天魔族名鑑特別編・オラージュ・ヴェルゼビュート編
●オラージュ・ヴェルゼビュート:追記
【固有権能:暴食死翼(Gluttony Death Wing)】
自身の【隠し羽根】計四枚をそれぞれ、柄を自身の方へ刃を外に向けた巨大両刃長剣四本一組の剣翼へ変化させる。
その剣翼は青黒いオーラ――、魂喰いの呪霊ウイルスを纏っており、その中央部分の色が濃くなって角のあるドクロマークを形成している。見た目は蠅の王(ベルゼブブ)の四枚翅翼に見える。
この剣翼は、そのオーラに触れた存在の生命核を侵食し、生命力を削減して最低値まで落とす効果を持ち、同時に通常の飛翔翼としても機能する。
ただし、その空中機動性はそれぞれの剣が、何らかの理由で失われるごとに低下してゆき、左右一本づつが最低値で、左右のどちらかがゼロになると飛行能力を失う。
これらの大剣は普通に剣としても使用可能ではあるが、正確には剣の形状をした誘導弾であり、指示に従い飛翔して目標に到達した瞬間、粉々になってオーラ付きの金属片を周囲に撒き散らして範囲内のすべてを殺傷する。魂喰いの呪霊ウイルスによって生命力を削られる上に無数の金属片を受けたものは、負の生命である幻魔を含めて死滅することになる。そのダメージは、下級幻魔なら炸裂した金属片だけで確殺、中級幻魔なら剣を直撃させれば倒せるぐらいの威力であり、上級幻魔には数十本ほど命中させないと倒す事はできず、幻魔竜王相手には足止めやショックで動きを止めるだけにとどまる。ただ魔人族などの一般生命は中級幻魔ほどの耐久力はないため、それらが巻き込まれたら生き残ることは出来ない。最も魂喰いの呪霊ウイルスを受けるのは幻魔のような特殊生命を含めた生命体のみであるため、そもそも生命体ではない機械的存在、あるいは術式や固有権能によって召喚使役されるような存在には効果は発揮しない(単に無数の金属片による殺傷力しか発揮せず、かなり破砕力が落ちてしまう)。なお、この世界にはアンデットは存在しないが、もし居た場合――、高位アンデットにはウイルスが正しく機能し、通常ゾンビ・スケルトンあたりの雑魚・下級アンデットには機能しないという状況になる。
この固有権能はようするに「付加効果を持つ十六本の超高威力ミサイル弾を獲得する」固有権能であり。近距離戦闘では魂喰いの呪霊ウイルスの効果しか活用できない遠距離戦闘、言ってしまえば自走砲や自走ロケット砲などの、間接射撃用攻撃権能だと言える。
本編第一話の冒頭で幻魔竜王に対し動きを止める目的で使用されたのがこの固有権能である。さらに、そもそも魔王城内で使用するようなものではなく、第三話、対ルーチェ戦闘において固有権能を使わなかったのは、単にその状況では最大限に効果を発揮しないものだというだけであった(もちろん、使えるタイプの固有権能だったとしてもルーチェに対しては使わなかったであろうが)。
【昇格型弐式固有権能:鏖殺神剣(Divine Sword of Absolute Death)】
魔王権能の昇格バフ【叙進】によって、一時的に機能が変質強化されたオラージュの固有権能。
【暴食死翼】が三回再装填可能になり、それを全て周囲に待機させたのち、それを融合させて一本の20m級超巨大剣型弾道ミサイルを生み出す固有権能。
この大きさではもはや剣としては扱えず、機動性も極端に低下するが、威力は上級幻魔なら確殺、幻魔竜王でも大ダメージを与えられるようになる。
しかしながら幻魔竜王は、飛翔翼をもち機動性が高いためほぼ避けられてしまい、普通は動きが鈍い上級幻魔を倒すための【上級幻魔キラー】としてのみ扱われる。
この固有権能は、特定目標ではなく地点を指定して発射する、まさしく弾道ミサイルそのものであり、誘導管制要員との連携によって超長距離間接攻撃権能として、戦略・戦術的に使用することも可能である。というかそういった扱いこそがこの固有権能の本質と言える。無論、上手に扱うことさえできれば、本来命中しないとされる幻魔竜王への攻撃に使用することも出来る。