30.異世界の運命の人
ノルムさん達は、3週間どころか3日で討伐を終えて王都へ戻ってきた。
宰相様は魔王を倒すと、後ろ髪を引かれる様子もなく、サックリと迎えに来た光の中へと消えて行ったそうだ・・・。
そんな訳で、ノルムさんと私とサイモンさんは、3日ぶりに感動の再会?をしたのだが・・・。
迎え出るなり、ノルムさんは不愉快そうにサイモンさんを睨んだ。
「・・・何故サイモンが我が家に居座ってるいるのだ?」
ノルムさんが出立した日から、サイモンさんはクラメル家に泊まってくれていた。
どうやらそれがお気に召さなかった様で・・・。
「先輩がおっしゃったのではありませんか、『私に何かあれば、チサとクラメル家を頼む・・・。』と。だからいつ悲報が届いても良い様に、控えておりました。」
サイモンさんはニコニコとそう答える。
その回答にノルムさんさため息を吐くと、私に言い聞かせる。
「チサ、未婚の令嬢たるもの、未婚男性を屋敷に泊めるなど、良くない事なのだぞ?・・・何か間違いでもあったらどうするのだ。チサは良く分かっていないのかも知れないが、サイモンはそこに付け込むかも知れない。警戒心と慎みを持つ事は令嬢としてだけでなく、女性としても大切な事だ。」
・・・。
は、はあ・・・。
諭す様にノルムさんに言われ、何となく居た堪れなくて、視線を彷徨わせる。ふいにサイモンさんと目が合うと、サイモンさんが目を細めた。
その表情がなんだか艶っぽくて、思わず顔が赤くなってしまう。え、えっと・・・討伐に行く前にノルムさんが書斎に篭ってしまった、あの時に・・・二人で星を見に行って・・・その時も、そんな顔・・・してましたよね?サイモンさん。
あわわ。・・・ヤバイ。
赤くなった私を不審気にノルムさんが睨む。
「・・・えっと、お屋敷は広いですし、男性の使用人の方も住み込みで働いてますし・・・。と、特に、も、問題も間違いも無い・・・かなぁと・・・。」
慌てて、言い訳がましくそう言ってみると、ノルムさんは納得したように頷いた。
「まあ、そうだな。サイモンは使用人だと思えば済む事か。・・・私も、つまらない事に騒いでしまった様だ。」
「・・・いえ。先輩がつまらない事などありませんよ。・・・僕は先輩に、いつ何時怖ろしい事が起きても、知佐都を支えられるようにと、常に隣に控えておりましたから。・・・昼も、夜も。それだけです。」
・・・。
う、うわ。・・・サイモンさん、その発言は、どーかと思うよ!・・・確かに、サイモンさんが気を遣って側に居てくれたのは事実ですけど、さすがにノルムさんが無事に戻るまでは、お互いにそんな気にもなれず・・・。
ま、まあ。
ちょっとはイチャつきました・・・が。
「な、何っ?サイモン?!・・・そ、それはご苦労であったな。疲れたであろう?チサの為とはいえ、日夜を問わずとは、すまなかったな。」
その言葉に、ノルムさんはサイモンさんにお礼を言う。
うん・・・ノルムさんは、どうしたってノルムさんなんだ・・・。
苦笑しているサイモンさんに私はコソッと苦言を呈する。
『サイモンさん!ノルムさんに何を言う気なんですか?!』
『えー・・・。ちゃんと先輩には知佐都は僕のものだよって言っておかなきゃって思って、ね。・・・あのさ、知佐都。何で僕と先輩は気が合って共同研究を長年してると思う?』
『えっと・・・サイモンさんが人格者だから?もしくはノルムさんを尊敬してるから?』
私がそう答えると、サイモンさんはクスクスと笑う。
『どっちもハズレ。僕が人格者なら先輩の大切な知佐都にちょっかいなんかかけないし、勝手に婚約したりもしないよ。・・・先輩を尊敬してるのは、もちろんあるけどさ心酔してるって程じゃないかな。・・・あのね、僕と先輩はね、好きなものがまるで一緒で、そのあたりでとっても気が合うんだよね・・・。』
『え・・・?』
『つまりさ、先輩は自覚も無く「運命だ」って騒いでるけど、本当は僕と同じ様に、知佐都が大好きなだけなんだって思うよ。・・・知佐都にとっても先輩は運命の人なんでしょ?・・・だから、僕は先輩に知佐都を奪われないようにしないと、ね?』
サイモンさんはそう言うと、私を抱き寄せて、ノルムさんに見せつけるように私の頭にキスを落とす。
ノルムさんはそれを見ると、ムッとした表情でサイモンさんの手をペシペシと叩き、懐から取り出したハンカチで私の頭を丁寧に拭いた。
「サイモン離せ、私のチサが汚れる。」
「僕の、知佐都、です。たとえ先輩が知佐都の運命だとしても、僕は知佐都を離したくない。」
そう言ったサイモンさんは顔を歪め、私を抱く腕に力を込めた。
・・・運命・・・。
ノルムさんにそんな強いものは感じないけど、そんなのあるのだろうか・・・?私がサイモンさんを好きってだけじゃ、ダメ・・・なんだろうか?
不安になる私の顔に、ノルムさんはハッとなり、言いにくそうに話はじめた。
「・・・。チサ。サイモン。・・・『落ち人』の運命はその・・・『終末の魔道士』だけではないらしいのだ。・・・『落ち人』は全て失ってこの世界に落ちてくるだろ?だから、この世界で『落ち人』が不幸にならないよう、何人もの運命の相手が用意されている・・・らしい。討伐に出た時に、『落ち人』持ちの『終末の魔道士』同士でそんな話になったんだ。ウィリアムも含めて『落ち人』を置いてきた『終末の魔道士』達は皆、自分の『落ち人』が自分と同じかそれ以上に信頼している相手に託してきたと言っていた。」
「え・・・。」
私もサイモンさんも驚いた顔でノルムさんを見つめる。
「異界の宰相様はその話を聞くと、『落ち人』には何人も運命の人のスペアが用意されいるのでは無いかと言ってきたんだ。今回の様な事もあるし、パートナーの『終末の魔道士』が病気や怪我で早世しないとも限らない。・・・全てを失って、こちらに落とされた『落ち人』に、神はそこまで過酷な運命を与えないのでは無いだろうかと。だから必ず予備が用意されている筈だと・・・。・・・すると、ウィルをはじめ、ほぼ全員が自分が死んでも『落ち人』は託した相手とそのうちに幸せになるんだろうな・・・と言いはじめた。・・・まぁ、結果的に、それで士気が上がって討伐は3日で終了となったのだが・・・。」
う・・・うーん。
それは・・・もしかすると宰相様が士気を上げるために言った気もするけど・・・???
だけど、サイモンさんは腕を緩め、嬉しそうな笑顔を私にくれたから・・・私もそう思う事にしよう。・・・私もサイモンさんに笑顔を向ける。
うん、きっとこの人は私の運命・・・!
「いや、待て。」
笑い合う私たちにノルムさんが水を刺す。
「サイモンは私の予備だ。生還したのだから、チサの運命の相手は私だろう???」
真底不思議そうに言うノルムさんは・・・やっぱりノルムさんで・・・、私たちは思わず顔を見合わせ笑った。
終
なんとか完結させました。
お読みいただき、ありがとうございました。
※大幅に改訂した事で、ご迷惑をおかけした事をお詫びします。※




