表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

1話 さよなら私の日常

「あのさー、今日変な夢を見た気がするぅ」


少女は顎を目の前の机に乗せだらだらとした様子でそう呟き、同じ机に手を置く彼女に視線を合わせる。


「変な夢見ただけかい。って、そんなぐーたらしてたら、次の授業遅れるよ」


彼女はそう言うと教科書ノートを持って教室を出て行った。


少女はゆっくりと起き上がり、身体が重いように見える動作で立ち上がり腕を高く伸ばす。


高校1年の梅雨の昼前。珍しく晴れ晴れと陽が輝く日。


少女は寝惚けた眼を擦り、教科書を持って次の授業を受けに行った。




未だ輝く夕刻の陽。ただ1人帰路につく少女。桜舞い散る春が過ぎ、見慣れるようになった帰り道。


「……雲?」


遠く遠くから夕陽を隠すように暗雲が空を包み、少女はそれから連想される事象を想像し少し足早に道を歩く。


それから……sれから、少女が想像した通りに梅雨の雨が降り始めた。


一時的にシャッターの閉まった商店街の店の影に隠れ、事前に鞄の中に入れていた折り畳み傘を取り出す。


傘を開いた丁度その時、少女の耳に小さな小さな悲鳴が聞こえた……気がした。


「……」


耳を澄ましても、人気のない雨中の商店街には雨音しか聞こえない。気にせずとも良かった。しかし少女の心にそれが引っ掛かった。


少女は見渡す。商店街の通りには少女を残し誰もいない。


少女は傘を持ち雨が降る中を歩き、ただ導かれるように、ただ少女本人にも分からずに、商店街の裏路地に足を進めた。


できたばかりの水溜りを踏み締め、傘に弾かれる雨球に耳を傾けず……悲鳴の元に辿り着く。


雨が降り頻る中、その光景に口を開き、何も出なかった。絶句からか細く出る声は雨音に掻き消され、少女は目を疑った。


血を流し血を被り血が雨によって洗い流される彼女の姿。クラスメイトであり少女の友であった者の姿。


そして相対するように1人の男が手から電撃を無造作に垂れ流す異様な光景。


その2つ。それは少女の思考を止めるのには充分だった。


相対していた男が少女に気付く。増援だと勘繰った男は電撃を垂れ流す手を少女に向け、無造作な電撃が収束を始める。


少女は動けない。この光景を事実だと受け入れられない。


その時、男の背後から薄氷の刃が男の喉を貫き、そして倒れた。


男の背後には彼女がいた。男が少女に視線を逸らした瞬間に、不意を打っていた。


「……来て」


彼女が周囲を見回す。血と雨に濡れたその手で少女の手を取り、走る。なすがままに、ただ唖然とする少女は自ら考え思考することができず、彼女に従う他無かった。


(……何だろう、この感じ。前にも)


しかし少女の中で分かることがあった。たった1つ。それは、いつもの……いつものいつもの、、?日日常が終わりを告げたと言うことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ