凹ちゃん
でっかい“島”みたいなの・・
あれはボクの母ちゃんだったんだろう。きっと。
でも、あの目は・・・
弱った生き物はみんなゴハンよ~
って目だった。
ボク達の本能の一つに“生命力感知”のスキルがある。
自分より強いか弱いか・・・それがどんなに大きくても“死にかけ”は生命力が限りなく0に近づく。
自分の生命力より低ければそれは・・・
親 兄 弟 で も ボ ク の 獲 物 。
でも、補正がかかっていて同族は
“多分助からない”位弱らないと
襲わない仕様だ。
だから母ちゃんはボクをスルーした。
ボク達は恐怖に駆られると一定時間、
“全 力 カ メ ダ ッ シ ュ ”
が本能に組み込まれている。
コレ、燃費悪いんだ。
今、ボクはお腹空きすぎて力が出ない。
産まれてからまだ、何も食べてない。
そうだね、読者の皆さんにわかるように例えると、
自動車のガソリンメーターがEのラインからちっとも動かなくて、警告出まくりな状態だ。
ガソリンはスッカラカンになっても
補給すれば復活する。
でも、ボクは・・・
ボクがお腹空きすぎて限界こえたら・・・
死 ん じ ゃ う ん だ ・・・
浮島に捕まってよじ登る。
日が射しているうちは開けた場所は危険だ!
と本能がザワめく。
でも、水は近いし水中の方が恐ろしい。
ふと前を見ると
ボクと似た匂い、同じような姿の“兄弟”がいた。
「やあ、はじめまして。」
「・・・・・・・・・」
ボクは初めて“兄弟”・・・生きてる・・・に出会った。
でも、なんて声をかけたらいいんだろ?
「緊張してる?
まあ、初めて会ったんだ。そうなるよね。
どこかにご飯はなかった?
ここは“アカムシ”もエビもミジンコもいないんだ。
底砂漁って飢えを凌ごうって思ってる。
何か見つけたら教えてね。」
そう言うと“彼”は押し黙った。
ちょっと苦しそうだ。
「・・・どうしたの?・・ど・どこか痛いの?」
ちょっとびびってうまくしゃべれないや。
「ああ、ぼくは左の胸がずっと痛いんだ。
左側の甲羅が少し凹んでるだろ?
内臓が圧迫されてるんじゃないかな。
ぼくはそんなに長く生きられないよ。」
「そんな事言わないでよ!」
「自分の事だもの。
なんとなくわかるんだ。
だから、
美味しいモノ食べて居心地のいい住処を見つけて
・・・それから
・・・まったり日光浴して過ごすんだ。」