……、下がりますよサーガラ」

「……ウパラ」


 スクリタはそう呟いてから、一瞬総司の方を見た。

 総司とスクリタの視線が交錯し、そしてそれが断ち切られ――、スクリタは小さく呟いた。


「分かったわ……、下がりましょう」


 そのやり取りを見て総司達は一瞬スクリタたちの方へ走り寄ろうと動く。しかし、それを小さな笑みで見つめながら【破戒のウパラ】が言った。


「……それでは皆様ごきげんよう……」


 ――即席術式【超空間転送】。


 スクリタとウパラ、その二人の姿が揺らいで消えてゆく。そのまま何事もなかったように全ては消え去った。

 それを呆然と総司たちは見送るしかなかった。

 ただ一人、ムートだけが目前で展開した全てを見ていた。


 かの【破戒のウパラ】は、おそらくは彼女の侵食定理によって【竜断閃】を打ち消したのである。

 それだけならよく聞く話だが……、彼女はそれにとどまらなかった。そのまま、【竜断閃】を魔力に逆変換して、自分の【魔力リソース】として取り込んだのである。

 それ以降に使われた二つの術式は――、


 ――余りにも膨大な魔力を浪費する、常識外れの超高等術式であった。それは本来ならば個人ではどうにも出来ない魔力消費だが……、あの【破戒のウパラ】は、【竜断閃】を魔力に逆変換した【魔力リソース】を使って賄っていたのである。それはまさに――、


 ――あの【破戒のウパラ】の目前で不用意に固有権能を使用すれば、それを【魔力リソース】とした常識外れの超高等術式によるカウンターを受ける、という意味でもあった。

 固有権能を打ち消すだけではなく、それをそのままカウンターに利用できる最悪の【固有権能キラー】。

 まさに【破戒のウパラ】こそそれであった。


 総司達は、ただ静かに新たな強敵の存在を確認していた。

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