No.23【ショートショート】知らないことは幸せか?
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短いので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
『サーカス団がこの村にやってくる!!』
その噂を聞きつけた村人たちは、
サーカス団の到着を首を長くして待っていた。
そして噂通り、サーカス団はその村にやってきた。
一日だけの限定公演という事もあり、
村中の人々がサーカス小屋に足を運んだ。
「さぁ皆さん、よく見ていてくださいよ」
サーカス団の団長がそう言うと、
彼の後ろにいたライオンに似た生物が口から火を吐いた。
「まだまだ、これだけじゃないですよ!」
次に出てきたのは、空を飛ぶ馬だった。
その後も、双頭のヘビや足の生えた魚など、
誰も見たことない生物が次から次へと登場した。
そして、彼らが登場した瞬間、
村人たちから今日一番の歓声が沸き起こった。
「この二人は皆さんと同じ『人間』ですが、彼らがいた惑星では彼らのような人間を『双子』と呼んでいました。なんと、彼らがいた地球という惑星に住む女性は、子供を二人以上作ることが出来るんです。しかも、彼らは一人の女性のお腹の中から、全く同じタイミングで生まれてきたんです!」
村人たちが住んでいた惑星では、
子供を二人以上生むことのできる女性はいなかった。
彼女たちは、一生のうちに一人しか子供を生むことが出来ない体質だったのだ。
大成功のうちに公演を終えることが出来た団員たちは、
宇宙船に乗り込むと次の惑星へと向かった。
「それにしても、首長族なんてものが本当にいるとは思いませんでしたよ」
団員の一人が団長に言った。
「あの惑星に住む者の首がキリンほど長いことは、前から知っていた。
首長族の中でも、特に子供は珍しいからな」
ゲージに入れられた異様に首の長い少年少女たちを見ながら団長は言った。
「でも、こいつらもいずれは大人になるでしょう?
大人の首長族は、そこまで物珍しくないって聞きましたよ」
「その時は、他の奴らみたいにどこかの惑星に捨てちまえばいいだろう」
宇宙船が飛び立ってから半日が経ち、村人たちはようやく目を覚ました。
だが、そこに子供たちの姿は無かった。
しかし、彼らは子供たちの存在すら忘れてしまっていたのだ。
家に戻った村人たちは、なんとも言えない違和感を抱きつつ、
その違和感は気のせいだと自分自身に言い聞かせながら、
サーカス団が村に来る前と何ら変わりのない幸せな日々を送るのだった。
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