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1話 「追放」


 「グレイ、お前を……クビにする」

 「……はい」


 俺はSランククエスト『ドラゴン討伐』の帰り道の途中、淡々とした口調でそう言われた。


 緊張か恐怖か。

 俺の足が細やかに震え始める。


 遂にパーティーリーダーにも言われてしまったか。

 覚悟はしていたがこんなにも辛いものだったなんてな。


 パーティーリーダーのゼラさんはとても優しい人だ。


 魔族であるのに、俺の両親をドラゴンに殺された俺の為に共に涙を流してくれた。

 それに、復讐の手助けの為人間であるこの俺を最後までパーティーに引き留め、いつも親身になって剣術や立ち回りを教えてくれたのもこのゼラさんだ。


 だから、彼からのクビという言葉に重みがある。


 「ぷっ、遂にゼラさんにも言われちまったのかよぉ〜〜」

 「でもやっと劣等種の雑魚がこのパーティーにから出て行ってくれてせいせいしますわ」


 アルバートさんとドロシーさん。どちらも魔族だ。

 このSランクパーティー、「ビフレスト」では俺以外全員魔族である。

 というのも、人間は魔族に筋力、体力、魔力、全てにおいて劣っているからだ。

 ……そのことは一番近くにいた俺が一番知っている。


 「お前はトカゲ使いというかなり珍しい能力をもっている。だから俺はお前をこのパーティーに引き入れた。

 だが、実戦ではずっと役に立たないままだった。現に今日のSランククエストも何もできていなかった」

 「……」


 正にその通りだ。

 彼らの動きについていけないどころか、足を引っ張っている。

 こう言われるのも仕方がない。


 ゼラさんは俺の胸ポケットから顔を出すトカゲを指指して続ける。


 「しかも結局お前を引き入れてから5年間、従えることができたトカゲはさっき捕まえたそのちっちゃいやつだけ。

 ……やっぱり劣等種を引き入れたのは間違いだったかな」

 「……っ!!」


 胃から何かが込み上げてこようてしてくるのを飲み込む。


 劣等種。

 ゼラさんの口から。

 あんなに優しくしてくれたあのゼラさんの口から。


 「クスクス……無様ですねぇ」

 「早くどっか行けよ目障りなんだから……」


 アローさんとシュストさんだろうか。

 そんな声が聞こえてくる。


 「そう言う訳で、早くどこかに消えてくれ」

 「……はい」


 俺は彼らを背にして歩き出した。


 俺は他のメンバーからは日常的に殴られていたり、荷物持ちをしたり、陰湿なイジメ受けていた。

 けど、彼らはそれでも一応は仲間だ。

 逆に言えば、本心を言ってくれている。

 俺もその方が……気が楽だ。


 「おっと、一つ言いたいことがあるんだが……」


 まだ俺に言いたいことがあるのか?

 ま、どうせ悪口の類だろう。


 「お前の親を殺したのはドラゴンじゃない。俺だ。強くなるよう動機付けしたんだが……無駄だったみたいだな」


 ゼラさんは広角を釣り上げ、下品な笑みを浮かべている。


 は?

 嘘……だったのか?

 あの涙は……演技だったっていうのか?


 「ちょっとゼラさぁ〜〜ん。それ、言っちゃって大丈夫なんですかぁ〜〜?」

 「劣等種がキレると面倒臭いので程々にしてくださいね?」


 な、なんで……ゼラさんだけは、信じていたのに……っ!!


 俺の目からは涙がポツリ、ポツリとこぼれていた。


 「かかってくるならこいよ。受けて立ってやる」


 俺は震える手で、父親から貰った剣をゆっくりと引き抜く。


 俺がゼラに勝つ可能性はほぼゼロ。

 だが目の前にいるのは仲間などではない。絶対悪、敵だ。

 俺は戦わなければならない……っ!!


 「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 俺は、真っ直ぐゼラに切り掛かった。

 俺の剣とゼラの剣がキンッと音を出してぶつかる。


 「なッ、この力はッ!?」

 「ぐッ、ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 いつもより力が湧いている。

 ゼラを押している。


 「ぐっっ……!!」


 いける。

 もっと。

 もっと力を込めればッ!!


 ……殺せる。


 そう思った瞬間――ゼラの剣が青白く光り出した。


 「魔剣解放ッ!!」

 「!?」


 魔剣だと?

 魔剣は使用者の人格を乗っとることから禁忌とされている魔道具。

 ましてやその危険性を一番分かっているはずの魔族がなんでそんなものを持って……


 「ガハッ……!!」


 俺はいつの間にか腹をものすごい力で蹴り上げられていた。

 そして、ガコッと鈍い音を出しそのまま地面に叩きつけられる。

 体中が痛み、動けない。


 「チッ、魔剣まで使わせるとはな……興醒めだ。よし、お前ら行くぞ!!」

 「ま、待てッ……ゴホッ、カハッ……」


 奴らの声が遠ざかっていく。

 だんだんと。

 小さくなっていく。


 「……」


 起き上がる頃には、既に姿は見えなくなっていた。

 もう、何処にもいない。


 「くそッ……!!」


 俺は周りに誰もいない中一人で涙を拭い、決意した。

 あいつらに……復讐すると。


この小説を読んで面白いと思われた方はブクマーク、感想、下の☆でポイントを入れて頂けるととても連載の励みになります!!

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