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隠れハイスペックな隠キャ配信者と推しすぎて配信者を目指した美少女リスナーの高校生活

作者: 青二才

このサイトで連載するかどうか決めるために試験的に投稿します。

高校生 それは人生で1番輝かしいとされる“青春”というものを最大限謳歌出来る場所だ。クラスには様々なやつが居るだろう。友達が多くて分け隔てなく優しいイケメン、クラスを纏める委員長、学年で1番綺麗で人気のある女子などが良い例だ。長々と頭の中で色々言ってきたが、俺はそんな場所とは無縁の人種をしている。黒髪でメガネ、目が隠れるんじゃ無いかというほどの長い前髪。所謂、隠キャというやつだ。

 

「なあ神崎、いつもお前そのノートになんか書いてるけどなんなんだ?もしかしてラノベで好きなキャラクターの絵とか?」


深く集中しながらノートに向かってあるものを書いていると、不意に誰かから声をかけられた。


「え?あ、あぁそんなとこかな...まぁまだ下手だから、上手くなったら見せるよ」


顔を上げて見てみると、声の主はこのクラスのムードメーカーで、俺の目の前の席に座っている天野光来だった。うん、名前からも滲み出る光属性の男子だ。軽く話す分には良いけど遊びに行くとかは無理だと思う。絶対体力と気力切れて倒れる。


俺は絵を描いているわけでは無かったが、適当なことを言って誤魔化した。これがバレたら絶対に騒ぎになるからな。.....何故かって?俺にもヒミツがあるんだよ。...1人会話は虚しいからやめよ。



「そっか、楽しみにしてるぜ、絵を描いてるオタクって大体上手いじゃん?なんだっけ、神絵師?ってやつ?」

 

「はは、俺はそんなんじゃないよ」

 

天野の言葉に少し苦笑いを返しつつ、彼の言葉を否定する。まぁ確かに某青い鳥のSNSとかに絵を上げてる一部の人達はそう呼ばれてるけど、そんな簡単に神絵師と呼ばれていてはたまったものでは無い。俺と本当の神絵師の絵を比べれば俺の絵なんて少し上手い止まりだ。

 

「お、そろそろ朝のHRのチャイム鳴る時間か、一限終わったらまた話そうぜ。」


「...わかった。話題用意しとくよ」


天野が時計を見てから話を切り上げてくれた。こういう本当にしっかりしたとこがあるから話しやすいんだよな。本当にギリギリまで喋って鳴り終わりまでに席に座れず遅刻扱いにされることも無いし...というか俺は席から基本動かないからそんなことはまず無いんだけど。

 

「今日もまた変わらない学校生活でありますように」


いつ頃からだったか、いつも俺はそう祈るように口に出してから生活を送るのがルーティンになっていた。これはやることによって「最高の結果が出せますように」とか「成功できますように」とかに変わるけどあんまり重要では無いはずだからあまり理由を話すことはしない。


















 


 

 

 

 

「ねえ!今日ってあの神凪真人さんの新曲が上がる日だよね?一緒に聞こう?


「良いね!私神凪さんの中性的な声好きなんだよなぁ..次はどんな曲だろう?」

 

今日の授業も全て終わり、クラス中が静かな雑談で溢れ返る頃、俺の席に少し近い場所に席のある女子数名が固まって話している声が耳に入ってきた。その内容に思わず俺は動きを止めてしまった。


今会話に出ていた神凪真人、彼は世界で1番の利用者数を誇る動画配信サイトで活躍しているバーチャル配信者、所謂Vtuberという人だ。登録者数が50万人程で、そのほとんどが10-20代だからクラスに一定数の視聴者が居る。登録者は多いが一本で生活していくには厳しいと言える人数だ。



「.....そろそろ帰ろっかな」


止まりかけた思考を無理矢理動かし、若干ぎこちないながらも教室を出る。

 

「.......お?今日早いじゃん、神崎って学校で長く勉強したいから帰宅部になったんじゃねえの?体調崩した?」


扉を出る直前で俺のことをずっと見ていた天野がそう声をかけて来た。その顔は本当に心配そうにしている。


「いつも勉強してたら疲れちゃうよ、それに体調も大丈夫。ただの気分だからさ、天野もサッカー部頑張って」

 

普通を装って言葉を返す。でも、一瞬だけ学校での「神崎直人」を思い出せなくなり、ぎこちなくなってしまったかもしれない。


「...おう、じゃあ明日な」


天野は少し表情を暗くしたが、すぐに笑顔を作って見送ってくれた。うん、アイドル顔負けの神対応だよ....



「天野はやっぱり光属性だ.....勝てねぇな」


俺も鈍感じゃ無いから天野が俺に声をかけて来た理由はわかる。俺の顔が強張ってたからだ。本当なら言うべきなんだろうが、生憎俺は目立つことを避けたい性分だからそれは出来ない。


「クラスメイトになんで勝負挑んでんのさ、ただ感謝すれば良いじゃん。光来はあんたが調子悪そうな顔してるから心配して声かけてあげてたんだから」


独り言をこぼしていると、それは隣の席の女子である川端恵美に拾われた。彼女と天野は所謂幼馴染らしく、入学当初は平然と名前で呼び合う2人に噂好き達はあらぬ憶測を広めまくったが、本人達が改めて幼馴染ということを言い、噂をばっさり2人で切り捨てたという伝説(?)を持つ凄い人だ。雰囲気的には委員長タイプだから関わるの躊躇するけど....


「わかってるし感謝もしてるよ、天野はいい奴だからな」


「なら良いわ、気をつけてね、また明日」


「ああ、またな」


軽く言葉を返して階段を降り、校門を出る。俺は無意識に大きく息を吐き出した。


「まさかクラスにあんなファンの女子が居るとは.... 心が痛い」


俺はそう独り言を呟くが、もうそれを拾う奴は居ない。そしてもう一度息を吐いてもう一つ独り言を零した。


「早く帰って配信準備...するかぁ...」

 


そう、俺には学校の顔とは別に、もう一つネットの中に顔がある。ここ2年でじわじわと人気を集めた今注目のバーチャルシンガー、神凪真人という顔が。

神凪真人、これは俺が厨二病と呼ばれるものを拗らせた時期に描いていたキャラを絵師の人に依頼して3D差分を作って貰ったものだ。まぁモデルが自分自身だから何処か似ている部分も多い。姿かたちは神社にいる神主の服で、巫と掛けている。設定もそれに即して、代々スピリチュアルな力のある家系に生まれて神力が少しあるという理由で都会の神社を任されてきた若い神主。というものにしている。実際にはそんなことない...けど。

 

これを考え付いた理由は、俺の密かな秘密である虹彩異色症によって生まれつき右眼が黒で、左目が限りなく色の薄いグレーだということだ。日本人にこの色の眼はあまり例がない為、普段から俺は度の入っていないカラコンを付けて生活している。

 

「髪切ってセットすれば殆ど変わらないんだよね、真人と俺」

 

そう、セットしてしまえば真人と俺はほぼ変わらない。だからこそ、俺は真人のことをもう一つの人格のように扱え、本来もう人前で出すはずがない自分の素の部分を出して配信を楽しめている。

 

「(そろそろ予約投稿した歌のLive配信が終わる頃か、新作公開記念雑談配信の枠作って開けとこ)」

 

自分の撮っておいた歌が流れている配信サイトをチェックして、配信の準備をする。やっぱり、この作業は楽しい。

 

 

 

 

 

 

 





 

 

 

『一番好きな配信てどういうことしてる時ですか?やっぱり歌配信?』


記念の雑談枠で質問コーナーを開催していたところで、こんな質問が飛んでくる。


「うーん...収益化通ってからは歌とかゲーム多めだけど、やっぱりこういう雑談配信が1番好きだなぁ...」


『理由教えてください!』


『理由は?』


『再生回数少ないのに好きなの?』


「だって雑談配信が一番みんなとこんな風にお喋りできるじゃん、俺はそれが一番うれしくて好きなんだよ」


理由を少しだけ話した俺の声は若干だが震えていて、涙をこらえているときのように力の入ったものになっていた。


『今も昔もリスナーを大事にしてくれる真人さんかっこいい...一生付いていきます‼』


『お布施の札は何色ですか?赤がいいですかね?』


『ライブツアーとか開催することになったら絶対に特等席で見に行きます』


 

「お!古参筆頭の皆いつもありがとう、無理のない範囲でこれからも推してね。でもお布施はほどほどにしてくれると嬉しいな、心配になるから。ライブツアーも何も俺まだ未成年だし事務所に所属してるわけでもないからそういうのは難しいかなぁ」


自分の配信に一番最初のほうから来てくれて、配信者にメッセージと共にお金を送れるスペシャルチャット(通称スペチャ、このチャンネルでいうところのお布施)を送ってくれる人たちがまたおふざけのように高額なスペチャを送りながら言ってくれる....ちょっと怖い。



 

『やっぱりお布施出来るリスナーの皆さん羨ましいです』


これまた最古参の一人、ミコトさんがそんなコメントを送ってくれる。彼女いわく、成人していないし銀行口座から自分でいろいろ出来ないからスペチャができないらしい。まぁスペチャをくれないから冷遇するつもりもないし、一番の最古参といっても過言ではない人だからむしろ優遇している部分があるくらいかもしれない。

 

「そんなことないよ、ミコトさんが最古参の1人だってことは変わらないし、ずっと見てくれてる人がいるのは嬉しいからさ」

 

 


 

 

 

 

 

「お....なんか色々話してたら結構遅い時間になったな、じゃあ俺もリアルはほどほどに忙しいからここらで閉めるよ。配信に来てくれた皆ありがとう、次もまた来てくれると嬉しいな」

 







 




久々の配信を終えた次の日、俺は波風の立たない生活。そんなものは長く続かないことを改めて実感した。


「やめてください! これ以上近づいたら本当に警察を呼びますよ!」


配信をしてストレス発散出来た次の日にこんなことが起きるとかどうして....?厄日なの?俺は一応神社で配信者してる身(設定だけは)だよ?加護とか付いててくれよ....


「いいじゃねえか、少しくらい遊ぼうぜ?」


いや遊ぼうぜじゃなくて、こんな遅い時間から若い女の子誘って遊ぶとかダメだろ。


今確認したが現在時刻は19時30分だ、今日は日曜だし歌の収録して編集まで粗方終わらせてたらこの時間になった。ちょっとコンビニまで飲み物とお菓子買いに出たらこんな場面とかどんな物語だよ。


「.......助けるか」


そう思うが早いか、俺は買って来ていた荷物を片手に歩み寄った。






「そうだ。どうせ1人だろ? ほら、周りもみんな見て見ぬ振りじゃねえか」


 声がした方向に歩いて行った俺は、同い年くらいの可愛い女の子たちが3人組の男にナンパされている現場に到着した。


 いや、ナンパというにはあまりに強引すぎる言い方のように感じるからもはや....いや、やめておこう。


 確かに相手が美少女なら人が見ていた状況下であろうと少しでも...と考えてしまうのもかもしれないが、俺としては「コイツらバカだろ」という気持ちの方が強かった。


今の俺は夜だが収録終わりということもあって完全にオンの状態、コンタクトは付けているが前髪をあげてセットまで行い、完全に“神凪真人”になりきっている。騒ぎになって俺が知り合いに見られていたとしても気づかれない。


リーダー格の男に言われている通り周りの人は見て見ぬふりをするか遠巻きにしているだけで誰も助ける気配はない。だが、そうであったとしてもしつこく女の子に言い寄っているのは見ていて気分の悪くなる光景だ。


よし、行こう。神凪真人(もう1人の俺)、力を貸してくれよな。


「はぁ、やっと追いついた....外で待ってるって言ってたのに先に帰らないでくれ、お前に何かあったら怒られるの俺なんだから。罰としてこれ、帰るまでお前が持ってくれよな?」


適当に言いながら俺が渡したものはさっき買ってきた菓子や飲み物が入っている袋だ。中身は普通のものだから家で遊んでいて買い足しにきた体でいても誰も不自然には思わない。我ながら買ったものの運が良いな。


急に声をかけられた女の子は一瞬警戒した様子を見せ、突然渡された袋の中身を見て俺の狙いに感づいたらしく、すぐにそれを隠して袋を受け取ってくれた。...演技上手いな。


「先に行ってしまってごめんなさい、友達から早く帰ってこいと連絡があったもので....心配かけました」


「あいつら...罰ゲームで俺らに買い行かせたんだから催促すんなよな...まぁ良いや追いつけたし。で、この人たちは?」


「あ?ただ遊びに誘ってんだよ、ガキは邪魔すんな!」


「うぐっ!」


それとなく3人組を見ると、俺の右頬にいきなり拳が飛んでくる。....急なことで反応できなくてもろに食らってしまった。あまり威力は無いが衝撃が強く、吹き飛ばされそうになる。....派手に吹っ飛ばされれば誰か警察呼ぶかな。


そう思いたち、俺はわざと踏ん張らずに少し飛ばされる。受け身は取らなかったが全身で地面に当たっていけるようにしたので見た目よりダメージは無い。


「だ、大丈夫!?」


「あ、あぁ...なんとかね」


慌てて駆け寄ってきた女の子に手を借り、痛そうに立ち上がる。殴られた方の頬が今になって痛み始めたから右目だけ瞑って耐える。



「おい、何やってんだよやり過ぎだ!捕まりてぇのか!....2人ともすまなかった、こいつは少し酒が入っててな。こいつは後で締めておくからそれで勘弁してくれ」


殴られた俺が重症に見えたのか、後ろにいた仲間の1人が男に駆け寄り、俺と女の子に謝罪をして去っていった........なんとかなったか。



「.....とりあえずなんとかなったな、怪我は無い?」


俺は助けた女の子に安否を確認するが、彼女は表情を険しくして震えてしまった。....何処か怪我をさせてしまったかな


「怪我は無い?じゃ無いですよ!貴方の方が大変じゃ無いですか!!私より自分の心配を...」


今は暗いから見えにくいが、とても青い顔で心配してくれている。あ、そういえば頬痛いわ。いい感じで受け流せたけど痛くなってきた。


「いや、大袈裟にやられたフリしただけだし大丈夫だよ。俺はなんとも無い」


心配されないように隠して、笑顔で返しておく。女の子に罪悪感なんて感じさせたらいけない。


「そうだったんですね......助けて下さりありがとうございました。あの、名前を伺っても?」



「.....神崎だ」



「え.............!?」


別に知り合いでもないし大丈夫だろうと思い、本名の苗字を名乗っておく。自己紹介は目を見てするという親からの教えを守り、それを実行した瞬間彼女から声が漏れた。...なんで?


「どうかしたか?」


「あの...その目って」


聞いてみると、女の子は目について聞いて来た。別に俺の目はカラコン入ってるから不自然じゃ無いはずだが....


「!!?」


右目を触り、コンタクトが取れてしまっていることに気が付いた俺はこれ以上ないほど狼狽し、取り乱してしまう。


「別に変じゃないですよ!ただ...私の大好きな方と同じ色の目だなぁって思っただけで」


「.......珍しい目の色の人が居るんだね、俺のはコスプレでつけてるんだけど片方取れちゃったみたいだ」


女の子は必死にフォローしてくれた。....待って?好きな人と同じ?


「そうなんです!あの、神凪真人って配信者調べてみてください!私の2年前からの不動の最推しなんですよ!」


悲報 ナンパから助けた女の子が俺のファンだった件


いやいやマズい...これ身バレでは!?いや気づかれてないからセーフ?でも危ないけど2年前からの推し...ってことはこの人最古参?誰だ...??


「.....そんなに愛されて相手は幸せだね。名前を聞いてみても....いや、いいか、これじゃ俺が不審者みたいだし、これで帰るよ!」


一瞬名前を聞いて誰か当ててみようと思ったが、これじゃ周りから不審者と呼ばれそうなことに気付いて辞め、俺は逃げるように走って立ち去った。


「あ、待ってください!あの!!」


女の子が慌てたように声をかけてくるが今の俺には届かない。それほどパニクっているのだ。




 








「買ったもの忘れてますよ........どうしよ、これ」





「......最後に改めてお礼くらいさせて欲しかったな」












「はぁ...はぁ....迂闊だった、まさかよりにもよって助けた相手がリスナーとは思わなかった」


助けた女の子が自分のリスナーで、それも最古参だと理解した俺は全速力で走って家まで戻って来た。最古参だから全員の人柄はよく知っている筈で、全然厄介なファンでも無く、ただあえて嬉しい筈なのに逃げてしまった。次の配信でコメントしてくれるかな....


「.....あ、袋渡したまんまじゃん」


落ち着きを取り戻したところで、買ったものが入ったビニール袋を渡したままにしてしまうという重大なミスをしたことに気付いた。


これで俺は今日、こうして身バレ未遂をしたあと買ったものを渡して返してもらい忘れてしまうという人生最大の災難を経験したことになる。......厄日過ぎない?








だが、この時の俺はまだパニックから立ち直れておらず、気づくことが出来なかった。本当に1番大事なものを逃げる際に落としてしまっていたという事実に。







「あれ?これは....あの人の生徒証?え...,..?私が明日転入する学校と同じ?」








こうして俺、神崎直人の平穏な高校生活が崩れ始めていく.....

続編は現在製作中ですが、前書きでも書いた通り連載するか否かについてはこの作品に付けられた評価、感想、ブックマークなどを加味して決定しようと思っていますので もっと見たい! 気になった! 面白かった!という方は感想や評価をお願いします。

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[一言] 一話試し書きって所ですかね。これからが気になる終わりかたでした連載お待ちしております。
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