9月25日①
お昼休みが終わると、現代文の授業だった。
私の机は入り口から数えて2列目、最後尾にある関係上、必然的に授業に集中すること以外のあらゆる暇つぶしが可能な位置だった。
右隣の望月クンが肘を軸にして器用に上向けた手のひらを枕にしてうたた寝をしている傍らで、私はスマホを膝の上に乗せ、なるべく下を向きすぎないよう画面を眇めるようにして昨夜のニュースの公式切り抜き動画を何度も確認していた。
無音ではあったものの、それこそミュート越しにも言葉が聞こえてきてしまいそうなくらい、繰り返し繰り返し見続けた。
画面上のシークバーが、その最後を迎える数秒前にやってくる「あの瞬間」が来るたびに、疑問はおおむね確信へと変わっていった。
彼女は茜色のカーディガンを羽織っていた。それはいつも休日に会う時に着ていたもののひとつだった。
それから彼女は、まるで数百回繰り返して来た「日常」の中で偶然出くわしたイベントであるかのような様子で、やや高揚したような仕草でインタビューに応える。
「今年はこれ以上来ないでほしいですね」
この街に住む、どこにでも居る普通の一般人としての彼女の姿がそこにはあった。私は思った。
本当にその通りだと。
そしてこのあと学校が終わったら、私は彼女がインタビューを受けていた場所に行こうと決めた。
ついでに望月クンの居眠りが先生にバレた。