オトナのご飯
あれから丸一日。
明るいうちは浮島の横に、暗くなり始めたらご飯を探して池の底を漁る。
奥にはでっかい母ちゃんがいるから近づかないようにして・・
遠くてよくわからないけど、母ちゃんに寄り添うようにして・・いや、まとわりついてるストーカー?ちょっと小ぶりなオトナの同族・・・あれが父ちゃんだね。きっと。
底砂を漁るけど、ちっとも満たされない。
ここでのライバルはメダカさん。
メダカさん達も母ちゃんの食べ残しとウンコを狙ってる。
メダカさんは囁く。
「ここで生きていくのはスピードが命。
あの“でっかいの”が食べ尽くす前にエサを掠めとるこった。」
スピード?
エサ?
そんなのどこにあるんだよ?!
その夜・・・
周りが急に明るくなった。
「お待たせ!ご飯だよ~」
ひぇ~でっかい!
母ちゃんより何倍も大きいニンゲンが池の上から覗き込む。
母ちゃんと父ちゃんがソワソワして池の壁に手を付いて頭をニンゲンに向けた。
あ、コレ、何かを待ってる。
空から土だんごが降り注ぐ。
もう!アブナいなあ!
すると待ってましたとばかりに母ちゃん達は恐ろしいスピードで丸呑みしていく。
え?コレ、ボクの頭より一回り小さい位のサイズだよ??
て事は・・・
ボクの頭もパックリ一口?
背筋にゾワッと悪寒が走る。
近くに浮いている土だんごをクンクン嗅いでみる。
オエー・・・
ボク、この匂いはダメだ。
表面を掠めとる。
頂きまーす。
・・・あわわわ・・これは・・・
たまらず吐き出した。
こんなのよく食べるなあ・・・
ボ ク に は ム リ !
あっ、凹ちゃんだ。
必死に土だんごにかじりついてる。
でも、固くてうっすら表面をこそげとることしか出来ないみたい。
そうこうしてるうちに母ちゃん達は殆ど食べ尽くしたみたい。
凹ちゃんの食べてるのも横から一呑み。
凹ちゃんは慌ててカメダッシュ。
深い池の底に消えていった。
「じぁあ、またね~」
そう言うとニンゲンは去り、あれだけまぶしかった池は暗闇に覆われしんと静まりかえった。
あ れ が ご 飯 ?
ボクはお魚や虫の幼虫や死骸が食べた~い!
あれしかないの?
断固拒否します!
まず、匂いがダメ。
そんな事言うなら池の底砂はいいのか?
あれは時々新鮮な死骸や食べ残しとかあるの!
あんなに固くては噛み切れないし・・・
なんとか食べられるモノを探さないとヤバいよ!